“採用されない出版企画書”の特徴 5選
今日は、日本で唯一のNPOとして商業出版を支援をする〈ほんたま〉※にて、年間300本を超える書籍企画書をチェックし、アドバイスをする経験から、採用されない出版企画書でよく見かける「NG事例」を5つ紹介します。
1.タイトルを読んでも内容が見えてこない
編集者が企画を確認するとき、確認する箇所は「タイトルとサブタイトル、キャッチコピー」までが9割と思ってください。編集者は本当にホントに、ほんっっとうに、多忙です。
参考までに…。私が編集者として出版社にいたころには、年間10冊の新規企画を準備する必要があり、平行して随時、2〜3冊の書籍を制作をしていました。 企画の準備と書籍制作はまったく別物。時間をやりくりするのが大変でした。しかも、企画書はボツになることもありますし、ボツにならなくても1回で通ることはまずありません。
ボツになったら、著者さんに謝罪です。今まで費やした時間はすべて白紙となり、新しい企画を準備する為にリサーチの時間を作ります。ボツにならなくても、会議で受けたダメ出しを改善するリサーチや打合せで時間が取られます。
こんな日常の中、たくさんの企画が編集部に届きます。物理的にじっくり確認する時間が取れないのです…。そこで、見るのはタイトルとサブタイトル、キャッチコピーの3箇所。そこで興味を持てば、著者プロフィール、目次と確認していきます。
ですので、この3つでうまく自分の本の特徴を伝えるように工夫してください。ここで具体的な内容が伝わらなければ、企画全体をみてもらえません!
2.プロフィールと企画書のテーマがずれている
わかりやすくするために極端な例を出します(それでも、脚色しているだけで、これに近いものは実際によくあります)。
例えば、「高校の美術教師として20年の実績を持つ」とプロフィールに書かれているのですが、書籍のタイトルは「あなたにもできる株式投資」。こういった、テーマとプロフィールの内容がずれている企画が、ときおり<ほんたま>に応募されます。どんなに株式投資の経験が豊富だったとしても、残念ですが、その企画は採用されません。
あなたが本を買う際、何を確認してから買いますか? ほとんどの方が、著者プロフィールを確認するのではないでしょうか。その本を買うかどうかの判断材料にしているはずです。プロフィールは読者にとっての判断材料だけではありません。編集者にとってはさらに重要な判断材料です。
3.類書や競合書が「ない」と記載されている
「類書・競合書がないからこそ、独自性が高い」と訴求する企画書を見ることがありますが、類書や競合書がないことは、その書籍の市場がないことも意味しています。
書店に行けば、たくさんの書籍が陳列されています。本当にご自身の企画している内容には類書がないのでしょうか?
仮に、本当にブルーオーシャンを開拓できる「革命的な内容」であっても、出版社は市場がすでにあることを好む傾向があるため、競合書はなくても類書は示すべきです。
あと、これは編集者目線での話ですが、先に挙げたとおり、編集者は忙しいため「手離れのいい企画」を好む傾向が強い背景もあります。競合書探しなどのリサーチを省けるような完成度の高い企画書は好まれます(少なくとも、私はそうでした)。
4.差別化のポイントが明示されていない
せっかく競合書を挙げていても、どのように競合書とは異なるのか明示されていない企画書も多く見かけます。「分かりやすく解説した本です」「初心者向けの入門書です」では差別化にならないので注意してください。
❌ 避けるべき表現
「分かりやすく解説した本です」
「初心者向けの入門書です」
「実践的な内容です」
⭕ 望ましい表現
「10日でブログ読者1000人を実現したノウハウ」
「残業ゼロで売上130%達成した働き方改革の実例集」
「40代未経験から年収800万円のエンジニアに転職した学習法」
具体的な成果や方法を示すことで、類書との違いが明確になります。ご自身の「オリジナリティ」を具体的な表現で企画書に盛り込んでください。ただし、オリジナル度合いが強すぎて「これは実践できない!」と思われると、敬遠されることもあるので、注意ください。
5.生成AIによる目次作成
最近増えているのが、ChatGPTなどの生成AIで作成したと思われる目次です。以下のような特徴があるので、すぐにAIに考えてもらった目次だと判別がつきます。
抽象的な章立て
具体例や事例が含まれていない
プロンプトを単純な指示内容で実行した場合、抽象度の高い目次が提示されます。AIからの提案はあくまで草稿として捉えて、書籍の内容が伝わるような目次の表現にしましょう。
目次の見本は、書籍の数だけあります! 類書や競合書の目次を確認することも参考になりますよ。
おわりに
出版企画書は、あなたの本の価値を伝えるための大切なツールです。商業出版では「なぜあなたの本が必要とされているのか」をより明確に示す必要があります。この記事で紹介したNG例を避けることで、企画書の採用確率は確実に上がるはずです。参考になれば幸いです。
Postscript
1年・12ヶ月で10冊の企画を準備するのが、ホント大変でした…。私は雑誌編集者からキャリアをスタートして、書籍編集部に異動しました。書籍編集者1年目は7〜8冊/年の担当でしたが、最初はまったく企画が通らず、徹夜に近い日々を過ごした記憶があります。雑誌向けの企画書と書籍の企画書って、流儀が異なるんですよ。20年ほど前の甘酸っぱくない思い出です…。