第4回日光千人同心街道ジャーニーラン
”Backyard Ultra - World Team Championshipsの日本代表の一員にもう一度なりたい!” これはBackyard Ultra - World Team Championshipsで45時間走り、DNFを決めた直後に発した言葉だ。それだけ走り、眠いし疲れたし脚もあちこち痛くてボロボロになったはずなのに、終わった直後にこの想いが心から出たのは、我ながらおかしいとも思える。普段から何をやりたいとか強く思わない自分にとっては珍しい事なので、その想いを叶えたいと考え始めた。実現する為には、最低55ループ(55時間、368km)を今年の11月の大会で超える必要が出てくる。それに向けて、この日光千人同心街道ジャーニーランへの参加を決めた。
自分の主戦場のトレランでは、路面の斜度が次々と変わりそれに合わせて使う筋肉が変わるため、負荷を分散させることができる。そのため、TDT200の時のように、200㎞以上走った後でも山に入って脚が復活するという事が起こる。一方、バックヤードはほぼ同じ路面を走るので、身体の同じ部分に負荷がかかり続ける。
①意図的に走りを変えて負荷を分散させる
②超長距離を耐えられるように身体を強化する
③効率的なフォームを身につける
これらに対して、色々試したり他の参加者の走りを見たりして改善点のヒントを得たいと考えていた。
この大会は、西八王子にある興岳寺をスタートし、160㎞走って日光東照宮までお参りに行くというものだ。セルフマネージメント色が強く、デポや荷物預かりはなく、全て自分で運ぶか途中で調達する必要がある。チェックポイント(CP)は全部で24か所。CP通過は自己申告制で、事前に配られた地図とCPの写真とGPXデータをもとに探し、到着したらスマホを使って申告する。申告方法はそこまで難しくなく進みながらでもできるが、CPの看板や目印はないので、事前配布の写真と見比べながら進む必要があり、夜は難易度が上がった。ただ、GPS確認もないので多少過ぎても申告すればOK!という緩めな感じが自分にとっては良かった。結果、時計に入れたGPXデータと携帯に入れたMAP情報を照らし合わせ、ほぼ迷うことなく進む事ができた。
コースはほぼロードかつフラットで、後半は日光東照宮に向けてひたすら緩急が変化する登りが続くので、申し込んだ時には「鍛錬にはもってこいだ!」と思っていたw
スタートは6月17日(土)AM8時。7時過ぎに到着した時点で日射しが強く、予想最高気温33℃とキツい1日になりそうな予感。大会主催のスポーツエイドジャパン代表の舘山さんと、興岳寺の住職の話を聞き、あっという間にスタート。初めてのジャーニーランという事もあり、様子を見ようとほぼ最後尾でスタート。八王子市街地の信号に何度も引っ掛かり。上手くリズムをつかめずやきもきした。
出走者が150名弱という事もあり、5-6km走った先にあるTDTでお馴染みの多摩川を渡る辺りで徐々に集団もばらけ、信号も減り自分のリズムを掴み始めた。その後CP1で初めての通過申告を無事に済ませ、勝手も分かった事から淡々と6'15-'30/kmのペースで走れるようになっていった。
その一方で、気温上昇と直射日光により厳しさが増し、周りの参加者とのコミュニケーションは”暑いですね” ”ヤバい暑さですね”が挨拶のようになっていった。
15㎞地点くらいからは前後にランナーがほぼ見えなくなり、時計のナビを信じて街中の分岐を進む感じになった。
最初にコンビニに寄ったのは20㎞過ぎ。そこからはコンビニに寄るたびに、アイスや凍ったペットボトル飲料を買い、頸動脈を冷やしながら溶かして摂取していった。湿度が低かった事もあり、暑さと喉の渇きで水分摂取量が増え、お腹の張りが出て、空腹感がほぼなかった。そして、身体がほてってきたので、30秒/kmくらいペースを落とし気味にして進み、約40㎞地点の第1エイドに到着。
ここまで固形物はおにぎり1個しか食べていなかったので、エイドではうどんと稲荷寿しを食べて出発。この時点で、なななんと7位だと聞いたが、暑さと表彰がない大会だという事もあり、順位よりどう生き残るかが自分にとっては重要だった。その後、さらに気温が上昇し耐えきれず、50㎞手前の東松山周辺でほぼ歩きに変わる。コンビニに寄ってアイスと凍ったペットボトルを多用していても体温が下がらず、更に眠気まで出てきてしまった。それでも、誰にも追い付かれることはなかったので、みんな暑さと日射しにやられていると思われた。ひたすら歩いていても時間が掛かるだけなので、コンビニの挽きたてアイスカフェラテを購入。ここまでお腹の張りを気にして水分を1口ずつしか飲んでこなかったが、アイスカフェラテはほぼ一気に飲み干した。更に、残った氷に持っていた飲み物を入れて飲んだところ、徐々に目が覚めて身体が動くような感じが出て、ゆっくりではあるが走れるようになった。そして、炭酸水を飲むとリフレッシュでき、ついでに頭から被るもシュワシュワして気持ちよく調子が上向いていった。
7'00/km位のペースでは走り続けられるようになり、街中を進んでいくと応援していた方に4人目の通過と言われさらに驚いた。1人しか抜いた記憶がないので、残りの2人は休憩中かリタイヤしたという事だろうか。自分自身の体調変化の兆しに敏感にならなくてはと思えた。そんななか、時計に表示していたスタミナメーターを何気なく見ると、残りが18%に‥!あと90㎞もあるが、感覚的にはまだ走れそうだったので、自分自身を信じて進んで行った。
ようやく72km地点の第2エイドに到着。第1エイドから固形物を口にしていなかったが、ここではもつ煮ご飯を食べた。これが美味しくて、生き返る感じがした。さらに、エイドの人の中には厚木大学を知ってくれている人や、代表の舘山さんがいて、色々と話す事が出来て大分リフレッシュできた。少しずつ気温が下がり、日も落ちてきたので、かなり前を向けるようになってきた。更に、順位は3位で前とそこまで離れていないから追いつけるかもと言われ、より元気が出て頑張ろうと思えた。とはいえ、スピードが出るわけでもないので淡々と走り続けた。ついにスタミナメーターが1%になってしまったが、それでも走りはやめなかった。
ついに2位を走っていた加藤さんに追い付くことができた。加藤さんは暑さにやられたと言いつつも元気そうに見えた。そこからもう少し走ると、今度は前方に車が止まり、降りてきた方に凍ったゼリーとエアーサロンパスをいただいた。とてもありがたく気持ちが嬉しかった!サロンパスは後半に多用し相当な救いになった、名前を聞いておけば良かった。
その先で、トップを走っていた高橋さんに追い付いた。少し並走をし話をしたが、厚木大学を知ってくれていて驚いた。高橋さん自身は、神宮外苑24時間走で247km走り、日本代表まで2km足りなかったという猛者だった。超人高橋の走り方は、すり足に近く相当省エネで、どこまでも走り続けられるような感じだった。共通の知人もいて、色々話しをしながら進めたお陰で気が紛れた。そのままCP15天命宿 88.4km 19:09 (11時間9分経過)を一緒に通過し、自分はヘッドライトなど夜間走に備えるため、先行してもらった。その後今度は加藤さんに追い付かれ少し並走したが、自分がコンビニに寄ったため3位にまた戻った。このまま行けば3位以内でゴールできるかもしれないと思え、結果に対して少し期待が持ててきた。けれども、ウルトラはそんなに甘くはなかった。少し進むとまたしても集中力が切れたようになり、歩き始めてしまった。色々身体の様子を探ったが、暗くなったこともあり、眠気が出始めていたことに気付いた。そのため、またコンビニに寄りアイスカフェラテを飲み、感覚が戻るまで歩いて進み続け、徐々に走りに切り替える事ができた。そして、高橋さんに追い付きまた並走し第3エイド兼CP17に到着した。
このエイドでは、数の子丼とカレーがあると聞き、数の子丼を食べた。大会のエイドで数の子を振舞われるのは初めてだったが、塩味もありとても美味しかった!ただ、A2のあとは何も固形物を食べてなかったせいか、胃のムカムカが出てしまった。球磨川の事も思い出し、念のためカレーは断念した。それでも、エイドの方々は優しくて温く談笑でき相当癒された。高橋さんには”また後で会いましょうね”と言って先にエイドを出た。ペースは遅いが走り続けられるようになったが、今度は左スネ前の筋肉が少し痛み始めた。歩くと少し痛みを感じ、走ると和らぐことから、左足の接地点が前側になっている事が考えられ、意識的に重心より後ろ側に接地させるようにした。そして、いただいたエアーサロンパスも使い、涼しさを感じられるようになり、CP18、CP19は淡々と通過することができた。
その先のコンビニで店員に話しかけられた。八王子から来た事、これから日光に行く事に驚かれてエールを貰った。なぜか驚かれると元気が出るので、応援に感謝して気持ちよく走り続けた。その結果、CP20金崎宿 118.8km の手前で加藤さんに追い付く事ができた。ここで、どちらから話したわけでもないが一緒に走る事になった。どんな練習をしているか聞いたところ、週4-5の退勤ランがメインで、週末はリカバリーか山との事。出た事がある大会の話をすると、川の道ハーフや長距離の大会にも参加していて、自分の想像する退勤ランである1回10km前後だと、練習量が少ないのでは思い、念のため退勤ランの距離を聞いたら、なんと40㎞との事!!!他にも、サブ3をしたくて毎週土曜日に自主フルマラソンを続けて達成した逸話などが出てきた。ここにもまた超人加藤がいた!やはり上位を走っている人達の練習内容は頭1つ以上抜けているなと思えた。
その先で、夜中にも関わらず私設エイドを出してくれている方がいた。涼しくなったとはいえ、走ればまだ汗ばむ気温だったが、固形物と塩分を摂りたかったのでラーメンを頂いた。とても美味しくて元気も貰い気持ちよく出発できた、どうもありがとうございました!
その後も加藤さんとあれこれ話していたお陰で、気付いたらCP20鹿沼宿 130kmを 23:34 (15時間34分経過)に到着し、ついに登り基調になり始めた。ただ、ここも2人で励まし合いながら走り続け、135km地点辺りの最終第4エイドに到着。ここではコーンクリームシチューをご飯にかけて貰い食べたがこれも美味しく生き返った。そして、代表の舘山さんは応援しすぎて、ついに声が枯れ果てていた。
エイド先の杉並木は歩道がなく、脇のトレイルのようなルートを進んだ。ずっと登り基調だという事もあり歩きながら進むが、歩くと時間が掛かるし、左スネ前の筋肉は相変わらず痛んでいた。加藤さんも気持ち悪さがおさまらないようで、お互い苦戦していた。それでも、加藤さんと進んでいれば1位は確定なわけで、焦る必要もないと自らに言い聞かせ、トレイルパートを何とか通過しCP23に到着。加藤さんのフォームは、ゆっくりでも前傾で接地ポイントも良く、自然に推進力が出る感じでこっそり真似をしていた!
残り20㎞となり、いよいよゴールを意識できるようになってきた。それと同時に、3位を走っている内山さんが近づいてきていることが速報でわかった。さすがに追いつかれるほどの差ではなかったが、ダラダラ行ってもしょうがないので、加藤さんと相談して登りも走りを混ぜつつ進む事にした。走るのもツラいが、コミュニケーション下手の自分でも気さくに話してくれる加藤さんのお陰で、そこそこ走りを入れて進んでいけた。
特に、ウルトラあるあるで盛り上がり、そのうち夜が明け気分も切り替わっていった。眠かったり、ツラかったり、痛かったりはいっぱいあるのだが、お互い声に出し合う事でその気持ちが和らいでいき、CPを通過する事や、残りの距離が減ってきた事を実感する事で得られる達成感を共有できることで、嬉しさは倍増していき、誰かと一緒に進む効果を実感していた。
何とか今市駅近くに着き、最後のコンビニに寄りゴールに備えた。CP24 今市宿 150.6km を 5:02 (21時間2分経過)に通過して、最後のセクションに入る。いよいよウィニングランだと言いながら歩きと走りを混ぜて進んでいった。そして、日光駅に近づいたところで斜度が上がり、歩きに変えた。日光の街に詳しい加藤さんから色々教えて貰いながら、東照宮へ到着。境内を進んで表門前でスポーツエイドジャパンの舘山さんと吉岡さんに迎えてもらい、加藤さんと2人でゴール!22時間25分 160kmのジャーニーを遂に終える事ができた。ジャーニーランは、旅をしている感覚になり、今回は歴史も感じられて、とても楽しい大会でした!開催してくれた関係者の方々、声援を送ってれた方々、選手の方々、本当にどうもありがとうございました!
表彰はないとはいえ、人生で初めて1位になれたのは本当に嬉しかった!70㎞地点くらいで回復でき、そのままトップに追いつき進めたのは、前半無理をしなかった事と、暑さへ対応するため早めにペースを落としたお陰だと感じた。その辺をコントロールできたのは良かった。
一方、課題にしていたフォームに関しては改善の余地がある。左スネ前の痛みの他に、両足くるぶしに何度も反対の足が当たっていたので、もっとフォームを良くしていきたい。それ以外は、強い疲労や筋肉痛はなく月曜日から走れたので、耐久力の向上は感じられた。
補給に関しては、固形物はほぼエイド食だけで進めたのはいい経験になった。加えて、途中でアイスコーヒーを飲んだり、炭酸水を掛けたりする効果を経験する事ができて良かった。今回は4回のエイドの他に、コンビニを15回、自販機を1回使った。少し多いかもしれないが、体温コントロールと気分転換にもつながったと思う。7月15日スタートの房総半島1周(280km)は、今回の経験を活かし、何とか完走をつかみ取りたいし、11月のバックヤードに向けてできる限りのアップデートをしていきたい!
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