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嵐の前の、静かすぎる静けさ 『デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション 前章』
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■あらすじ
某年8月31日。東京湾沖に突然現れた巨大な円盤形宇宙船は、米軍のA爆弾による攻撃であっけなく機能停止した。攻撃の巻き添えで東京では多数の死者と行方不明者が出たが、宇宙船はその後も墜落することなく、人間が歩く程度の速度で東京上空をさまよっていた。
それから3年後。巨大な宇宙船が頭上を飛行しているにもかかわらず、東京は普通の生活を取り戻していた。宇宙船からは時々小型・中型の飛行物体が射出されるが、それはたいてい自衛隊によって迎撃され、逃げ出した「侵略者」も自衛隊によって駆除されてしまう。
そんな非日常が日常になっている東京で、高校3年生の小山門出は暮らしている。親友の中川凰蘭たち5人組の話題は、ゲームやマンガ、卒業後の進路、仲間のひとり栗原キホの恋愛話など、高校生としては変わり映えのしない他愛のないものだ。
侵略者の宇宙船迎撃に巻き込まれてキホが死ぬ。少女たちの日常は、少しずつ変わっていく。
■感想・レビュー
浅野いにおの同名コミックを原作とする長編アニメーション映画の前編。全体に「何かが起きそうで起きない日常の不穏さ」を描いているので、これを見ると後編が楽しみになってしょうがない。
とはいえ、この前編だけ見ると、その「不穏さ」だけが継続する不完全燃焼ぶりに欲求不満が高まり、映画が終わっても物足りなさは残る。このあたりは、長いドラマの前編にも関わらず観客をさんざんハラハラドキドキさせ、最後は満腹にさせた『ミッション・インポッシブル:デッドレコニング PART ONE』との違いだと思う。
まあ『ミッション・インポッシブル』はオリジナルシナリオだからどうとでも作れるわけだが、長大な原作のある『ロード・オブ・ザ・リング』だって、三部作のそれぞれにクライマックスを用意して、観客を満足させつつ続編につないでいる。最近なら『DUNE』もそうかもしれない。長いドラマの一部であっても、その中に起承転結があって、後半にはちゃんとクライマックスを作るのがハリウッド流の作劇術なのだ。
もちろんそれに従わないのが悪いわけではないが、ここで後編が公開されるまで2ヶ月待たされるのは酷だと思う。これは前後編をぶっ通しで観せるような作りになっているからだ。
もちろん、この前編だけでも面白いし見どころは多い。命に関わる非日常がすぐ隣にあるのに、まるでそこから逃避するように日常の些事に埋没する人々や、陰謀論に右往左往する人々の姿にはリアリティがある。それは同時多発テロで、東日本大震災で、コロナ禍で、能登半島地震で、繰り返し見せられた人々の姿でもあるからだ。
我々の現実世界は、そうやって日常に帰っていく。だがこの映画は、日常に帰ることのない、その先の世界を見せてくれそうだ。たぶん、見せてくれるのだろう。それがどんなものになるのかは楽しみで、ここで話は「前編だけでは物足りない」という振り出しに戻ってしまうのであった。
TOHOシネマズ日比谷(スクリーン9)にて
配給:ギャガ
2024年|2時間|日本|カラー
公式HP:https://dededede.jp/
IMDb:https://www.imdb.com/title/tt28813303/