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女性教師が不良生徒に鉄拳制裁! 『勇敢な市民』
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■あらすじ
ソ・シミンは新人の高校教師。ただし非正規教員だ。赴任先のムヨン高校は校内暴力ゼロの模範校が売りだが、それは表向きの話。校内はハン・スガンという生徒に牛耳られ、生徒だけでなく教師たちもその暴力的な振る舞いに異を唱えられなくなっている。
シミンに何かできることはないのか? だが正規教員を目指しているシミンは、なるべく波風を立てるなと周囲に釘を刺されている。他の教師たちもスガンの行動は見て見ぬ振りをするし、教頭も教員も事なかれ主義であてにならない。
繰り返されるあからさまなイジメに我慢できず、シミンは教育委員会に現状を訴える。だがこれを知ったスガンの保護者が学校に乗り込み、シミンはスガンの保護者に土下座で謝罪する羽目に……。
もう八方塞がり。被害者は泣き寝入りし、周囲は見て見ぬ振りでやり過ごすしかないのか。それはできない。たとえ孤立無援であろうと、シミンはスガンに正義の鉄槌を下そうと決意する。
■感想・レビュー
韓国の人気ウェブトゥーン(スマホ用の縦読みマンガ)を原作とする、学園バトルアクション映画。おとなしく目立たない女性教師は、元オリンピック女子ボクシングの代表候補。ある出来事からその過去を封印していた彼女が、暴力と権力で学校を牛耳る高校生をぶちのめす。
あらすじだけ見るとすごく面白そうなのだが、これがどういうわけか凡庸で少々退屈なできになっている。映画の売りであるアクションシーンは悪くない。だがアクションに結びつける話の段取りが悪い。プロット(物語の構成)は単純明快なのに、ストーリー(物語の運び)が回りくどいのだ。
物語は「主人公が我慢を重ねた末に怒りを爆発させ、悪党をバッタバッタとなぎ倒す」というもの。じつに単純明快だし、類似の映画は山ほどある。だが本作『勇敢な市民』が残念なのは、主人公が怒りを爆発させるタイミングが中途半端なことだ。これはもっとずっと前に出すか、逆に終盤まで控えるのがセオリーだろう。
主人公が序盤から暴れ出す映画は多い。もはや古典になっている『ランボー』(1982)がそうだろうし、『ジョン・ウィック』(2014)の1作目や、最近だとジェイソン・ステイサムの『ビーキーパー』(2024)がそうだった。主人公は自分の隠された能力を出し惜しみせず、序盤からフルスロットルでそれまでの秩序をぶっ壊しにかかる。
主人公が最後まで理不尽な暴力に我慢し続け、最後に怒りを爆発させるのは、日本の任侠ヤクザ映画や、「水戸黄門」などに代表される時代劇によくあるパターンだ。観客は主人公が持つ力を知っていて、それが強い力で押しつぶされていることも知っている。バネが押しつぶされて力を蓄えるように、ジリジリと力を加えれば加えるほど、最後の爆発は力が強くなる。
主人公を暴れさせるタイミングは、早くてもいいし遅くてもいい。正解はないだろう。だがこの映画のように、中途半端な場所は良くないのだ。
(原題:용감한 시민)
ユナイテッド・シネマ豊洲(11スクリーン)にて
配給:KADOKAWA、KADOKAWA K プラス
2023年|1時間52分|韓国|カラー
公式HP:https://yukan-na-shimin.jp/
IMDb:https://www.imdb.com/title/tt22505214/