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‘’つながり‘’を抱えすぎていませんか? 山村のフィンランドサウナで薪割りしたらほしい‘’つながり‘’の在り方が見えてきた話。

つながりってなんだろう。
LINEでスタンプを送りあうこと?
SNSでフォローすること?
いいねをつけること?

最近、”つながり”ってなんだろうと考えました。
きっかけは、コロナにより交流がオンラインベースになってきたこと。
対面のときは2時間の飲み会で話せるのは多くて10人でしたが、今は、SNSやWebセミナーなどを使い何倍もの速さで人と知り合っていけます。その中で築かれるオンライン上のコミュニティや人脈。それを‘’つながり‘’と呼ぶことも多いようです。
インターネットの発展は、場所や時間の制約をなくし、わたし達に外へ外へ向かっていくよう促してくれました。「つながっていこう!」が、今の時代のキャッチフレーズのように感じます。

SNS、吹き出し

中には、「出会えてよかった!一生大切にしたい」と思える幸せなつながりもあります。
でも、”つながり”は、本当に元気にしてくれるものばかりでしょうか?
「つながりは大事だ」と思うあまり、実は興味のない会話に参加していたり、空き時間はSNSをたどり続けたり、フォロワーの数に一喜一憂したり。
もしかしたら、抱え込みすぎて、あなたを疲れさせているものもあるのでは?

もしそう感じたら、行ってほしい場所があります。それは、いつもは外へと向いているあなたを、自分の内へ向き合わせてくれる場所。自分が大切にしたいものを思い出させてくれる場所。

今回、その場所を見つけたきっかけは、「フィンランドサウナ」と「薪割り」でした。一体どういうことなのか?あなたの心を軽くする‘’つながり‘’の在り方を、一緒に探しにいきましょう。

フィンランドサウナで癒されたい!

フィンランドの人々はサウナが大好きで、人口約550万人に対してサウナの数は約300万個といわれるサウナ大国。戸建てだけではなく、公衆サウナ、マンション、コテージ、会社、空港に国会議事堂にまでサウナがあります。かつては、亡くなった時に遺体をサウナで洗ったり、反対に出産もサウナでおこなっていたほど生活に密着しています。
フィンランドの人々は、日々の疲れをサウナで癒すのです。

フィンランドサウナの特徴は「ロウリュ」と呼ばれる熱し方。高温にした石に水をかけ水蒸気で室内を温め、水量で温度と湿度を自由に調整します。通常は日本のサウナほど温度を上げず(約40~60℃ほど)、湿度も高いことからサウナの中でも喉が渇きすぎず会話ができます。

フィンランドサウナ内部

わたしは以前から「フィンランド好きとしてはサウナの良さを理解したい!きっとフィンランドの”豊かで幸せな生き方”のヒントがあるはず!」と思っていました(以前も同じことを言っていましたね)。
日本国内にあるフィンランドサウナを巡っていたのですが、情けないことに、そこでは熱さにも水風呂の冷たさにも耐えられず我慢大会のような有様。サウナの良さは理解できていないままでした……。

その矢先、Instagramを辿っていたときのこと。あるホテルで「薪割り&フィンランドサウナの火入れ&そのサウナに入るワークショップ」を発見!
主催は「ume,yamazoe」さん。奈良県奥大和地方の山添村に2020年にオープンした1日限定3組のホテルです。

山添村は人口約3,500人、土地の約80%が山林という農山村です。
ホテルには「ume,sauna」という薪ストーブでのフィンランドサウナがあります。人生初の薪割り体験、そしてその薪でフィンランドサウナに入れるという絶好のチャンス。今度こそフィンランドサウナの良さを理解したい!と、意気込んで申し込んだのでした。

薪割りはエネルギーのバトンリレー

当日はスタッフさんやオーナーさんを含め十数名。「今日の参加理由がサウナの人~?」という問いかけにほぼ全員が手を挙げます。しかし、そこでオーナーの梅守さんが一言。

「前回このワークショップをしたとき、『楽しかったな』で終わってしまったんです」

実はホテルやサウナそのものがしたくてホテル経営を始めたわけではないという梅守さん。”ある感覚”を感じてほしくて、長く留まることで感じ取ってもらうためにホテルにしようと考えたそうです。
サウナも同様に”ある感覚”を感じるためのものなのだと。一体どんな感覚なのでしょうか。

さあ、まずは斧!人生で初めて斧を持ちました。そして指導してくださる岡本 亮さんが、丸太を割ってみせてくださいます。でも丸太って……

斧、丸太、ささる

このサイズ。
小さい丸太もあるけれど、この斧が刺さっているサイズの丸太も普通に割ります。斧の刃のサイズと丸太のサイズが見合わない。おかしい。

でも割れます。

薪割、女性、手元

割れない丸太もありました。すると岡本さんから、「節が埋まってる」「根っこの部分だから強い」「付いてる枝の向きを見て。丸太が木だった時の上下が分かるよ」との言葉。

山に生えていた木。伐採され、運ばれて、切断されて、枝も切り落とされ、この丸太になりました。
こんなに変わっても、元がどんな木だったのかを語ってくれるのです。丸太の中に埋まっている節は、枝の部分が伸びかけて幹に巻き込まれたもの。根っこに近い部分は、幹から根へと広がるため丸太になっても少し末広がりの形をしています。木がどう育ってきて今日ここに至ったのか。ただの材料だったはずの丸太に、なぜか親しみを感じてきました。

1本の丸太は8等分され薪になります。薪にしたら終わりだと思っていた自分、甘かった。

薪、全体、散乱

こう割ったら

薪、全体、積棚

こう積むまでが薪割りです。

酒屋さんが酒瓶を入れるようなプラスチックケースに薪を投げ入れ、ケースを持ち上げて坂を下り、軽トラの荷台に薪を放りこみ、軽トラで運び、3人がかりで積み下ろし、崩れないよう積んでいく。
割ることよりも、その後のほうが長いし数人がかりです。このあと薪が乾燥したら、同じ流れを逆回転して薪を持って上がるのです。

薪がもとは木だったこと、伐採からサウナに至るまでこの作業をしてくれる人たちがいることを、わたしは今まで考えたことがあったでしょうか。
十数人が3時間かけて築いた薪の山。サウナでお客さんが燃やすと1週間でなくなるそうです。

この日割った薪はまだ使えないので、乾かしてあった別の薪で着火。薪ストーブの熱が石に伝わり、サウナを温めます。この石に水をかけながらサウナに入るのです。

サウナ、男性、火入れ

サウナに入る頃には日が暮れて周囲は星明りに。サウナの中は6人ほど入れます。灯はなく、燃える炎が人の輪郭をぼんやり映し出しています。お互いの表情ははっきり分かりません。会話をする人、ひとり黙る人、火を見つめる人……。

今回のワークショップでは参加者同士の自己紹介はなく、誰も名前を尋ねたり名乗ったりしませんでした。お互いのことを何も知らないまま、ただサウナに一緒にいました。

サウナの中で、ストーブに火をつける前に岡本さんが言われた言葉を思い出していました。

「薪はカロリーみたいなものでエネルギー。燃えることで薪のエネルギーが今度は熱になるんだよ」

ここに至るまで、何年もかけて育った木があり、薪になるまでの誰かの尽力を知り、最後にようやく生まれた熱でわたしは身体を温めてもらっています。周囲の自然と見知らぬ誰かによって、長くつながれてきたバトンを今渡されたんだーー。

自分も大きな環の一部としてエネルギーを受け取ったような心強い気持ちでした。

わたしが欲しかった”つながり”の在り方

山添村、ume,yamazoeさん、そして薪を割ってのフィンランドサウナ。ここには便利さはなく、サウナでは服もなく、灯もなく、名乗りもしませんでした。
でも代わりに、自然が分け与えてくれるエネルギーや、見えない所で支えてくれていた人たちの有難さ、名乗らなくても心地いい集いが、そこにはありました。
自然もその人たちも、わたしに「つながろう」と言いません。ただ、そこにあるだけ。

わたしは日々の‘’つながり‘’の中で、「相手の発信に答えなければ。自分からも発信しなければ」と思っていました。そんな双方向の‘’つながり‘’が多いほど、頼れる人脈ができ、安心できる時代なのだと。
でも、今回の体験では、受信も発信も求められませんでした。それらがなくても、環の一部としてつながっていてくれるような、そんな心強さに包まれていた気がします。
その掌の中でわたしは安心でき、そしてふと、「わたしが抱え込んでいる‘’つながり‘’は多すぎるな」と思いました。
無理にやりとりしなくても、環の中に自分がいると感じられる。数は少なくとも、そんな‘’つながり‘’こそわたしがほしかった在り方なんだと、なんだかストンと納得できたのです。もし、今あなたが‘’つながり‘’をたくさん持っていて、時に腕が重く感じるなら、「ume,yamazoe」さんにぜひ行ってみてください。日常にない大きなエネルギーの中で、自分の大切にしたいものは何かを考えるきっかけになるはずです。

残念ながら行けないという方は、フィンランドサウナや自然のある場所へ出かけてみませんか?服も肩書きもなく、自分に何も求められない場所は、わたしたち自身に向き合うのに最適です。

森、湖、ヴィヒタ

‘’つながり‘’に満ちた時代。あふれすぎたその次は、つながりを‘’選ぶ‘’ことが必要になってくるのかもしれません。
その時に、あなたが選ぶ基準は何でしょう?自分が心軽くいられる‘’つながり‘’ってどれでしょう?それを自分自身と向き合って考えられる場所へ、あなたも行ってみませんか。

湖、女性、後ろ姿

つながりってなんだろう。
冒頭の問いをもう一度考えてみました。

それはわたしのままでいさせてくれるもの。
それはあなたを元気にするもの。
環の中に自分がいると感じられるもの。

読んでくださったあなたとも、そんな”つながり”を結んでいけますように。

Text by ひらふく(おとな教育の実践人事)


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