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【アルゲリッチと人間国宝の能】次元を超えた奇跡の共演 (MOA美術館 能楽堂) 2022年5月31日



公演プログラム 


美術館で開催中の展覧会






はじめに

2022年5月31日(火)
美術館の能楽堂で大好きなピアノと能の共演。
通常2000〜3000人規模以上の大ホールで演奏するアルゲリッチ。今回は500席規模で演奏。なんという貴重な環境!

そして、美術館では(展覧会)富嶽三十六景と東海道五十三次。好きの渋滞。全部好き。こんな奇跡の組み合わせあるかしら。

世界最高峰と称されるアルゲリッチのピアノと人間国宝の大槻文藏さんの能との共演。とにもかくにも一生に一回かもしれない機会。行かないという選択肢は無かった。平日の公演。休みを取って行った。

実際に目の当たりにした共演
感動レベル人生史上最高値!
世界遺産ならぬ「記憶遺産」!

一つも忘れたくなくて、とにかく覚えていることを帰りにメモしまくった。
あの感動の時を真空パックして保存したい。でもできない。たった500人の記憶にとどめるのがもったいない。覚えている限りのことを残しておくことに。
 
何かを見てこんなに記憶にとどめたいと思い長文を書いたのは初めて。それくらい一分一秒も忘れたくない一生の思い出になった。
 




能舞台のつくり






L.v.ベートーヴェン/3つのピアノ四重奏曲 第3番 WoO36-3ハ長調


舞台の前方にある柱は今日の特別仕様で外している。
舞台にはスタインウェイの黒いピアノ。

能は神事として行われることもあり、神聖で清々しい神社のような能楽堂の雰囲気が好きだ。そして舞台裏にいるであろうアルゲリッチ。想像するだけで興奮。

開場前、ギリギリまで美術館で大好きな葛飾北斎の富嶽三十六景を見ていた。正直いつものように集中できない。大好きなのに。公演が楽しみで心が落ち着かなかった。
 

ついにアルゲリッチ登場

開演時間 17時頃
客席が暗くなりついに開演。
舞台左手の揚幕(あげまく)からアルゲリッチと弦楽器の方3名が一緒に登場。
アルゲリッチの衣装は黒のトップスに白文字のアルファベット柄が大きめに入ったロングスカート。
最初マスクを着用していた。

本物!!!!わーー!!!能舞台歩いてる!!!
それだけで大興奮。本当に存在している。同じ空間にいる。信じがたい。しかも能舞台上のアルゲリッチ。
初めて見る上に特殊な環境。興奮。

公演前はナーバスになるとドキュメンタリーで見た。今日はどうなのかしら。ドキドキ。

この時点ではアルゲリッチの表情はマスクで見えない。舞台前方に弦楽器3名、後方にアルゲリッチのピアノ。譜面をめくる係の方がいる。アルゲリッチは楽譜を見ての演奏。ついに演奏開始。弾き始めは険しい表情。
見たことのある弾き方。

きゃーーーーー本物!!初めて聴く曲。弦楽器の隙間のピアノの音色に耳ダンボ。綺麗。アルゲリッチが目の前で演奏している。世界的ピアニストが目の前で。夢みたい。アルゲリッチに釘付け。

クラシック専門ではない能楽堂。きっとコンサートホールとは響きが違うはず。でも十分すぎるくらい綺麗な音。どの席からも舞台は近いが、前から4列目。とにかく近い。こんな距離で本物が弾いているのを見られる感動。細部が見える。手の動きが見えるーーー!

とにかく四重奏は”夢の中状態”のままあっという間に終わってしまった。演奏が終わり大きな拍手。4名は揚幕へ戻る。アルゲリッチが去った舞台を見て、先ほどの時間は現実だったのかしらと茫然。
 

ここで能舞用に会場設営 
協奏曲用に舞台に敷かれていた白い敷物が回収され、舞台前方の木の床が現れる。設営の方が舞台右後方の切戸口に戻られる。ピアノは舞台後方に設置されたまま、能を舞う空間が現れる。
 
 
 
 



仕舞 邯鄲(かんたん)

揚幕から静かに舞台に進む、人間国宝の大槻文藏さん。謠(うたい)の方4名も舞台へ。今度は先ほどの洋の世界からガラッと切り替わり、和の時間が始まる。

舞台の入場時、ピアノは拍手するが能はしない。
ピアノでは拍手していたのに不思議と能舞の方の入場は拍手せず静かに見ていた。瞬時に切り替わる。染み込んだ文化の習慣すごい。

いつもと大きく違う舞台後方にあるピアノの存在。
ピアノ背景の仕舞は今日の特別仕様。

文藏さんの舞が始まる。初めて文藏さんの舞を見る。
文藏さんスラっとしていてお顔が小さくてスタイルが良い!

衣装は能装束ではなく上は黒で下は灰色の着物。 
囃子(小鼓/太鼓/笛)は無し。謡の声と舞だけのシンプルな構成。舞の静かで美しい一動作一動作に魅了される。謡の迫力ある声。いつもこの独特の発声方法に聴き入ってしまう。

最後、全員同じタイミングで扇子をしまう動作がピタッと合っていてとてもカッコよかった。




解説

辰巳満次郎
ここで今回の公演のピアノ独奏と能舞の舞台演出をされた辰巳さんが舞台に。今日の内容の解説が始まる。
断片的に以下メモ。 

仕舞の説明

先ほどの演目の「仕舞」とは曲目を部分的に演じるもの。江戸時代から行っている。アンコール的なものが仕舞。一曲の一部分。おしまいは仕舞が語源

 邯鄲(かんたん)の里(中国)、青年盧生が邯鄲の枕仙人が作った枕で寝ると夢の中に。中国の皇帝になっていた。春かと思えば夏にと季節が移ろい、気がつけばご飯が炊ける間の一炊の夢だった。50年分の夢 

今日は夢の共演にちなんでこの物語に。
夢とうつつを表現。
宮廷に来たという気持ちで楽しんでもらいたい

能舞パルティータの説明

パルティータは宮廷音楽
本日の能の衣装はパンフレットの写真から変更に。
新作なので何度も変更し昨日で最終型が決まった。
 
本来能は設定があるところ、性別も年齢もはっきりしない設定に。能面は平敦盛がモチーフの能面十六(じゅうろく)。衣装の前衣は女性の衣装で下は男性が履く衣装。髪は白。年齢も性別も不明のもの。見た人が感じたものが正解のものに。

‘何者かわからないもの’が、アルゲリッチの音に反応して出てきたという設定。
 能で使われる悲しい表現”しおり”も出てくる。
何が悲しいかも設定は想像におまかせ。

 最後、‘何者かわからないもの’はアルゲリッチを称えながら消えていく。

通常の能ではやらないことを組み合わせて
事前に行うたびに内容が変化していった。本番どうなるか。

今日は特別に能舞台の柱を取ってある。
世紀の共演をお楽しみください。
 

辰巳さんの解説が終わり、30分の休憩へ





J.S.バッハ/パルティータ 第2番 BWV826ハ短調 ーピアノ独奏と能舞ー

マルタ・アルゲリッチ(ピアノ)
大槻 文藏(能舞)
 

アルゲリッチのソロパート

舞台上には中央より後方側にピアノ。
今度はアルゲリッチが一人で揚幕から舞台に。
挨拶して間もなく演奏が始まる。
ついにアルゲリッチのピアノだけの時間。

いつも映像で見ていた弾き方〜!(本物!!!)
まだ信じがたい。初めて聴いた曲。

能との共演としてアルゲリッチが選曲した曲なのだとしみじみ聴き入る。情緒を感じる美しい音。綺麗。感動。(後で知ったけれど舞踊曲とのこと。なるほどの選曲)

アルゲリッチ単体でこんなに幸せ時間。さらに大好きな能が混ざったらどうなってしまうの?!と、もう感激の限界点超えで気持ちがはち切れそう。
 

(参考)当日の雰囲気を感じられる演奏動画 
神聖な場所の雰囲気と響きが当日の能舞パルティータの雰囲気に近いものを感じる。たまたま能舞の時のアルゲリッチの衣装と同じ。



アルゲリッチと人間国宝の夢の共演

アルゲリッチが演奏開始してからしばらくの後、
演奏が続く中、静かに揚幕が上がる。
能装束を着た舞が登場。

衣装は上下白ベースで金色の織物の入った光沢ある生地。白と金色の間のような髪。辰巳さんの解説にあった平敦盛がモチーフの白い面。青系の色の扇子。

‘何者かわからないもの’感を纏った上品でとにかく高貴な妖精感。妖精といっても西洋的なファンシー感のあるものではなく、日本の霊験あらたかな人間ではない何か。といった感じ。年齢も性別も不明のもの。
(以下、通称 “妖精さん” とする)

不思議な魅力を放ちながら暗い能楽堂の中で輝いてる。発光している。

前日に最終的に決まった衣装とのこと。パンフレットは女性の面だったがどんどん変わり今日の最終型に。パンフレットの衣装も十分素敵である。しかし登場した’何者か分からないもの’はさらに不思議な存在感が増していた。今日限りの衣装。通常ありえない組み合わせ。特別感。それでいてとにかく美しい。

どうしても再現したくて作成

妖精さんは静かに摺足で進み、
ちょうど橋掛りの舞台寄り1/3くらいの位置に静止。

アルゲリッチの後ろ姿を見ながらピアノに聴き入る妖精さん。

本当に存在が人間ではない生き物感。でも何とも言えない可愛い感じ。端の方からアルゲリッチの演奏聴いてる笑 うっとりしてる。可愛い

手すりのところに袖かけて聴いてる笑 可愛い

めっちゃアルゲリッチのこと見てる。妖精さん可愛い

アルゲリッチはただただ弾いてる
(角度的に妖精見えない)


手すりに袖をかけるというのを通常の能では見たことないので今回特別なのかもしれない。

通常、能は謡や囃子は物語の登場人物としては存在しない。そしてピアノも演奏者がピアノで物語を表現することはあっても物語の登場人物として出ることはない。

そのイメージがあるので、
共演といっても、“お互いが関与しないで表現する”
“ピアノを伴奏に能を舞う”と思い込んでいた。

でも、妖精さんがアルゲリッチにうっとりしいている所作を見て、アルゲリッチがこの物語の中に入っていることに気づく。 そうかそういう設定なのか!!と。

そして能舞がアルゲリッチにうっとりしているのと同じように観客もアルゲリッチにうっとりしている。能舞と同じ世界線に自分も存在している。この異次元な感じ。すっかり世界に引き込まれる。

この冒頭の不思議な感覚が斬新過ぎて、
妖精さん登場シーンが全体を通して一番印象に残った。  



能は古典的王道しか体験したことがなく、ピアノwith舞踊も見たことがなかった。見る前はピアノと能の共演が全く想像つかず。あの迫力のある謡や、囃子(笛 小鼓 太鼓)が無い場合どうなるのだろう。バッハと能。

しかし!!驚く程合っている!!違和感なし。
ピアノの音の世界が視覚化され、ピアノ単体で聴くのとはまた違う魅力の世界。  

アルゲリッチ単体でも十分過ぎる。
単体だったら穴が開く程アルゲリッチのこと見るはず。しかし、アルゲリッチ見ないで能の方だけ見たりしている。

人間国宝の舞だけでも十分過ぎる。
しかし、アルゲリッチを見て能の方を見ない時間あり。

どれだけ贅沢。

前から4列目の席で舞台から近くて嬉しかった。
が、しかし嬉しい悲鳴。
角度的に全体が見られない場面もある。
アルゲリッチも見たいし、能も見たくて忙しい。
とにかく忙しい。
片方に集中するのがもったいなくて本当に苦渋。


 妖精さん、舞台中央にすり足で移動。
ついにアルゲリッチの視界に。
でもアルゲリッチは妖精さんに視線を向けない。
演奏に集中。

妖精さんピアノの周りを左右に移動。
座ったり立ったり静止したり。
アルゲリッチの方を妖精さんが見る。
でもアルゲリッチは視線は合わせず。

 妖精さん正面から静止でアルゲリッチ見てる。
シュール!!妖精さんにガッツリ見られてる。
アルゲリッチ見られてるーー!!

でもアルゲリッチ
おもむろには妖精さんと視線を合わせないー!
世界観壊さないー!

アルゲリッチ、妖精さん視界に見えているはず。 
でも見ない。きっとアルゲリッチも舞を見たいはず。
でも演奏に集中している。
妖精さんがだいぶ近づく。
アルゲリッチついに妖精さんチラッと見たーーー!!!

「おっ今見た!!」って反応してしまう 笑

妖精さん、足を高く上げて足踏みしている。
私はこれを喜びの舞と見た。
美しい音色に喜んでいるのねと。

今回はピアノとの共演なので、おそらく音楽とのバランを取り、通常能で行われる表現「足拍子(足で舞台を音を立てて踏む)」は無かった。静かに足踏みされていた。


 事前に説明のあった、
能で泣く所作である“しおり”が出てきた。
妖精さんは感動して泣いていると解釈。

共感ですよ!妖精さん!!私も感動してる。
凄いもの目の当たりにして心で泣いている。 

妖精さん、ピアノの周りを前後左右移動。
橋掛りの方へ行ってアルゲリッチを背後から見ている。背後でうっとりしてる。可愛い 笑  

耳も目も幸せな時間。一生に一回きりの演技。全部あますことなく見ておきたいのに、この夢のような設定に幸せ過ぎて途中意識が遠くになってしまう。



 室町時代に大成した能。観阿弥も世阿弥も400年後くらいにピアノという楽器が発明されて、2022年にそのピアノを弾くアルゼンチン人が日本に来て、自身の創り上げた能と共演する。そんなこと全く想定していなかっただろう。

バッハも未来の東洋の国日本で、自身の曲を日本の伝統芸能の舞に使われるとは全く想定していなかっただろうなと 笑 

そして、アルゲリッチも日本で能と共演するとは想定していなかったと思うし、文藏さんもきっとバッハで舞うということも想定してなかったのではないかと。

その二人が半世紀以上積み上げ、熟練した技をもって表現している。それを可能とした”年齢を超越した情熱”と”新しいことにチャレンジする柔軟さ”

色々な歴史や流れの中で実現した奇跡に立ち会っている。今この瞬間生きていてこのタイミングでこの新しい芸術を享受できている。幸せ過ぎる。


フィナーレ

妖精さん、最後は橋掛りをバックの状態ですり足で進み揚幕にそのまま入って舞台からいなくなる。

通常正面で幕に入るのでこれも非常に貴重!

最後はアルゲリッチを称賛しながら消えるとの解説。
まさに称えながらの動きだった。そして妖精さんバックで消えていく様が最後まで‘何者かわからないもの’の雰囲気を纏っていた。

続いて少し経つとピアノの演奏が終了。
アルゲリッチが笑顔で揚幕へ戻る。
会場は大拍手。大興奮。 

夢の世界が終わってしまった。
 




カーテンコール

カーテンコール(1回目)

大拍手の中、文藏さんが衣装の面とカツラを取ってアルゲリッチと揚幕から舞台へ歩いて登場。

通常、能は再度舞台に登場してのカーテンコールは無いし、拍手せずに静かに終わることもある。拍手で能舞の方を迎える特別な体験。面とカツラを取って舞台に戻られるのも今日の特別感。

アルゲリッチと文藏さん手を繋いで揚幕へ戻る。
皆盛り上がる。大拍手。大興奮!


カーテンコール(2回目)

アルゲリッチと文藏さん手を繋いで仲良く再登場。
皆さらに盛り上がる。大拍手。アルゲリッチと文藏さん手を繋いで揚幕へ戻る。

二人の様子が達成感に満ちていて嬉しい。


カーテンコール(3回目)

全く終わらない大拍手。会場の温度爆上がり。 
文藏さんとアルゲリッチは手をつないで揚幕から並んで舞台へ進む。 
全員スタンディングオベーション。
一部は興奮で拍手しながらジャンプ。

会場内心一つ。
アルゲリッチがとても笑顔。嬉しい!!しかもアルゲリッチが少しおどけていてとてつもなく可愛いかった。

二人は手を繋いだまま揚幕へ向かう。
最後、文藏さんが控えめに観客の方に手を振る。
普通の能では見られない光景。

とにかくアルゲリッチの笑顔が可愛かった(イメージ)


お二人のカーテンコールを見てアルゲリッチと小澤征爾さんが手を繋いで舞台に立たれていた映像を思い出した。今日はクラシック界ではなく、日本の伝統芸能の文蔵さんと手を繋いでいる。お二人とも笑顔。長年それぞれの道の一線で活躍されてきたお二人。分野は違えども同志のような雰囲気。

和と洋が一切の違和感が無く融合していた。
まるで昔から存在していたような世界だった。
しみじみ心洗われる素敵な光景だった。
 
人種、国、言葉、歴史、文化も超越して演者も聴衆も一つになっていた。
芸術のパワーおそるべし。

自分とは遠いところに存在する高貴な世界。
美しい緊張感で終わると思っていた。
しかし、残ったのは観客も一緒に創り上げたというような一体感、清々しさだった。
 
18時45分頃終了

終わってしまった。アンコールは無い。でも満足。
感動して涙出た。世の中にはまだ体験したことのない感動がまだまだあるんだなと。本当に生きていて良かった。
 
一人で行ったので感想を誰にも言えないのが残念だった。でも、帰り道一人ずっと余韻に浸れた。それはそれで良しとした。
 
 
 
 

最後に

開催の経緯

この奇跡の共演がなぜ開催に至ったのか気になっていた。後でアルゲリッチが能との共演を希望したのだと知った。とても嬉しい。

MOA美術館の開館40周年記念とのことだったので、
美術館発の企画かと思っていた。

以前に能楽堂での公演後にアルゲリッチが語った
「日本の文化がすばらしかったです。能楽堂という幽玄の世界へと導く特別な場所で、演奏できたこととても感動し、本当に嬉しかったです。演奏の世界も同じことで、非常に心を動かされました。(略) とにかく、能楽堂で演奏できたことが、本当に嬉しくとても感動しました。」とのコメントを見た。

日本文化への興味と幽玄さを感じ取る感性があるからこそ”能との共演を『現実的に想像できて』希望した”のだと分かった。


 バッハと能


アルゲリッチが選曲したバッハのパルティータと能があれほど融合するとは本当に驚きだった。バッハの宗教的背景の音楽と神事として行われる能は、共通して“教会や神社で神に捧げる”というものなので東洋西洋を超越するものがあるのかなと。

実際の共演を見ていない方からすると”どんな世界なのか想像できない”と思われる。私もピアノも能も大好きだけれど、見る瞬間までどういたったものになるか想像できなかった。

芸術として完全に融合した美しい世界が完成されていた。何の違和感も無かった。最初から最後までただただその美しさに圧倒されていた。両方の良さを単純に掛け合わされたもの以上の美しい世界だった。



 

 80歳と79歳の共演


アルゲリッチ80歳、大槻文蔵さん79歳。文藏さんの年齢を後で知りびっくり!お二人とも心身ともに衰えを全く感じさせず年齢を超越していた。そして醸し出す同士感は、分野は違えどそれぞれの道で第一線で走り続けてきたもの同士、年齢が近いこともあってのことなのだなと。アルゲリッチは2022年6月5日でなんと81歳! あのお年になっても新しいことにチャレンジする姿勢は本当に尊い。 好奇心は心の若さに影響するという。まさに体現されている。

改めてお二人が70年以上積み上げてきたもので創りあげた美しい世界を体験できたこと。本当に幸運だった。
 

皆さんの感想いかに


どなたかアーティストの方が「本当は舞台に立ってる自分を客席からリアルで見てみたい。でもそれは絶対に叶わない」と言っていたことを思い出した。あの素晴らしい世界をお二人はあの日あの瞬間には見ていないのだ。ご本人達がリアルで見られなかったものを客席で体験できた幸せ。

アルゲリッチも大槻さんも後で映像などでおそらく確認されただろう。どんな感想を持たれたのだろうか。
 

リアルの一度きりの体験という価値もある。しかし、言葉で残すことの限界。もし映像として残されていたら公開があったら嬉しいなと。この先この“記憶遺産”をVRなどの立体で再現して臨場感を持って体験できるようになったら、後世にとってどれほど価値あるものになるだろうかと思った。
 


当日、客席に伝統工芸の人間国宝の方がいらっしゃった。道を極めた方にはおそらく私に見えない角度で感じられる何かがあるのだろうと思う。どんな感想を持たれたのか非常に気になる。

残念ながら自分の経験や知識では分かりきれなかったもの、見逃してしまった細部もあったと思う。

ピアノに詳しい方、能に詳しい方、逆にいずれも初めてだった方、それぞれの目線でどんな感想を持たれたのだろう。色々な感想を知る機会があったら嬉しい。
 



アルゲリッチも富嶽三十六景と東海道五十三次鑑賞したのだろうか。鑑賞していたとしたら北斎どうだったのだろう。図録購入されたかしら?(個人的に図録のサイズとデザインが日本のお土産にとっても良いと思った 笑)

熱海で温泉に入ったのかな〜

 


 
 P.S美術館の方や関係者の方  
当日までの経緯や後日談などありましたら何らかUPしてもらえたら嬉しいです。  


今回のアルゲリッチのツアーのうち、サントリーホール で演奏を聴かれた茂木さんの後半の言葉、
「優れた音楽に接したときの一番素直な気持ちは、”自分の人生もそうありたい”という思い。我々は音楽を奏でるわけではないが、生きているわけで、選択と行動、世界を見るときの姿勢について名手を見るとその音楽性から学ぶことがある。」これと同じ感覚を能舞共演でも感じた。言葉に表しきれなかった感覚。茂木さんの言葉ですっきりした



過去の能楽堂での公演(参考)


2021.08.13(金) - 2021.08.15(日)
» 別府アルゲリッチ音楽祭フィルムコンサート | MOA美術館 | MOA MUSEUM OF ART

2018.06.08(金)
» アルゲリッチ&マイスキー スペシャルコンサート | MOA美術館 | MOA MUSEUM OF ART

2017.05.24(金)
アルゲリッチ&伊藤京子スペシャルコンサート at NOGAKUDO
https://www.moaart.or.jp/wp-content/uploads/2017/02/perss-release_Argerich-concert-at-MOA-museum-of-art_20170524.pdf

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