マッチングアプリ体験談17-10

●第17話「マグロ男」10

前回の話はこちらから。

閉まっていると言ったコンビニを通りすぎると、程なくしてまたコンビニが出てきた。なんだ、目と鼻の先じゃないか。入ると衛生用品が置いてあるコーナーがすぐに目に入った。

男「僕たちこんな夜中にコンビニに来ていかにもって感じだよね。ねえ、店員さんに『スキンどこにありますか?』って聞いてきてよ」
私「やだよ。そんなことしなくても見つかるよ。ってかそういうの好きなの?」
男「うん」
呆れた。私は意地でも自力で見つけてやると闘志を燃やした。

無論、そんな強い意志を持たなくとも探し出せたのだが。一番下の段を指し、「あったよ」と言ってしゃがむ。全ての箱を念入りに見ても「レギュラー」「スタンダード」としか書かれていない。まあ、そうだよね。

店を出てしばらく歩くと大通りに出た。この時間に走っている車といえば大型トラックぐらいだ。男は左右に蛇行しながら『にんげんっていいな』を歌っている。「カラオケ店員だから勤務中はずっと歌ってるんだよ」などと訳の分からないことを言っている。寝言は寝て言え、この酔っぱらいが。そう、この男はカラオケ店の店長をしているのだ。

どれほど歩いたのだろう。男は「あ、道間違えた」と言った。知らない土地で延々と歩かされ、道を間違えたと言われてもどうすることもできない。「遠回りになっちゃった」とか言いながらまたしばらく歩くとコンビニが見えてきた。

駐車場にはタクシーが停まっている。店内はタクシーの運転手がレジ付近にいるだけだった。私は先程の要領ですぐに目的のコーナーを見つけてしゃがむと、「さすがだね」と言ってきた。何も嬉しくない。これも先程の店と同様、通常サイズしか置いていない。

私「ここになかったら諦めようか」
男「え、そういう意味?」
なぜ嬉しそうな顔をしているのか。何を勘違いしてるんだ。生ではしないと何度言ったら分かるのか。頭沸いちゃってんの?

男は自分の分のお酒を買い、店を後にした。帰り道、「規格外って言われてるみたいで悲しい」と言っていた。サイズ自体には自信を持てばいいと思うのだが、そういうことでもないらしい。

私たちは再び男の家に戻ることにした。家に着く頃にはすでに外が白み始めていた。時刻はもう5時前。当たり前だ。心底風呂に入りたかったが、私は男に着替えを貸してほしいと頼み、Tシャツと短パンを借りてベッドに入った。柔軟剤の匂いがきつい。「僕の服を着てくれるの嬉しいよ」

そうだよね、泊まりになること分かってて着替え持ってこないのおかしいよね、私。「眠くなったらカラオケとか行くのも良いし」という男の言葉を鵜呑みにしたんだ。カラオケは行かないとしても、集合が男の最寄り駅ではなかったからホテルに入るかなと考えていた。慣れない布団、慣れない臭い、風呂に入っておらずベタつく体、お酒と夜更かしでガンガンする頭。何もかもが不快な状況で浅い眠りに就いた。

続きはこちらから。

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