2020/ホクレンモデル
士別にやってきた。ホクレンディスタンスチャレンジの開幕を観るためだ。毎年、ホクレンのために、北海道と東京を何度も往復する。例年であれば、スケジュールが発表された時点で飛行機も宿泊施設も選手や関係者で埋まってしまい予約がなかなかとれないが、今年はすんなりと取れた。出場できる選手は1レース25名までと絞られ、取材記者も1社1名と限定されたことも一因かもしれないが、旭川についてわかった。いつもは旭山動物園や美瑛といった観光地目当てのインバウンド観光客が全くいないからだ。
旭川からレンタカーにのって士別についたら、真っ先に地元のスーパー「らくらく駐車」へ。そんな名前のスーパーあるか!と言われそうだが、グーグルにそう出てくるからしょうがないのだ。
ホクレンはお昼から夜まで次々とレースが行われる。お腹もすくし、喉もかわく。いつもは地元グルメの出店が出るので、それを楽しみにしているのだけれども、今年は無観客レース。出店もない。あらかじめスーパーで飲み物や食べ物などを調達しておかなければならないのだ。スーパー「らくらく駐車」本当の名前は知らないが、世界中どこにいっても、レース飯は地元のスーパーの惣菜売り場が間違いない。これも旅の技術のひとつ。
カレイがなんかむちゃくちゃ安いような気がする。
十勝納豆とか。
夜9時くらいまで、ご飯を食べる余裕がないので、カロリー高めの惣菜とミネラルウォーター2リットルを買い込んで士別陸上競技場へ。
2020年初トラックだ。
取材受付には列ができていた。例年なら士別まで取材に来る記者やカメラマンは数えるほど。しかし、陸上競技が開幕するということもあり、10数社の媒体が士別まで集まった。取材記者、カメラマンは選手同様、レース前、1週間の体温を記入した体調管理チェックシートの提出が求められ、受付時に、再度、検温をしてから競技場内への入場が許される。そしてレース終了後も2週間、体調管理チェックシートへの記入と提出が必要となる。主催者、関係者の思いはひとつ。「ホクレンからクラスターを出さないこと」である。網走や千歳大会で観客をいれた場合、観客にも体調管理チェックシートを提出することを求められていくだろう。その手間を考えると、観客をいれたレースを開催するのは、なかなか高いハードルとなりそうだ。
マスクの下はみな笑顔だ。野球でいえば、東京ドーム初戦みたいなもの。とにかく、待ちに待った陸上がはじまることがうれしくてたまらないのだ。
取材記者たちは左手のスタンドへ。囲み取材は緑色のテントとスタンドをZOOMでつなぎ、「オンライン囲み取材」というスタイルをとる。記者席であれば、電源も確保できるのだが、観客スタンドには電源がない。囲み取材の途中で電源がきれても大丈夫だ。ZOOMでの囲み取材は録画され、その動画は後に記者たちにシェアされる。
ホクレンといえば、トップ選手の息遣いが聞こえるくらいの距離でレースを堪能できることが醍醐味だが、選手と記者が蜜にならないよう、徹底的に配慮されている。カメラマンも同様だ。陸連オフィシャルカメラと通信社、地元新聞社の数人のカメラマンだけが、インフィールド・アウトフィールドの限られたエリアで撮影ができる。取材記者たちは、彼らに記事に使いたい選手を事前にリクエストしておいて、シェアしてもらうことで自社媒体で使うことができる。スポーツ報知の太田記者は「農大二高の石田選手をリクエストしました」と、さすがの動き。
選手だけでなく、カメラマン同士もソーシャルディスタンスを守る。カメラマン同士が蜜にならぬよう、間隔をあけてポジションを決めるのだ。
今回のホクレンはすべてライブ配信される。ライブ配信は以前からされてはいたが、今回は陸上ファンのために、実況が入る。実況にはMGCでもおなじみ、河野匡日本陸連長距離・マラソンディレクターだ。この人選はいい。なぜなら、河野さんは、ネットリテラシーが高いからだ。すごいスピードで流れる観客のコメントを読み込みながら、「みんなが知りたいこと」を入れていくこと。そして選手との絶妙な距離感を保ちながら、台本無しですすめていくことは、そのへんのスポーツDJでは無理だからだ。
流れはこうだ。選手がゴールする。
組トップ選手、そして記者からリクエストが出た選手はゴールエリアに残り、そのほかの選手はすぐに退場となる。
ここで、河野さんが話を聞けるのは画期的なこと。ぜひ、次回の深川はライブ配信中にコメント蘭で河野さんに「選手に聞いてほしいこと」をどんどんリクエストしてほしい。河野さんはコメント蘭を読み込んで対応してくれるはずだ。
その後はスタンドの記者とZOOMでつないで囲み取材が行われる。この自粛期間に選手も記者もZOOMの使い方は慣れたこともあって、スムーズに進行していく。選手も落ち着いて質問に答えることもできるし、録画されるから、あとからテープ起こしをして、記事にするときも楽だ。会場外からも取材もできるだろうから、この取材スタイルは駅伝などにとても有効だと思われる。一方ですべてのコメントが共有されるがゆえに、それぞれの記者がコメントをもとに、どうやって独自性を出していくか。リザルトとコメントだけで構成された記事では違いが出ない。クリエイティビティーが問われることになり、陸上コンテンツがもっと豊かになっていくに違いない。
それにしても、走り終えた選手は結果に関わらず、走れる喜びにあふれ、笑顔がたまらない。
さあ。深川もオンラインで一緒に楽しみましょう。
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月刊 EKIDEN NEWS
月刊といいながら、一日に何度も更新する日もあります。「いつかビジュアルがたくさんある陸上雑誌ができるといいなあ」と仲間と話していたんですが…
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