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中国が台湾及びインド太平洋地域にて行っている軍事行動を国際法の観点から分析した洋書の紹介
「China, Taiwan and the Crime of Aggression: An International Criminal Law Analysis of China’s Military Operations in the Indo-Pacific Region」
John Dotson, Brian C. Chao, Brian Zhang著
![](https://assets.st-note.com/img/1737721281-QCVS4Bp2NJi6Z9YEwxMngPuK.jpg?width=1200)
著者たちは中国が台湾だけでなく、フィリピン、オーストラリア、米国、日本など、インド太平洋地域の国々に対して行っている軍事行動を国際法に基づいて分析し、中国のこれらの行動が威嚇行為や侵略行為にあたるのかを検証しています。
この本の主要な論点の一つは、「台湾は国家なのか?」という問題。 著者たちは国際社会で受け入れられている国家の定義をいくつか挙げ、それらに基づき台湾は事実上、国家とみなすことができると主張しています。
中国は「一つの中国原則」(「一つの中国政策」とは別)を主張し、台湾を中国の一部とみなしています。 しかし、著者らはこの主張について歴史的にも客観的にも正当性がなく、中国共産党の政治的な意図に基づいていると述べています。1930年代では中国共産党を含む中国の主要な政治勢力は、台湾が日本から解放されることを支持していたものの、中国との統一という主張はしていませんでした。 しかし第二次世界大戦に米国が参戦してから、中国共産党と中国国民党は台湾の人々は「中国人」であり、一つの中国であると主張するようになりました。1949年に中国共産党が中華人民共和国(中国)を建国してからは中国の正式な見解となります。
中国は経済力や貿易力を利用して、台湾を国家として認めないように国際社会に圧力をかけています。 その結果台湾と国交を結んでいる国はほんの僅か。 しかし、多くの国々が非公式な形で台湾との交流や貿易をしており、そのあり方はもはや事実上「国同士」の関係であると述べています。
また著者らは中国が台湾(とその他の国)に対して行っている情報操作・世論誘導などの工作についても、ロシアがウクライナ(とその他の国)に対して行っている工作と手口や目標が同じであるとしています。
両国は権威主義国家であり、帝国主義的な領土拡大の考え方から隣国を自国のものと捉え、隣国を強制的に併合しようとしているとも述べています。
主に台湾についての分析が載っていますが、中国がフィリピン、オーストラリア、米国、日本などの周辺で行っている軍事行動についても国際法の観点から見て威嚇行為・侵略行為であると指摘しています。
様々な視点からこの問題を見つめた書籍が多数出版されていますが、冷静に法律や客観的な事実に基づいて論じているという点では読む価値があると思いますね。