Interview Bill Frisell - ビル・フリゼール『When You Wish Upon a Star』インタビュー・アウトテイク
「CDジャーナル2016年2月号」ビル・フリゼールのインタビューのアウトテイク。
ーー『When You Wish Upon a Star』では映画音楽のスタンダードを演奏していますね。ビルさんご自身の音楽では、『Music For The Films Of Buster Keaton: The High Sign/One Week』のように映画音楽からインスパイアされたものが何度かあったように思います。映画の音楽、もしくは映像作品のために作られた音楽はあなたにどんな影響を与えてきたと思いますか。
「そうだね、影響は大きかったと思うよ。映画そのものもそうだけど、映画音楽を作るというのは、漫画を描いたり絵を描いたりするのととても似ていると思うんだ。というか、実質的に同じ気がするね。とても強い関連性があると思う。」
ーー『Million Dollar Hotel』『Finding Forrester』のように映画音楽も作ってますよね。映画音楽を担当したことは、あなたの音楽に影響を与えましたりしましたか?
「影響はあったと思うね。曲を書くときはいつもインスピレーションを受けるものだけど、映像にインスピレーションを受けて書くというのは自分にとってとても難しいことなんだ。うまく説明できないけど、音楽と映像とは別物のような気がしてね。曲が生まれるときはひとりでに生まれるものだから、曲ができた後から映像をもう一度見て内容を映像に合わせて調整したりする。だから映画音楽を書くプロセスというのは、音楽だけ書くのより私にとっては難しいね。
ーーちなみに映画音楽を書くときは先に映画を見せてもらえるんでしょうか?それともシノプシスのようなものだけ見せられるとか。
「私がやったのは『小説家を見つけたら』や『ミリオン・ダラー・ホテル』くらいのもので。あとはジョニー・キャッシュの映画(注:『ウォーク・ザ・ライン/君につづく道』[Walk The Line])に曲を書いたな。通常は曲を作りながら映画を観ている。
曲を書くときと、ギターで参加するだけのときはまた違うね。『小説家を見つけたら』のときはギターで参加したんだけど、私が録音したものが既に多く使われていたんだ。ギターだけを持ってスタジオに入って、映画を観ながら即興みたいな感じで演奏したよ。ジョニー・キャッシュの映画のときも、映画を観ながらその場の雰囲気で演奏した感じだったかな。」
ーー今回のアルバムを作るときには映画をもう一度ごらんになりましたか。
「いくつかはね。たまたまできたものもあるんだ。例えばジェームズ・ボンドの映画…『007は二度死ぬ』はずっと昔に観たものだったけど、少し前にまた観たら音楽が素晴らしくてね。それでたまたま今回のができたんだよ。」
ーー「Once Upon a Time In the West」「Farewell to Cheyenne」「The Bad and the Beautiful」などでのペトラ・ヘイデンの印象的なハミングです。曲によってハミングと歌詞を歌うのを使い分けているようで…
「そう、彼女の声がまるで楽器みたいな感じだよね。彼女は素晴らしいシンガーだ。彼女ができることはとても多彩でね。歌詞を歌うこともできるし、…オーケストラみたいなんだ。ひとりでも様々な楽器の役割を果たすことができるし、曲の内側にあるハーモニーを聴き取ることができる人だね。だから彼女がその曲に存在すること自体が大事だった。中にはもともとヴォーカルなしでやるつもりだった曲もあるけど、彼女がいたほうがしっくりくるから、歌詞がないのに入ってもらったものもあるんだ。「ウェスタン(Once Upon a Time in the West)」もそうだし…歌詞がない曲は他にもいくつかあるね。バンドの(楽器を持つ)一員として扱っているよ。」
ーーそのハミングがあることでアルバムに一体感が生まれて、1枚のサウンドトラックのように聞こえるのかも知れませんね。
「そうだね。そうなっていることを願っているよ。私には結果がどうなるのか、他の人がどう聴き取ってくれるのか分からないけれど、君のようなことをみんなも思ってくれるといいね。今回はひとつの物語を作るような、1本の映画を作るような感覚でアルバムをまとめていったから、そういう風に思ってもらえると嬉しいよ。今はあまりに多くの人たちがここで1曲あそこで1曲と曲ごとにダウンロードして、何もかもが細分化されてしまったけれど、アルバムを作るときというのは…私にとってはどの曲の後にどの曲がくるかというのがとても大切なことなんだ。曲の流れだね。時にはサプライズな方向に流れが進むこともあるけど、それも流れなんだよ。」
ーーThomas Morganが参加しているのは大きなトピックだと思います。共演はあっても、自身の作品への起用は初めてですよね。
「トーマス・モーガンと初めて一緒に録音したのは、ペトラ・ヘイデンもその時に一緒だったと思うけど、ポール・モチアンの最後のアルバム(『The Windmills of your Mind』)じゃなかったかな。ポールが自分名義で録音した最後のアルバムだったんだ。トーマスとペトラとポールと私でね。ペトラもトーマスもずっと昔からの知り合いだったけど、一緒に演奏したのはあのときが初めてだった。私にとってはとても強烈なひとときだったね。その後色んなところで共演してね。ヤコブ・ブロ(Jakob Bro)というデンマークのギタリストがいるんだけど、彼とはよくトーマスと一緒にやったね。確か3枚くらいアルバムを一緒に作ったような。あと、あちこちでギグでも共演したけど、トーマスとのプレイはいつもワクワクするんだ。私にとっては本当にスペシャルなミュージシャンだね。去年はデュオとしてヴィレッジ・ヴァンガードに出演したんだ。1週間連続で、2人だけでね。彼は他の人にはできない形で人の心を読んで、ハーモニーやメロディを作っていける人なんだ。彼と一緒だったらどんな時でも何でもプレイできるような気がするよ。私よりいつも先を行ってくれるからね。」
ーーあなたは『ビッグ・サー』を始め色んなところでRudy Roystonを起用し続けていますが、彼の音楽の素晴らしさをあなたの言葉で聴かせてもらえますか?
「ルディ・ロイストンとはずっと前に出会ったんだ。20年くらい前だったかな。当時彼はデンバーに住んでいた。私も育ったところでね。それでかどうかは分からないけどとても縁を感じたんだ。当時彼はそこに住みながら学校で教えていた。ツアーに出ることを望まなかったんだ。それから何年も経って彼がニューヨークに移住すると、とても頻繁に一緒にやるようになった。彼も、他のみんなもそうだけど、私が共演する人はみんなあらゆる音楽にとてもオープンなんだ。誰も何事にも制限をかけない。だから彼らと一緒にやると、音楽がどんな方向にだって行き得るような気がする。シンプルにもなれば複雑にもなり得るし、ダークにも軽快にも、速くもスローにもなり得るんだ。何のリミットもない。ルディはそういう人なんだ。ものすごく複雑な演奏をするときも全くの自然体で、ドラムを使っていつも歌っているような感じだね。とにかく素晴らしい気分にさせてくれるよ。」
ーー2014年にSam Amidon『Lily-O』に参加していましたよね。
「サム・アミドンはここ数年でよく一緒にやるようになったんだ。彼から学んだものは本当にたくさんあるね。彼は古い馴染みのある曲を題材に、全く独自のものを作り出すことのできる人なんだ。彼について語るには時間が足りなさ過ぎるよ。(笑)
あとは最近チャールズ・ロイドともよく一緒にやっているけど、彼も素晴らしいよ。私が高校時代に初めて行ったジャズ・コンサートのひとつに彼が出演していたんだ。1969年のことだった。実は彼と録音したアルバムも出るんだ。確か1月発売じゃなかったかな。(注:Charles Lloyd & The Marvels名義。タイトルは『I Long To See You』、北米ではブルーノートより2016年1月16日発売。) 来年は彼ともいくつかギグをする予定だよ。」
Bill Frisell『When You Wish Upon a Star』
Bill Frisell
Petra Haden
Eyvind Kang
Thomas Morgan
Rudy Royston
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