50年たっても色褪せない傑作! 『ジョーズ(IMAX)』
■あらすじ
アメリカ東海岸のアミティ島。夏本番を前に、この島にかつてない大事件が起きる。島に訪れていた女子学生を皮切りに、次々とサメが人を襲ったのだ。夏の観光シーズンへの悪影響を恐れた市長が、サメの存在を否定したことが事態の悪化を招いた。
警察署長のブロディは、4人目の被害者が出た時点で市長を説得。サメ専門漁師のクイントを雇って、人を襲うことに味を占めているサメを駆除することになった。クイントは一人でやると言い張ったが、ブロディは雇用者である警察署長の権限で自分も船に乗り込み、そこにサメ専門学者のフーパーも加わる。
サメには縄張り意識がある。人を襲ったサメは、まだエサ場である島の周囲にいるはずだ。エサ撒きをしながら、サメの出現を待つ3人。そこにとうとう、巨大なサメが姿を現す。体長およそ7.6メートル、体重は3トンの巨体だ。クイントは樽を結びつけたモリを打ち込むが、サメは樽を付けたまま海中に姿を消す。
■感想・レビュー
言わずとしれたスティーヴン・スピルバーグの出世作であり、映画史に残る世界的な大ヒット作。今日まで続く「サメ映画」の源流にして頂点。それがこの『ジョーズ』だ。
今年は製作から50周年らしいが、僕はこの映画を日本初公開時に観ている。東京の鮨詰めの映画館に、父親と出かけた記憶がある。当時は映画館の入れ替えなどなかったので、とりあえず劇場にもぐり込み、映画の途中から観始めた。
ブロディとフーパーが夜の海に調査に出かけ、沈没しかけた地元漁師の船を発見する場面だ。船の底には大きな穴があいていて、穴の縁には巨大なサメの歯。そして……というくだり。僕と父はそれから映画を最後まで観て、さらに最初から最後まで映画をもう一回観た。つまり僕はこの映画を、最初に1回半観たのだ。
それから50年たった。映画を観たのは東銀座の松竹会館だった気がするが、そこにはもう映画館がない。一緒に映画を観た父も、昨年老衰で亡くなった。『ジョーズ』はその後テレビなどでも観て、数年前には「午前十時の映画祭」でも観ていると思う。
多くの人が言うように、『ジョーズ』はスピルバーグ監督にとって今でもナンバーワンの最高傑作だと思う。非の打ち所がない完璧な映画のひとつ。50年前の映画だからもう古典もいいところだが、古典は繰り返し鑑賞しても、そのたびに新しい発見があるものだ。
今回観て感じたのは、3人が海に出てから、3者の力関係が変化していく様子が丁寧に描かれいてることだ。圧倒的な迫力で他の二人を圧倒していたクイントが、徐々に自信喪失していく姿。クイントとフーパーが海の男として連帯する中で居場所を失ったブロディが、最後はサメを仕留めるのも皮肉な話だ。登場人物は少なくても、そこには濃密な人間ドラマがある。
今回改めて大画面で観たことで、海に投げ出されたブロディとフーパーが海岸にたどり着く姿を、しっかり確認できたのは大きな収穫だった。
(原題:JAWS)
TOHOシネマズ日比谷(スクリーン4/IMAX)にて
配給:東宝東和
1975年|2時間4分|アメリカ|カラー
公式HP:https://tohotowa.co.jp/spielberg-imax/
IMDb:https://www.imdb.com/title/tt0073195/