医師として次世代運動(旧:反サロ)を支持する理由
僕は内科医をしている。そして高齢者医療自己負担3割(と、高額療養費の調整)に全面的に賛成する立場だ。その理由を簡潔にまとめると
後期高齢者自己負担が1割の状態は、3割と比べて
1.健康に対する利益が乏しい
2.財政負担が大きく、持続可能性に乏しい
3.人的資源の負担も大きく、人口動態を鑑みて持続可能性に乏しい
からだ。
次世代運動は肥大化する社会保障問題を含め、現役層や次世代への莫大な皺寄せ負担となる問題に対して「当事者世代」として、声を上げて具体的なアクションを起こす為に立ち上げた政治活動コミュニティである。
実際に医療の中の人は医療費がどう使われているかをよく理解できる。
だからこの活動に賛同できる。
仕事をしていれば自分がどんな人を対象にどんな仕事をして、その医療行為にどのくらいお金がかかっているかはわかる。別に特別なことをする必要はない。レセプトを見ればよい。
それと国家財政、ないし保険組合の収支や医療費の割合を見れば、持続可能性に疑問を抱くはずだ。
疑問が見えないのは、病院にいわれたことをやることでお金を稼いでいると考える傾向があるからだ。
つまり患者や患者家族の希望と病院の意向を尊重しているといいながら医療が提供する価値とは何かという問いを考えなければ、高齢者優遇の医療に疑問を抱くことはないのだ。
そして現代において病院はますます高齢者に依存するようになっている。
先日述べたように、入院患者の半数以上は75歳以上だ。
こうした環境で、現状の高齢者医療に疑問を抱くことは難しい。
疑問を抱くには、そうではない職場に転職するのが一つの方法だろう。つまり、高齢者自己負担率が低いことにハックしているような職場を避けるということだ。
職場が変われば、異なる倫理観で物事を変えることができるようになるだろう。
勿論、中から声を上げることも重要だ。
しかし、証拠を集めて内部告発を行うハードルはかなり高いだろう。
幸い、資格業だから内部告発を行っても転職しやすいという利点はある。
また、高齢者医療に関するエビデンスを学んでいくことも大切だ。自分が提供する医療の価値を理解すれば、高齢者に漫然とdo処方することは難しくなる。
次世代運動というか、医療の濫用を避けようとすれば、コミュニケーションに関する技術も学ぶ必要がある。
幸い、最近では医療コミュニケーションに関する良書が複数出版されている。
コミュニケーションを学べば、存外減薬や状態が悪化したときの治療選択肢で対立が生まれることは少なくなるし、対立したとしても、その対立の構造を解明し、共通の利益を見出すことができるようになってくる。
医療における価値を意識することは、恐らく何より大事なことだ。
エビデンスについて医師は多く学ぶが、医療が提供する価値を考え、話し合う機会は実はそこまで多くはない。特に認知症高齢者を中心とした医療を行っていると、家族と話す時間も少ないために、なおさらそうだ。
しかし、医療の価値を意識して、高い価値の医療を提供すれば、仕事を続けやすくなる。
内心意味がないと考えている仕事を言われるがままにやっているよりはずっとそうだ。
次世代運動の正拳突き一覧を読んで、自分なりに医療費が濫用される状況を確認するのも大切なことだろう。
また、医療の効果に関しては、UCLA准教授、津川友介先生のnoteも参考になる。
多くの医師は次世代運動を支持する共通の基盤を持っているように思う。