公園のカラス
小花柄が似合いたいという少女の夢はいつしか壊れた。ほら、既にラップを頭に巻き付けている。金色に脱色した髪に、今日はどんな色を載せるだろう。
いつかの砂場。プールを作りたいと少女は水をかけるも、全て染み込み、とうとう吸い込まれてしまった。太陽がお水を飲んでいるんだね、と澄んだ目で笑う少女に女は困惑する。自然にも、口を引き裂きたいと考えてしまう。気温は23℃もあるのに指先が悴む。上空を飛ぶ飛行機の騒音で頭痛がする。
砂場横のシーソー。小走りで少女は駆け寄り跨る。ぎぃーっと音を立てて少女が沈んだ。
沈まなければ。高いところで止まってくれれば、憎く思わないのだ。沈むから、比例して沸々と泥状の赤い液体が湧き上がる。女は湧き上がる液体が溢れ出ないように気を張る事で精一杯であった。
複数の依存先を持たない女は、優生思想に偏りつつある。対象者は女自身のみであることが、唯一の救いである。
僅かに少女の黒目が濁ったのを女は見逃さなかった。最も見過ごしたかったが。女は鞄の持ち手に巻いたスカーフを少女に渡した。
いつでも目隠しできるよう、涙を拭けるよう。
そして、割れたガラスを持ち歩けるよう。
遠くから18時のサイレンが聞こえる。そろそろ帰る時間だね。女はもう一度ここへ来ることを決めた。30歳の誕生日に来ようと。
また、少女に出会えるだろうか。
ステンドグラスでできた少女とすりガラスで作られた女。どちらも美しく見えるのは私が鴉だからだろか。
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