台形のパンフレットと複雑の魅力。
先月くらいから毎日見ているnoteがある。Twitterでいつの間にか繋がった人のnoteだ。
七峰さんという方のアカウントだ。
直接お会いした事は無いし、存在を知ったのは最近だけど、Twitterとnoteで書かれてらっしゃる文章が好きで、気がつけば毎日拝読している。毎日拝読しているってことは毎日更新されているという事だ。
「この人、毎日書いてるのか。」と、思った。
このことを意識した次の日くらいから、私も何か日記のようなものを毎日書いてみようと思い、今に至っている。
七峰さんという方との接点は多分このサイトだ。ツイッターで今年の1月に知った「信州大学のWEBサイト」だ。これが面白いなぁと思って、ツイートしたらそこに七峰さんから「いいね」と、リアクションがあった。
どんな人が作ったのかなぁと調べたら、「リットル/ジョッガ」という会社のサイト( https://jogga.jp/ )に事例として掲載されていたので、たぶんこの会社がかかわっているな、と。で、どうやら七峰さんはこの会社の人であるようだった。
この信州大学のWEBサイトは、「パンパカパーン!」というフレーズから始まり、TOPページのファーストビューのメインイメージには様々な「言葉」が溢れている。
農学部っていそがしそう、大変そう、たいくつそう、クルマないとダメ、田植え?、牛の世話?、田舎、コンビニないの?、、、といった言葉だ。農学部に対して、一般の人々が抱いていそうな言葉がわんさかと、にぎやかに踊っている。そして、その次のブロックではなぜかチンアナゴが「そうかな?」と疑問を投げかけてくる。そして大きな文字で「NO」と否定し、「SEE FOR YOURSELF.」(己の目でたしかめろ)と煽る。
こういうイントロだ。
ファニーでサイケデリックなデザインで彩られたこのイントロで、私は心を掴まれた。文法がテレビショッピングのようだと思った。農学部のイメージを覆してやるぜ、という気概を感じる。
私も地方でWEBサイト制作やデジタルマーケティングのお仕事をやっているので、ざっくり括ると同業者といえるが、こういう仕事を見ると「ちくしょう、俺だって!」という気持ちになる。
「マーケティング」と「ブランディング」は似て非なるものだと思っている。マーケティングは「望む人」と「満たすモノ」をマッチングし、モノの価値を最大化させる仕事だ。一方の「ブランディング」はモノの価値を再定義して生まれ変わらせる技術だと思っている。
今まで見ていたモノや景色が違って感じる。あれ、なんかいいかも。と思わせる事がブランディングのミッションなのではないかと。
そういう意味で、劇映画や小説や演劇のような、「体験の積み重ね」というトンネルをくぐらせることで、その前後の世界を変えてしまう芸術もブランディングに似ていると思う。
あの信州大学農学部のWEBサイトをディレクションした人は、そういう感覚を知っている人だろうな、と思っていた。
七峰さんがこれにどこまでかかわっているのかは存じ上げないが、最近知ったんだけど、七峰さんはどうやら演劇を作っている人でもあるらしく、きっとこの人の感性に違いない、と、勝手に腑に落ちている。
演劇の話をする。
私は演劇には詳しくないが、宮沢章夫や三木聡が好きで、20代の頃は、ちょくちょく公演を見に行っていた。特にシティーボーイズが好きで、天王洲アイルアートスフィアで年一回やってた公演を楽しみにしていた。
想い出に残っているのが、2000年の「ウルトラシオシオハイミナール」というライブだ。内容は複雑過ぎるのでここでは割愛するが、その複雑怪奇なナンセンスを体現したパンフレットをご紹介しよう。これだ。
そして、このエピソードで触れなければいけないのは、このパンフレットを作ったのは誰か?という事だ。
祖父江慎だ。
クレジットを確認するまでもなく、こんなのを作るのは祖父江慎しかいない。
さらにいうと、このライブの音楽はピチカートファイブの小西康陽が担当している。豪華だ。
全ての演劇が好きかと問われると、そうでもないかも知れないが、どっちかといえば好きである。
私は「いろんな表現が詰まった夜の夢」みたいな感じで演劇が好きで、そういうものをうんうんと唸りながら作っている複雑な人が好きだ。
私は自分が演劇を作ったりはできないかも知れないが、演劇を作りそうな複雑な人にはなりたいと思っている。
ちなみに、さっきの台形のパンフレットだけど、本棚に並べるとこうなる。
収まりが悪すぎて、気に入っている。
複雑だ。
〈DAY32#62〉
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