アーユルヴェーダのビギナーに解説する10のハーブ
数千年にもわたってアーユルヴェーダで使用されてきた多くのハーブ。
現代では様々な文献に効能や作用が記され、それを理解することで販売されているアーユルヴェーダ製剤を摂るだけでなく、料理や食事に取り入れることもできます。
アーユルヴェーダでは植物の葉、花、果物、種子、根、樹皮、樹脂などを薬剤に使用します。
その薬剤として代表的な10のハーブについて解説します。
1.トリファラ
トリファラは次の3つの果物を混合したアーユルヴェーダのカシャヤムです。
アムラ
ビビタキ
ハリタキ
※カシャヤムとは
トリファラは代表的ともいえるアーユルヴェーダのハーブです。
アーユルヴェーダ医学で治療のために使用されています。
紀元前1500年に記されたSushrutSamhitaスシュルタサンヒターではトリファラの使用方法について詳しく言及されていました。
現代のアーユルヴェーダの様々な文献では次のように記されています。
消化管のクレンジングとして便秘、鼓腸時に使用される。
新陳代謝の促進や脂肪を排泄させるため減量に使用される。
フリーラジカルや酸化に役立つ抗酸化物質。
にきびや湿疹などの皮膚科の問題。
髪と肌と目の健康と美しさを維持する。
その他、トリファラはムスタ、ラシュナ、ヤシュティマドゥ、マリチャ、ピパリとブレンドして過酸性、鼓腸、胃潰瘍、胸焼けなどを緩和する。
トリファラのヴィ―ルヤ熱性、 ヴィパーカ 甘い、辛い、酸っぱい
※ヴィ―ルヤとヴィパーカについてはアグニで解説しています。
トリファラの3つの果実の中の1つであるアムラはどこでもすぐ入手しやすく、日本の乾燥梅干しのように加工されてあり、ビタミンC補給のためインドの家庭でよく使用されます。
またインド女性の髪の美しさを保つための様々なアムラのヘアオイルがインドではどこにでも市販されています。
抗酸化作用が強く、解毒を促進するため若返りのハーブと言われています。
ピッタを悪化させることなく消化の火アグニのサポートをします。
2.トゥルシー
ヒンディー語名Tulsi, サンスクリット語の名前 Tulasi, 英語名 ホーリーバジル熱帯気候で広く栽培されていて、聖なる薬草と言われているハーブです。
インド人の家の庭にはトゥルシーが植えられていて、家庭の常備薬のように使用されています。
ヴィ―ルヤ 熱性、ヴィパーク辛い
文献に記されている効能
主に呼吸器、消化器、皮膚病の治療の応急処置として使用されています。
ビタミンCとフリーラジカルの有害な影響から心臓を保護するオイゲノールなどの抗酸化物質が含まれる。
オイゲノールは血中のコレステロール値を下げるのに役立つ。
老化防止として、ビタミンCとAは、優れた抗酸化物質であり、フリーラジカルによって引き起こされる損傷から肌を保護する。
トゥルシーに含まれる酢酸は腎臓結石などの分解を助け体内の尿酸値を下げる。
片頭痛の痛みを和らげる。
オイゲノールがにきびのバクテリアや感染症を殺すのに役立つ。
トゥルシーはインドの家庭で発熱の時に使用されています。
抗炎症作用を持つトゥルシーは、ウイルス、細菌、真菌の感染を防ぐことで目の健康を促進するのに役立ちます。
口腔衛生のために、軽い芳香があるトゥルシーはうがいに使用されます。
口内炎、虫歯、歯垢、歯石、口臭の原因となるバクテリアからの予防をします。
カンフェン、オイゲノール、シネオールなどの化合物が存在するため、アーユルヴェーダでは呼吸器系のウイルス、細菌、真菌感染症、気管支炎や結核などの呼吸器疾患に使用されます。
3.アシュワガンダ
インド、アフリカ、地中海大陸の地域で見られるナス科の小さい低木です。アシュワガンダの名前は、サンスクリット語の2つの単語から付けられています。
ヴィ―ルヤ 熱性、ヴィパーク甘い
アシュワは馬を意味し、ガンダは匂いを意味します。
根元は「馬のような」と言われる強い香りがあり、馬力のような強さを与えるとも言われています。
アシュワガンダの根と果実は伝統的な アーユルヴェーダの治療に使用されています。
記憶力と認知力を高めます。
アーユルヴェーダの文献には次のような利点が記されています。
健康的な体重管理をサポート。
正常な甲状腺を維持の維持。
心肺の耐久性を高める。
男性のテストステロンの維持。
老化する体の筋肉と骨に適切な栄養を提供。
ヴァータを落ち着かせ、男性と女性の両方で性機能を促進する。
4.ブラフミー
インド南部の湿地帯の環境に生息するハーブです。
ヴィ―ルヤは冷性、ヴィパークは甘い。
ピッタを鎮静させるハーブです。
チャラカサンヒター、スシュルタサンヒター、アタルヴァヴェーダに知性を研ぎ澄まし、精神疾患のために使用されると記されています。
ストレスを軽減するのに役立つアーユルヴェーダのトップハーブの1つです。
植物の葉はサットヴィックで純粋であると考えられており、ヨギが瞑想をする時に食べていました。
現代の文献にはブラフミーは次のように記されています。
記憶力を改善、不安の軽減。
てんかんの治療に使用。
体内のコルチゾールレベルを低下させ、ストレスや不安を軽減。
ヴァータを精神面で落ち着かせ、余分なカパを減らす。
5.シャタバリ
インド、ヒマラヤに生息するツル科のアスパラガスの一種です。
アーユルヴェーダのハーブの中で女性に人気が高いハーブです。
白いチュルナで穏やかな味の比較的飲みやすいハーブです。
ヴィ―ルヤは冷性、ヴィパークは甘い。
ピッタドーシャのバランスをとるのに良いハーブです。
一般的には女性の生殖器やホルモンの問題に使用されていて、女性のための強壮剤とも呼ばれ、衰弱、疲労時の栄養補給にされています。
痩せて身体の脂肪がない弱っている女性など、インドではアーユルヴェーダの医師は更年期、生理不順、母乳の出を良くするために、牛乳に混ぜたシャタバリを勧めます。
6.ニーム
別名インドセンダン。
インド原産の高木となる常緑樹で熱帯地方全域に広く植樹されています。
樹皮、花、葉、種(種油)が医療目的で使用されています。
様々な薬効がありミラクルニームとも呼ばれている。
ヴィ―ルヤ 冷性 ヴィパーカ 辛味
ピッタとカファをバランスさせます。
一般的には殺虫剤としてしられていますが、アーユルヴェーダでは次のように使用されています。
血液をきれいにする。
ニキビや吹き出物などの皮膚の治療。
歯周病の予防のためのうがい薬。
フケの原因の真菌と戦う、インドでは髪の根本を強くすると言われるニームの様々なシャンプーやコンディショナーが販売されています。
胃潰瘍の症状の軽減。
7.アロエベラ
エジプト人によって「不死の植物」と見なされていました。
古代インド、ギリシャ、中国、ローマなどで使用されてきました。
ユリ科の植物でアジア、南アメリカ、アフリカ、南ヨーロッパと広く分布しています。
サンスクリット語でアロエベラはグリタ-クマリと呼ばれ、少女を意味します。女性が若返るための薬草と信じられていたためです。
アロエベラの特徴はアーユルヴェーダの6つの味のうち、4つを持っていることです。
苦い、辛い、渋い、甘いの4つの味を持ち、ヴィ―ルヤは冷性、ヴィパークは甘いです。
3つのドーシャすべてにバランスさせますが、特にピッタをバランスさせます。
アーユルヴェーダではアロエヴェラはサトヴィックの食品群に入っている優秀な食べ物です。
内服にも外用薬としても使用され、パンチャカルマのひとつビレーチャナにはアロエパウダーが使用されます。
アーユルヴェーダでは血液からアーマ(毒素)を除去するためにも使用されます。すべてのドーシャに適していますが、ヴァータドーシャには少量で使用する必要があります。
アーユルヴェーダの医師は消化器系疾患にもアロエヴェラを使用します。その他、抗炎症作用と抗菌作用。
8.ターメリック
日本ではウコンと呼ばれるターメリックは南アジア、インド、世界の温暖な地域に分布しています。生姜科のハーブです。
ヴィ―ルヤ熱性 ヴィパーク辛い。
血液をきれいにしてスロータスを浄化するため、肌を美しくします。
抗炎症作用がありニキビができやすい肌のトリートメントに使用されています。
また体毛の成長を抑える働きがあります。
血液と肝臓の浄化作用がありピッタを調和させます。
9.クミン
地中海と南西アジアに自生しています。
セリ科の植物です。
ヴィ―ルヤ熱性、ヴィパーク辛い。
カファとヴァータのバランスをとり、ピッタを増やします。
インド、メキシコ、アフリカ、東南アジアでは料理でに全乾燥種子または粉砕粉末として使用されています。
カレーにはたいていターメリックと同じようにクミンが入っているので日本でも比較的慣れ親しんだ味のハーブです。
消化力を上げる、駆風作用、腹痛を和らげる。
消化と新陳代謝をサポートするため体重のコントロールに使用されています。
10.アジュワンAjwain
セリ科の一年生草本植物です。
主にインドやイランで栽培されています。
主に種のように見える果実がカシャヤムに使用されます。
ヴィ―ルヤ熱性、ヴィパーク辛い。
全てのドーシャに良いハーブですが、過剰にとるとヴァータとピッタを悪化させる可能性があります。
消化の火アグニを強くします。アーユルヴェーダでは、喘息、持続性の咳、鼓腸、消化不良の治療するために使用されます。
消化不良と吸収不良、鼓腸に役立つため、インドでは揚げ物を作る際に入れたり、ラッシーやバターミルクにひとつまみのアジュワンを加え、昼食後に飲みます。
いかがでしたでしょうか、今回はアーユルヴェーダで使用されている10のハーブについて解説しましたが、アーユルヴェーダではまだまだ様々な素晴らしいハーブがありますので、その他のハーブについてもまた解説させていただければと思います。