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溝口健二【名刀美女丸】|名人のやっつけ仕事は大体傑作

日本映画(京都)|1945年|67分

びびったわ、めちゃめちゃおもろいねん

■傑作
溝口健二【名刀美女丸】って、気になってたんやけど、観てみたら途方もない傑作やった。
タイトルもキマッてるし。
しかも67分なんて、ええやん。
繰り返し観られる長さで丁度いい。

■明瞭な描写は映画の手本
明瞭な描写で、観始めてすぐに、引き込まれんねん。
刀が折れて、地面に落ちる短いカットだけで、アッ!となって物語が気になって仕方なくなる。
観ないとわからんと思うけど、映画の手本のような作品やなと思ったわ。

■映画の魔法
あとな、映画の画面の魔法がある。
とてつもなくシンプルな方法(単純な画面効果、カメラの動き、人の動き、フレーム)で出現する魔法やねんけど、不意に画面の連なりの中に現れる。
この”不意に”っていうのもまた、”映画”やねんな。
そういうのが現れると、お見事っ!て高揚するわ。

なんか、伝えられてへん気はするけど….
単純にめちゃめちゃおもろいねんなあ。
ラストもクスッとしてええねんなあ。

■名人のやっつけ仕事なのか?
ちなみに、監督の溝口健二本人は、名刀美女丸に関連する発言をしとって

「戦争ももうガタガタしてた時でね、ついにこんなものしか撮らせてなくなったのだ。しかも二十日くらいで作らされたよ。みんな徴兵だろう、僕はかくれていたんだよ。せめてこんなものでごまかしてる他なかったんだよ」
溝口健二著作集(キネマ旬報社)

なんていうか、とりあえず適当に撮った的なこと言うてはるねん。
しかし思うけど、名人が適当にというか、脱力して撮った場合って、シンプルな傑作が生まれたりする気がするんやけど、これもそいう生まれ方をした傑作ちゃうんかな。
まあ、世間的にそんな傑作指定されてへんかもしらんけど。
間違いなく傑作やと思う。

【内容】
花柳章太郎を主演に撮り上げた芸道もの映画。 ... 舞台は幕末。若い刀鍛冶の清音は自分のミスから恩師に大失態をさせてしまい、さらにそれが原因となり恩師を殺されてしまう。清音は名刀作りに精を注ぎ、恩師のお嬢様と共に復習を果たそうとする。
松竹作品データベース


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