映画雑感/日本映画も捨てたもんじゃない@侍タイムスリッパー
映画で感動したのは何年振りだろう。
そんなに沢山観ている訳ではないし、映画ファンと呼べるべきほど詳しくもない。
つまり、コアな映画ファンでないことをまずはお伝えしておく。
そんな私が中学生だった頃、初めて映画館に行って観た映画はスタンリーキューブリック監督の「2001年宇宙の旅」だった。
正直、当時はさっぱり理解できず、今もまったく印象に残っていない。
まだ子供だったんだなぁ〜としみじみ思う。
しかし、人類が月に降り立つ前年にこんなSF映画を作っていたなんてアメリカという国はすごい。
と言うか原作自体は、1951年に書かれているので、人間の想像力の豊かさに改めて驚くと同時にこんなに早い時期にスクリーン化された事が今思っても驚きだ。
そして、確か続けざまに観たのが「大脱走」だった。
同級生3人で観に行ったが、捕虜となり皆で収容所から計画的に脱走を企てる様子をワクワクしながら見守っていたのだが、何と言ってもスティーブマックイーンが豪快に乗り回すTRIUMPHのバイク姿のカッコ良さに皆釘付けとなった。
その後、友人2人と結託して免許もないのに我が父親が仕事で使っていた50ccバイクを拝借して、ひと気のない山に向かい代わる代わる山道を走破して戻ってくる事を繰り返したりした。
やがて、高校に入り3人とも原付免許、自動二輪免許を取り、バイクを乗り回すようになったのだから、この映画の影響力はとてつもなく大きい。
因みにバイクは、ホンダCB250ドリームというブルーグリーンとホワイトのツートンのタンクで4サイクル特有のヴォンという地面を揺さぶるような低音の排気音が欲しくて仲間たちとバイトして、御徒町に当時密集していたバイク専門の中古車屋さんまで出かけ購入したのだった。
話を本題に。
いやはや、前置きばかり長くなってしまったが、映画館、シネコンなどで観た映画が少ないとは言え、毎年気になった映画は近くのシネコンで席を押さえ観る事をずっと続けて来たつもりだ。
何を申し上げたいかと言うと、「侍タイムスリッパー」は私にとっては「大脱走」以来となる心に残る映画だと言いたい。
そんな馬鹿な、と笑われるかも知れないし、大して映画を知らない癖に、などと映画関係者や通の方からお叱りを頂くかも知れないが、それだけ感慨深く心を揺さぶられた映画だった。
全くカテゴリーは違うし、長い歳月が経ってしまってはいるが、兎に角、自分にはそれだけインパクトがあったのだ。
笑いもあり、涙ありという平べったい表現をするが、鑑賞して感じたのは正にそのまんまで、心が熱くなる映画だった。
実際に観たのは11月の初めの事だが、何ら予備知識もなく、良い映画だから観たいという連れ合いの誘いのまま、シネコンに向かった。
ファーストシーンは、嵐の中、2人の侍が対峙し殺伐とした殺陣のシーンから始まり、よもやの展開で現代社会へ舞い降りる。
笑いを誘うシーンが続くが、主役の山口馬木也の朴訥な演技がとても良い。
表情や訛りのある言い回しが自然で、昔のお侍さんならきっとこんな話し方をするだろうなと勘違いしてしまうくらい、地に足がしっかり着いた演技が光っていた。
あらすじを事細かに書けないのが残念であるが、脇を務める役者さんについてもどちらも演技力が高く、ひとりひとりが良い味を滲み出していて、誰ひとりとして抜けの無い演技力と存在感を持っているのだ。
殺陣については、専門家ではないのでこちらも詳しくは語れないがラストシーンが素晴らしい。
迫真の演技とはこういうのを言うのだろう。
どうなってしまうんだろう?と思い切り引き込まれてしまった。
館内で観客の皆さんの笑い声やどよめき、息遣いなどが聞こえる映画を観たのは久しぶりであった。
そして、エンドロールの時に良かったねと話し掛ける声も聞こえた。
こうして、その場に居合わせた人だけが得られる一体感そして臨場感を思い切り愉しみ、正直すごく感動して余韻で頭が一杯になって、家路に着いたのであった。
見終えた後でわかった事だが、自主映画という事に驚かされた。
時代劇、一般に謂れる「チャンバラ映画」が斜陽であり、窮地に追いやられている状況は薄々は知ってはいたが、こちらの映画、なんと監督は撮り終えた時、預貯金残が7千円だったと記されている。
キャスト陣の下向きな必死さ、制作に携わったすべての人たちの「魂」を感じさせてくれる映画なんだ。
巨額の資金を掛けて有名俳優、有名監督を起用した大作と言われる素晴らしい作品はこの世にたくさん存在するけれど、お金をかけなくともこんな素晴らしい映画が作れるというサンプルを提示してくれた。
更なる快進撃を続け、続編を観たいと願う。
この映画、本当に面白いです。
全国に上映館が広がっています。
是非、足を運んでみてください。
尚、飽くまでも私見で書かさせて頂きましたので、映画通の方で敬遠される方もいらっしゃるかもしれませんし、趣味趣向が合わない方も当然いらっしゃると思いますので、ご了承ください。
それでは、最後に幕末の世を妄想して一杯のおそばを頂くとしよう。
「それがし、ワカメそばを喰らうとせむ。」
江戸幕末の頃にこのメニューは、多分あったであろうと想定。
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