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1980年代アニメブームの先駆けとなった名作 『銀河鉄道999(4Kリマスター版)』

銀河鉄道999 4Kリマスター版
2024年12月13日(金)公開 東京・新宿ピカデリーほか全国ロードショー

■あらすじ

 人類が肉体の機械化による永遠の命を手に入れた未来世界。そこでは裕福な機械化人による、貧しい生身の人間への差別と迫害が行われていた。生身の人間たちの夢は、いつの日か機械の体を手に入れることだ。

 星野鉄郎はスラムに暮らす人間の少年。幼い頃に機械伯爵に母を殺され、伯爵に復讐することを誓っている。そのためにも銀河鉄道999(スリーナイン)に乗って、機械の体をただでくれる星に行きたい。銀河鉄道の駅で機械化人から999号のパスを奪って警察に追われる鉄郎は、メーテルという美女に助けられる。

 メーテルは999号で機械化星に向かう旅に鉄郎を誘う。メーテルの旅に同伴するかわりに、その報酬は999号の正規の乗車パスだ。彼女の旅の目的はわからないが、鉄郎はこの千載一遇のチャンスに賭ける。

 鉄郎とメーテルを乗せて、999号は宇宙へと旅立つ。機械の体を手に入れるために。そして母を殺した機械伯爵に復讐するために……。

■感想・レビュー

 1977年から連載が始まった松本零士の人気SFマンガ「銀河鉄道999」を、りんたろう監督が映画化した長編アニメーション作品。主人公鉄郎のキャラクターデザインが、原作やテレビアニメ版より大人びた姿になっているが、野沢雅子や池田昌子など主要なキャストはテレビ版と共通だ。

 監修として市川崑監督の名前がクレジットされているが、これはマンガ原作のアニメ映画を東映系の全国チェーンで公開するに際して、興行主たちを納得させるための箔付けだったらしい。

 原作は1981年まで連載が続くのだが、映画はその前に結末まで描いてしまうことが話題だった。当時の少年たちにとっては、原作マンガとそれをほぼ忠実になぞるテレビ版に対して、この劇場1作目と続編『さよなら銀河鉄道999 アンドロメダ終着駅』(1981)は、原作とは別の「もうひとつの999」として受け入れられていたように思う。

 当時のファンたちがこれを受け入れられたのは、これに先だって映画『さらば宇宙戦艦ヤマト 愛の戦士たち』(1978)がテレビ版「宇宙戦艦ヤマト2」(同年)で別系統の物語として語り直された前例があったからだ。今なら「リブート」とか「マルチバース」とかいう言葉で説明されるものかもしれないが、自分も含めた昭和の子供たちは、多少の違和感を抱きながらもそれを難なく受け入れていたのだ。

 本作全体に流れるテーマは、「母子の愛憎関係」ということになるかと思う。鉄郎と母の関係があり、母の面影を宿すメーテルへの思慕がある。少年は母の面影を求めて年上の女性に恋をする。クレアの鉄郎への愛は母親の自己犠牲的な愛を、プロメシュームとメーテルの関係は支配と被支配の毒親関係を描いている。しかし子供たちは、やがて母から離れて行くのだ。

 今年で初公開から45年ということでリバイバル公開。4Kリマスター版自体は、2022年にドルビーシネマ版として劇場公開されている。

丸の内TOEI(スクリーン1)にて 
配給:Filmarks
提供:東映 
2022年(1979年)|2時間9分|日本|カラー 
公式HP: https://x.com/Filmarks\_ticket
IMDb:https://www.imdb.com/title/tt0080772/

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