#27 リング・ラードナー「弁解屋(アリバイ)アイク」〜ふたたびクリエイティブライティングを考える の感想

※これはポッドキャスト番組「翻訳文学試食会」の感想です

今回の本

今回のキーワード

  • 新潮文庫を読んで選んだわけではない、というアリバイ(弁解)、あえての福武文庫

  • 漫才の台本のような小説。エンタツ・アチャコ

  • なぜアイクはこうなったのか?不要なことまで言い訳する悲哀

  • アメリカ人、フロンティアスピリット、アメリカンドリーム、フレンドリー

  • 自意識過剰な言い訳、人間関係をうまく築けない自信のなさ、過剰に相手の顔色を伺う

  • アイクとバートルビーは非常に似ている、不気味さ、孤影を宿している

  • 野球を主題にした作品はたくさんある、サッカーがテーマの小説は?

アイクの生育歴に思いをはせる

番組の中で言及されていたように、なにか自分の気持ちを素直に表すことを抑圧されるような環境で育ったのかもなぁと考察。あとはなんだろう。98点とっても「なんでこんなつまらないミスをするんだ。おまえはいつもそうだ。だから満点がとれないんだ」というような親のもとで育ったとか。失敗を許されない環境で育つとやっぱり良いことに関してもいつ突っ込まれるかわからないから、自衛のために言い訳(アリバイ)を瞬時に用意してしまうんではないだろうか?
だとすると、若くて野球の才能もあってポーカーもビリヤードも上手くて、普通にいけばいわゆる『リア充』としてなんら憂いを持つこと無く生きていけるのになーと思うと、アイク(フランク)がだんだん気の毒になってくる。そんな感想。

その他の収録作

「自由の館」
ひとことで言うと「善意の暴走」これは面白い。人って善意でこんなに他人を追い詰められるものなのか。こういう人、ざらにいそうでまた怖い。

「相部屋の男」
めちゃくちゃ怖い。ホラー小説。『金にまざった銀の糸』という歌が明るいカントリーなだけに、これをエリオットが歌う場面が心底恐ろしい。この男も野球の才能はあるのになにかが欠落したモンスターのような感じで、怖くて悲しい。いやでもこれ面白い。相部屋になったときにチームメイトがなぜ怖がるかが絶妙にいやーな癖として書かれているのがラードナー、さすが。


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