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往年の香港を舞台にしたアクション巨編 『トワイライト・ウォリアーズ 決戦! 九龍城砦』

トワイライト・ウォリアーズ 決戦!九龍城砦
2025年1月17日(金)公開 全国ロードショー

■あらすじ

 1980年代半ばの香港。難民の青年・陳洛軍(チャン・ロッグワン)は、黒社会の大物・大兄貴に金を騙し取られ、組織の金を奪って逃走する。逃げ込んだ先は、警察や黒社会の手が届かない九龍城砦。洛軍は城砦を束ねるリーダー、龍捲風(ロン・ギュンフォン)に匿われて城砦で暮らすことになった。

 真面目な働きぶりから、洛軍は九龍城砦で龍を支える青年グループの一員になる。洛軍にとって九龍城砦は一時的な避難場所から我が家になったのだ。だがそこに、香港政府による九龍地区再開発の話が持ち上がる。

 これに目をつけたのが、香港黒社会の大物である大兄貴だ。彼は九龍城砦の大地主である秋兄貴に、かつて彼の妻子を殺した殺し屋・陳占(チャン・ジム)の息子が洛軍だと密告する。だがこれは義兄弟である龍と秋兄貴を仲違いさせ、自分が九龍城砦の利権を手に入れようとする策謀だった。だが復讐心に燃える秋兄貴は、この企みにからめ取られてしまう。

■感想・レビュー

 香港で大ヒットしたアクション巨編。原作は余兒の小説「九龍城寨」(2008)で、映画化の企画は2010年代から何度か持ち上がっては頓挫したとのこと。それが2024年についに完成すると、香港で記録的な大ヒット。確かにこれは面白い。文句なしに面白い!

 出演者が豪華で芝居に奥行きと厚味があり、目を見張るようなアクションも満載。だが一番の見どころは、物語の舞台になっている九龍城砦の美術セットだ。迷路のように入り組み、昼でも日差しが入らず暗い九龍城砦の中を、登場人物たちが猛スピードで駆け回る。そしてそれを追跡するカメラも、縦横無尽に動きまわる。CGなども使っているとは思うのだが、一体どうやって撮影したのか皆目見当が付かない場面も多い。

 原題は『九龍城寨之圍城』。英題は『Twilight of the Warriors: Walled In』で、これが日本題のベースになっている。城塞の中にいる黄昏の戦士たちの物語だ。この「黄昏」は老境に入った古い世代の男たちのことであり、やがて消えていく九龍城砦という場所で戦う男たちのことでもある。

 この映画の九龍城砦は、かつての猥雑で活気溢れる香港という都市を象徴しているのだ。だがその香港は消えてしまった。2020年代に生きる我々はそれを知っているが、映画の登場人物たちはまだそれを知らない。彼らは城砦の上から夕日を眺めながら、不安と期待を胸にやがて来る新しい時代を迎えようとしている。

 映画の時代背景は1987年頃だが、九龍城砦は1993から94年にかけて取り壊され、現在は九龍寨城公園として整備されている。清潔で安全な街に生まれ変わった香港。だがそこに、黄昏の戦士たちが生きる場所はない。

 エンドロールでは本編から抜き出した、あるいは本編からカットされた九龍城砦セット内部の様子が丁寧に描かれる。これは消えた九龍城砦とそこで暮らす人たちへの惜別の歌なのだ。

(原題:九龍城寨之圍城)

109シネマズ木場(シアター5)にて 
配給:クロックワークス 
2024年|2時間5分|香港|カラー 
公式HP:https://klockworx.com/movies/twilightwarriors/
IMDb:https://www.imdb.com/title/tt20316748/

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