フライシャーVHS二本立て|【ザ・ファミリー マフィア血の抗争】|【ザ・ファイト】
■フライシャーをVHSで観る
映画監督の先輩の家に上がり込んで、昼間からビールを飲みながら、デッキにVHSテープを突っ込んで、リチャード・フライシャーのちょっとレアな二本立てを堪能した。
フライシャー好きの先輩の解説を聞きながらやから、集中して映画を観るという感じやなかったけど、4:3サイズにトリミングされたVHS画質の画面を観るなんて久しぶりで、至福の午後やったな。
観たのは、この二本立。
【ザ・ファミリー マフィア血の抗争】
アメリカ映画|1973年|114分
【ザ・ファイト】
アメリカ映画|1983年|106分
■ちょうど10年の間をもつ二作品
この二つの作品には、ちょうど10年の期間があるんやな。
それについは、意図していた訳でなく、ただの偶然。
しかし、やはり年代の違いってのは感じて、80年代の【ザ・ファイト】は軽くて明るい作風やねんな。
どことなく、ジャッキー・チェンのスパルタンXを思わせるような、ふざけた明るさがある。
一方、70年代の【ザ・ファミリー 】は、映画が映画らしかった頃の重さがあるな。
■先輩の評価
ところで、先輩曰く。
「【ザ・ファミリー マフィア血の抗争】は【ゴッドファーザー】のB級版と思えば楽しめる。とはいえ職人監督フライシャー、それなりの映画に仕上がっている」
「【ザ・ファイト】は、【ロッキー】へのアンサー映画ともとれる日本未公開のレアものとして面白い」
ということだったが、実際に
【ザ・ファミリー】は、どこなく【ゴッドファーザー】のノリを出そうとしてたり、ふいに入る音楽が、ちょっと【ゴッドファーザー】臭いかもなと思えるから微笑ましい。
画面に関していえば、【ゴッドファーザー】に引けをとることは一切無い。
【ザ・ファイト】は、完全に【ロッキー】をおちょくったようなシーンや衣装、ファイトシーンがいくつもある。
ファミコンのパンチアウトみたいな倒れ方する奴とかいる。
ただ、間違えてはならないのは、どうやらこの映画はボクサーの話ではないようだ。あくまでミュージシャンを目指す青年の話のようだ。
その過程にボクシングがあるという、若干トンデモ映画っぽいのが微笑ましい。
■起伏がないが、だがそれがイイ
それから、先輩はこんなことも言ってたな。
「フライシャーや職人的なB級映画監督の作品は大抵起伏がない、だがそれがイイ」
■映画は経済的評価を除いて捉えられない
これには、ほんと頷くところで、職業監督して経済的に撮影をすると、結果的に起伏というものが演出されにくくなるんではないかと思う。
しかし、起伏があればいいというものではない。
その経済的な撮影により、極シンプルな、これ以上わかりやすい画面はない云えるような、最高に映画的な画面ができるのだ。
*経済的な撮影とは、カットを細かく割ることで、撮影時間を要しすぎて、コストがかかるとか、そうことを回避する職人監督の名人芸だ。
そういう視点を持って映画を観始めると、映画とは芸術や作家性だけ観ると、どこか評価を間違うんだなと思えてくるし、ズブズブと映画の画面中毒になる。
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