日本企業の国際競争力を低下させる「昭和の謎ルール」
こんにちは、広瀬です。今回はDIAMONND onlineの記事「日本の競争力がヤバい水準まで低下、企業のビジネスを棄損する『昭和な謎ルール』の元凶とは」を題材に、日本のビジネスルールがいかに日本企業の競争力低下と社員のモチベーション低下を助長しているかを考察してみたいと思います。
タイトルにもあるように、日本企業の国際競争力は年々低下しています。
その原因は何でしょうか?
一方で、スポーツの世界では多くの日本人選手が米国メジャーリーグやヨーロッパのサッカーリーグ、バレーボール、ゴルフなどで活躍しています。これらの選手たちは年々増加しているように感じませんか?
ビジネスとスポーツ、この二つの分野で何が違うのでしょうか?
「昭和の謎ルール」と呼ばれる企業内の暗黙のビジネスルールが、企業の競争力を国内外で低下させている元凶だと私は考えます。もしこれらのルールを早急に見直さなければ、日本の企業は「ガラパゴス化」し、世界の競争相手から外れ、「非効率だが安くて正確、納期を守るから」という理由で下請けに甘んじることになるでしょう。
私のこの意見に共感する方は、ぜひ読み進めてください。また、「そこまで言うのか」と感じた方は、私の理論に対して否定・反論の気持ちで読んでいただけると幸いです。否定・反論は私自身の勉強にもなりますので、コメントとして投稿していただけるとありがたいです(ただし、コメント欄での議論は控えさせていただきますので、ご安心ください)。
いずれにしても、日本企業もスポーツ選手のようにグローバルな視野を持ち、経営を世界標準の視点で行う時期が来ています。日本のビジネスルールを改善し、これからの日本をリードする皆様へのアドバイスになれば幸いです。では、早速本題に入っていきましょう。
DIAMOND online記事要約
スイスのビジネススクール「国際経営開発研究所」(IMD)の2024年の世界競争力ランキングで、日本は67カ国中38位と過去最低となり、「ビジネスの効率性」に関する項目が低評価だったことが原因とされています。特に、「起業家精神」や「企業の機敏性」が最下位で、円安や国内経済の問題も影響しています。日本のビジネスの非効率性は、無駄な労働時間や意味のない会議、根回しなどが原因で、「ルールで縛る」というマネジメントの弊害が指摘されています。欧米でもビジネスプロセスと言うビジネス遂行のルールがありますが、これは目標達成のための手段の一つです。しかし、日本の場合はルールに従うことが目標になっており、本来の目標を見失っているのかもしれません。
日本はルールに厳しい国であり、これは「職場における仕事観・倫理観に関する国際比較調査」にも示されています。この厳しいルール遵守の文化は、学校教育での「規範意識」教育に根ざしており、理不尽なルールに従うことが社会人としての正しい姿とされています。
このような教育の結果、日本の企業文化は「社畜」を生み出し、ビジネスの効率性やイノベーションを阻害しているのかもしれません。校則と言うルールに縛られた教育よりも、生徒の自主性や創造性に任せた教育も、日本の競争力回復のために早急に見直す時期に来ていると思います。
日本のビジネスルール
あなたは日本企業に勤めていますか、それとも外資系企業ですか? 私はサラリーマン人生の大半を外資系企業で過ごしましたので、日本企業の暗黙のビジネスルールにうんざりすることが多々ありました。ITコンサルティングや経営コンサルティングでクライアント先に行った際にも、「これが日本企業なのか?」と驚かされることが頻繁にありました。あなたの会社はいかがでしょうか?
以下に、日本のビジネスルールを思いつくままに挙げてみました。これらのルールには日本企業にとって良い面も確かにありますが、あなたはこれらに素直に従えますか? 従うことによってあなたの業務効率やキャリアが向上するでしょうか? 私は外資系企業での経験が長かったため、ここに挙げたビジネスルールは全て是正すべきと考えています。はっきり言って、「こんな昭和なことは即刻やめるべきだ」と思います。しかし、あなたがこれらのビジネスルールによってモチベーションが上がると感じるか、それとも下がると感じるかは、あなたの価値観次第です。
1.目的と手段の逆転
日本では、ルール自体が目的化しやすい傾向がある。ルールは本来、効率的な業務遂行や問題解決のための手段であるべきだが、日本では「ルールを守ること自体」が目的となってしまい、ルールが状況に合わなくなっても柔軟に変更されない。
2. 年功序列
仕事の能力にかかわらず、年齢や勤続年数に基づいて役職や給与が決まる制度で、年齢が高いほど高い地位に就くことが一般的。某日本の超有名商社では、「Windows2000」と呼ばれる社員がいるという話がある。年功序列の結果、窓際に大きなデスクを構えて外出することなく一日中ボ~~っとして年収2,000万円。
3. 終身雇用
従業員は一度入社すると、仕事の能力にかかわらず、定年まで同じ企業で働くことが可能。経営者は仕事ができない悪い古参社員を多く抱えることのデメリットを認識しつつも、人員削減に踏み切れないでいる。結果として、仕事ができない古参社員が毎日若手社員に仕事を押し付ける状況が生まれがちである。
4. 集団主義
個人よりも集団のチームワークや協調性が重視され、個人の意見や行動は集団の和を乱さないように調整される。出る杭は打たれ、皆と同じようになるように指導され、背くと村八分になる。このため、個人がルールに対して異議を唱えたり、改善を提案したりすることが困難。ルールに従わないことが「和を乱す行為」とみなされ、個人が孤立したり、評価が下がったりするリスクがあるので誰も文句を言わない。
5. 根回し
特に大企業では、正式な会議や決定の前に非公式に関係者との事前調整を行うことが一般的。これにより、合意形成がスムーズに進むとされている。そのため、会議自体は承認の場となることが多く、決議事項に対する反対者は根回しの過程で説得され、最終的に賛成者となることが多い。
一般的に、外資系企業でも根回しに近い事前調整は行わるが、日本企業ほど頻繁ではない。
6. コンセンサス重視
意思決定において全員の合意を重視する方法。合意形成のために多くの時間が費やされるが、その結果として決定の実行力が高まるとされている。ただし、意思決定後に問題が発生した場合、全員で決定したために明確な責任者が不在となるデメリットもある。一方、外資企業では意思決定者が必ず存在し、その人には大きな権限とダイナミックなオペレーションが任される。しかし、失敗した場合には自ら責任を取るか、最悪の場合クビになる可能性が高い。
7. 儀礼と形式
日本のビジネスにおいて、儀礼と形式は非常に重視される。挨拶、名刺交換、会議の進行など、ビジネスのあらゆる場面で形式を守ることが期待されている。初対面の人とは必ず名刺交換を行い、会議資料は入念な準備を経て、事前に作成し先方に配布する。また、会議に発言しない人でも強制的に参加させられることが一般的である。このため、形式的にルールを守っていれば良しとされる風潮がある。言われた通りにやっていれば失敗しても責任は問われない。
一方、欧米では初対面でも名刺を持っていない人が多く、代わりにLinkedInの友達申請が名刺交換の代替として利用されることが多い。また、会議資料の事前配布はほとんどなく、日本人が20ページのPPT資料を作る場合でも、欧米ではせいぜい数ページが一般的。外資企業ではホワイトボードを多用し、儀礼と形式の準備には時間をかけず、ミーティングに集中してその場で結論を求める。発言しない人は初めから会議に呼ばれない。
8. 定時退社の難しさ
日本の企業では、上司や同僚が残業している場合、自分だけが先に退社することが難しい雰囲気がある。これは、集団主義のチームの一員としての責任感や同調圧力が影響していると考えられる。一方、外資企業では雇用契約書をベースに働くのが普通で、定時になれば帰るのが当たり前であり、各自責任を果たすのはその人の問題なので誰も文句は言わない(責任を果たさない人は、日本と違って簡単にクビにすることができる)。日本と欧米では宗教・文化が違うので夕食は家族全員でとるのが一般的で、定時30分前でも平気で退社する人もいる。しかし、そのような人は夕食後自宅で仕事をして圧倒的なパフォーマンスを出している。(日本企業の人は、多くの場合、アメリカ人がこのように働いていることを知らないでしょう。実際、アメリカ人は日本人以上に働いていることもあります。)
9.教育の影響
日本の小中高の学校教育では、規範意識を強く教え込まれえる。子供たちは、「ルールを守ることが正しい」という価値観を内面化し、大人になってもそのまま職場で実践する。これにより、ルールに対して疑問を持つことや改善を求めることが無い。さらに、日本の教育や企業文化では、創造性や自主性よりも規律や協調性が重視される。このため、新しいアイデアや異なる視点が尊重されにくく、結果としてイノベーションが起こりにくい環境が生まれる。
10.過去の成功体験
日本の企業は、かつての成功体験に基づいて現在のルールを維持しようとする傾向がある。そして、経済環境や市場の状況が変化する中で、過去の成功体験に固執することが非効率であることに気が付かない。
改善提案
日本企業の競争力を高め、社員のモチベーションを向上させるためには、現行のビジネスルールを見直し、改善することが不可欠です。以下では、各ビジネスルールに対する具体的な問題点の指摘と改善提案を示します。これにより、より効率的で柔軟な企業運営が可能となり、グローバルなビジネス環境にも対応できる企業文化を築くことができるでしょう。
1.目的と手段の逆転
問題点
日本ではルールが目的化しやすく、状況に合わなくなっても柔軟に変更されない。
改善提案
ルールの要・不要を見極め、不要なルールは切り捨てる。必要なルールはビジネス・プロセスとして柔軟に定義する。また、ビジネス・プロセスも適宜見直し修正を行っていく。
2.年功序列
問題点
年齢や勤続年数に基づいて役職や給与が決まるため、モチベーションや業務効率が低下する可能性がある。
改善提案
能力と成果に基づく定量的評価制度を導入し、実績に応じた昇進や給与の見直しを行う。年齢や勤続年数だけでなく、スキルや貢献度に応じた公正な評価基準を確立する。
3.終身雇用
問題点
能力に関わらず定年まで雇用されるため、経営者が人員削減に踏み切れず、若手社員に負担がかかる。
改善提案
業績評価と連動した人事制度を導入し、パフォーマンスが低い社員への再教育やキャリアチェンジをサポート、または定期的なキャリアレビューを実施し、社員の成長と企業のニーズに合わせた適切な配置転換を行う。早期退職プログラムと言う手段もある。
4.集団主義
問題点
個人の意見や行動が集団の和を乱さないように調整されるため、改善提案がしにくい環境。
改善提案
個人の人格を尊重し、意見を自由に表明できる場を設け、異なる視点やアイデアを歓迎する文化を育てる。また、社内やチーム内での意見交換を促進し、上長は上から目線で批判するのではなく、ブレインストーミングや建設的な批判や改善提案が奨励される環境を作る。
5.根回し
問題点
非公式な事前調整に多くの時間が費やされ、公式な会議が形式的になりがち。
改善提案
公式な会議での透明性を高め、意思決定プロセスを明確化する。必要な事前調整は短縮し、会議でのオープンな議論を促進し、議事録を公開し、全社員が意思決定の過程を理解できるようにする。マネージャー層や経営層の人たちの意識改革が一番必要である。
6.コンセンサス重視
問題点
全員の合意を重視するために意思決定が遅れることがある。
改善提案
明確な意思決定者を設け、その人に責任と権限を与る。重要な決定については期限を設け迅速に行動し、また、意思決定後は関係者全員でフォローアップを徹底する。ただし、その後の状況に応じて決定事項の修正は可能とする。
7.儀礼と形式
問題点
ビジネスの場で形式が重視されすぎるため、実質的な議論や意思決定が後回しになることがある。
改善提案
儀礼や形式を簡素化し、実質的な議論に重点を置く。会議資料は必要最低限にとどめ、重要な情報だけを共有する。必要なメンバーだけが参加する効率的な会議運営を心がける。
8.定時退社の難しさ
問題点
上司や同僚が残業していると、自分だけが先に退社しにくい雰囲気がある。改善提案
効率的な業務遂行を奨励し、成果重視の働き方を推進する。フレックスタイム制度やリモートワークを導入し、各自の責任範囲で仕事を完了させる文化を育てる。上司は率先して定時退社を実践し、健康的なワークライフバランスを推奨する。
9.教育の影響
問題点
学校教育で強く教え込まれる規範意識が、職場での創造性や自主性を抑制する。
改善提案
社内研修やワークショップを通じて、創造性や自主性を重視する教育を行う。失敗を恐れずに新しいアイデアを試す文化を作り、イノベーションを奨励する。成功事例だけでなく、失敗から学ぶ姿勢を育てる。
10.過去の成功体験
問題点
過去の成功体験に固執するため、新しい挑戦や変革が遅れる。
改善提案
過去の成功体験を学びつつ、現在の市場環境やトレンドに基づいた柔軟な戦略を取り入れる。外部の専門家やコンサルタントを活用し、新しい視点やアイデアを積極的に取り入れる機会を増やす。定期的な戦略レビューを行い、企業の方向性を再評価することが重要。マネージャー層や経営層は、経営書やビジネス雑誌から成功事例や失敗事例をケーススタディとして学ぶ習慣を持ち、社内でのディスカッションの機会を増やす。
11.グローバル対応
問題点
日本企業は国内市場に依存しがちで、グローバル市場への対応が遅れることがある。
改善提案
グローバル市場に対する意識を高めるため、国際的なビジネス経験を持つ人材の登用や育成を強化する。英語や他の外国語のスキル向上を図るための研修プログラムを導入し、異文化理解を深めるワークショップを実施する。国際的なパートナーシップやアライアンスを積極的に構築し、グローバル市場での競争力を高めるためパートナー企業と社員交換などを行い相互理解を深める。
まとめ
日本のビジネスルールには、歴史的背景や文化に根ざした多くの利点が存在しますが、時代の変化とともに柔軟に適応することが求められています。目的と手段の逆転や年功序列、終身雇用といった旧来の慣習は、企業の競争力低下や社員のモチベーション低下を招く要因となり得ます。
これらの課題に対する改善提案として、ルールの意図や目的を再評価し、成果に基づく評価制度の導入、効率的な業務遂行を推奨する文化の育成などが挙げられます。また、グローバル市場への対応を強化するため、国際的なビジネス経験を持つ人材の育成や異文化理解を深める取り組みが重要です。
企業は過去の成功体験に固執せず、現代の市場環境やトレンドに柔軟に対応することが求められます。外部の専門家やコンサルタントを活用し、新しい視点やアイデアを取り入れることで、常に進化し続ける企業文化を築いていただきたいと思います。定期的な戦略レビューとマネージャー層・経営層によるケーススタディの学習とディスカッションを通じて、企業の方向性を再評価することにより、さらなる成長を目指すことが可能になると思います。
これらの改善提案を実践することで、日本企業はより競争力を持ち、社員が活躍できる環境を整え、グローバルに通用する強い組織を築くことができるようになって欲しいと思います。
今このノートを読んでいるあなたが一般社員であれば、この内容を心に留め、将来管理職や経営層になったときに役立ててください。管理職の方であれば、自分の権限範囲内でここに書かれた改善提案を実現していただきたいと思います。あなたの改善活動が全社活動につながるかもしれません。経営層の方であれば、今すぐ全社レベルの改善策定作業に取り組んでください。
私の提案は、日本企業が私が長年在籍した外資企業のようになることを目指すものではありません。日本らしさを保ちながら外資企業の優れたやり方を取り入れ、日本人にとって心地よく、かつダイナミックで国際競争力のある企業に生まれ変わることを願っています。
P.S. スポーツ界では欧米で日本人が活躍できているのは何故?
スポーツ界では日本人が欧米で多く活躍しています。その一因として、欧米では年齢を単なる数字と捉え、若くても年配でも、その人のスキルを中心に評価する文化があります。実力主義の環境では、才能と成果が尊重されるため、選手たちは自分の能力を最大限に発揮しやすいのです。
一方で、日本企業が国際的に活躍できず、競争力が低下している理由の一つは、年齢や勤続年数に基づく評価制度や終身雇用といった旧来の慣習にあると考えられます。これらの制度は、能力や成果よりも年功序列を重視し、若手の才能や意欲を阻害することがあります。その結果、社員のモチベーションが低下し、企業全体の活力が失われることになります。
また、スポーツ界では、個々の選手が国際舞台で活躍するために、常に新しいトレーニング方法や戦術を取り入れ、柔軟に適応することが求められます。一方、日本企業では、過去の成功体験に固執し、新しい戦略やアイデアを取り入れることが難しい場合があります。これにより、変化する市場環境に対応できず、競争力が低下してしまうと考えています。
さらに、スポーツ界では個々の選手の自主性や創造性が尊重される一方で、日本企業では集団主義が強調されるため、個々の意見やアイデアが埋もれてしまうことが多いです。これにより、イノベーションが起こりにくくなり、企業の成長が停滞する原因となります。
日本企業がスポーツ界のように国際的に活躍するためには、実力主義の評価制度を導入し、年齢や勤続年数にとらわれない柔軟な組織文化を築くことが必要です。個々の才能を最大限に活かし、変化に対応する力を養うことで、国際競争力を高めることができるでしょう。スポーツ界の成功事例を参考にしながら、企業の改革を進めていくことが、未来の成長につながると確信しています。
頑張れニッポン!!
今日も最後までお読みいただき、ありがとうございました。
すこしでも、あなたの参考になれば幸いです。