シリーズのエッセンスを巧みに要約 『エイリアン:ロムルス』
■あらすじ
ウェイランド・ユタニ社が経営する辺境の鉱山惑星ジャクソン。鉱山で働くレイン・キャラダインの夢は環境の良いユヴァーガ第三惑星への移住だが、ユタニ社による一方的な労働契約変更によって奴隷的な境遇から逃れられない。
そんな彼女に「ユタニ社が放棄した宇宙船を盗んでユヴァーガに行こう」と声をかけてきたのが、昔の恋人タイラーと仲間たちだ。鉱山星に未来はない。このままでは年期契約が終わる前に、事故か鉱毒で死んでしまうのが関の山だろう。レインは旧型アンドロイドの相棒アンディと共に、タイラーたちと放棄宇宙船に向かう。
だがその宇宙船は、貨物船ノストロモ号の残骸から回収した生物の研究施設だった。施設は破壊され、床や天井には溶けたような穴が空いている。一体宇宙船になにが起き、なぜ放棄されたのだろうか?
冷凍睡眠用の予備燃料を探す最中、レインたちは保冷装置から逃げ出した大型のサソリかクモのような生物に襲われる。
■感想・レビュー
『エイリアン』シリーズの最新作。映画としては7作目だが、時系列では1979年のオリジナル第1作目に接続する作品となる。
シリーズ直近の映画は、第1作目の監督リドリー・スコットがシリーズに復帰した前々作『プロメテウス』(2012)と『エイリアン:コヴェナント』(2017)。壮大なSF神話のような世界観は立派だったが、今回の映画はシリーズ初期のコンパクトなSFゴシックホラーやSFアクション・アドベンチャー路線に戻っている。
このシリーズは展開中にさまざまな設定や世界観を生み出している。それに夢中になり惹かれる人もいるのだろうが、映画としての面白さの原点はそうした部分にあるわけではなく、最凶モンスターの出現による人間の恐怖にある。今回の映画はその原点に立ち返るために、時間を1作目の直後にしたのだろう。
1作目との連続性を生み出すために、美術スタッフがかなり入念な仕事をしている。宇宙船のデザイン、エイリアンのデザイン、そして1作目と共通するある人物の登場。これにはちょっと驚いたが、これは映画の中で最も効果的な1作目との接続点になった。賛否はあるだろうが、僕はこれを評価したい。
この映画は過去のシリーズ作品その都度が打ち出してきた「新機軸」や「新しいアイデア」にあえて手を出さず、既存の世界観をそのまま借りているのが良かったのだと思う。映画としては『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』(2016)みたいな位置づけだ。この映画から『エイリアン』シリーズが大きく拡張されることはないが、シリーズのファンは自分たちの良く知っている『エイリアン』の世界に再び浸れることに、きっと満足できるに違いない。
しかしながら、この満足感は既知のものだ。このシリーズが作り出してきた「未知のものに触れる期待と不安」のようなものは、本作にはほぼ皆無と言っていいだろう。これなら旧作観てればいいのかも……。
(原題:Alien: Romulus)
109シネマズ木場(スクリーン2/IMAX)にて
配給:ディズニー
2024年|1時間59分|アメリカ|カラー
公式HP:https://www.20thcenturystudios.jp/movies/alien-romulus
IMDb:https://www.imdb.com/title/tt18412256/