数学と3Dプリンター(準備編)
中学や高校の数学の授業で3Dプリンターを活用できないか検討しているので,備忘録も兼ねてまとめていきたいと思います。
そもそも活用を考え始めた理由は,図形,特に空間図形を学ぶ上で実際に目にする,手に取るというのは,学ぶ上でアドバンテージになるだろうという点です。空間図形をカットする問題を考えるときに,本当にカットしてみたくないですか?豆腐とかカステラを使うことにも限界がありますし,ね。
1.3Dプリンターとは
3Dプリンターとは,その名の通り3Dデータを印刷する機械のことです。これまでは値段が高くて手が出ませんでしたが,最近は家庭用として安いものだと5万円以下で購入することができます。
印刷方法は基本的には薄い層をいくつも重ねていく方法になります。この薄い層の作り方ですが,素材によっていくつかの印刷方法に分類されます。家庭用という視点で考えるならば,液状の樹脂を紫外線で少しずつ硬化させる「光造形方式」や,熱で溶かした樹脂を積み重ねる「FDM方式」が主流になってきます。
本校にある3Dプリンターはフィラメントを溶かしながら積み重ねるFDM方式のEnder 3です。3万円もあれば購入することができます。
2.作成工程
印刷するまでの工程は大きく分けて3つです。
1.3DCADデータ(STLファイル)の作成
2.スライサーソフトでGコードの作成
3.作成したデータを読み込ませて3Dプリンターで印刷
3DCADで有名なソフトはAutodesk社が提供しているFusion 360でしょう。学生や教育機関は無料で使うことができます。Blenderも有名ですが,3Dモデリングができる統合3DCGソフトであり,3DCAD専用ではありません。
スライサーソフトではSlic3Rが定番のようです。また,Curaも世界でも非常に人気の高いスライサーソフトのようです。ともに無料になっています。光造形方式の場合はそれにあったスライサーソフトがあります。
3.授業での導入を目指して
3Dプリンターを授業に導入する上で,考慮すべきことをいくつか考えてみました。特にデバイスは大きく左右するでしょう。
そこで,パソコンではなく,iPadでも作成することができるか調べてみました。先ほど挙げたFusion 360やソリッドワークスはiPad,iPhone向けのアプリを出していますが,そのほとんどがビューワー的な役割でそのアプリ単独で3Dモデルを作製することができません。
しかし,「Shapr3D」はiPadだけでモデリングができるそうです。このアプリはハンガリーのShapr3D Zrt社が公開しているiPad用3DCADアプリで,iPad上で動く世界初のプロ向け3DCADアプリだそうです。制作にはApple Pencilが必要でしたが,アップデートで外付けのマウスやトラックパッドでも作れるようになりました。
そして何よりも嬉しいのは,学生ならば無料でフル機能を使えることです。しかもShapr3Dがすごいのはチュートリアルがとても充実している点です。もちろん動画で用意されています。基本的には英語の動画ですが,主なものには日本語字幕が付いており,英語が分からなくても理解できる工夫がされています。
4.最後に
ということで,ここまで調べたことをまとめると,ちょっと実現可能性は見えてきたかな...という感じですね。
1.iPadでShapr3Dを使って3Dモデルを作る
2.教員がスライサーソフトでGコードを作成
3.空き時間に3Dプリンターで印刷しておく
印刷するものの大きさによって3Dプリンターでの印刷時間は左右されます。数時間かかるものもあるので,ここの問題点をどう解決するかが残ります。スライサーもできれば自分でやってほしい。
ここらは学校設備との相談ですね。来年度の実施に向けて検討したいと思います。