チャットGPTを活用した「伝わる」記事づくり[前編] ライティングで使えるかを検証
こんにちは。エディマート代表の鬼頭です。
エディマートは2003年に創業して、20年が経ちました。
「編集」を切り口に、時代の流れに順応しながらさまざまな「伝わる」コンテンツをお届けしてきた当社ですが、ここ数年の社会の変化は本当に急激で、知識のアップデートが欠かせません。
前編・後編に分けてお届けするのは、AI(人工知能)を使ったチャットサービス「チャットGPT」について。
私自身、チャットGPTを使ってみて「毒にも薬にもなる」と感じています。前編では編集業務の中でひと通り使ってみて感じたことをまとめてみます。
1.編集プロダクションがチャットGPTを使ってみた
もはやおなじみのチャットGPT。どんな感想を持たれましたか?
「活用すれば効率化やコストダウンが図れる」と感じた企業の広報の方、「仕事を奪われるのではないか」と脅威に感じたライターもいるかもしれませんね。
産経新聞が主要118社を対象に実施したアンケートでは、5割超がチャットGPTの業務での活用を検討していると回答。もちろん、取って代わられる業務すべてが文章作成ではないとはいえ、ライティング業務のいくらかをAIに奪われるのは確実なようです。
エディター&ライターの私も、チャットGPTをさまざまなシーンでテスト的に使ってきました。
◯調べもの
最初に試したのが、調べ書きの際に「意味」を調べること。自分の理解が浅いワードが出てきたときに「◯◯とは?」と放り込むと、あっという間にその意味を教えてくれます。AIは断言をしていますが、元となるソースが不明であるため内容の真偽は不明。鵜呑みにすることはできないので、アウトラインの理解ぐらいにとどめておきました。
◯単語の言い換え
次に試したのが、「類語」の洗い出し。ライティングにあたっては、なるべく表現の幅を広げたいので、これまでもWEB上で「◯◯ 類語」や「◯◯ 言い換え」という検索をよくやっていました。
たとえばチャットGPTに「『驚く』の言い換え」と入れると、20個の代案が挙がります。その中には「驚くほど上手にできる」など、言い換えではない誤った候補も含まれますが、「意表を突かれる」などは自分の引き出しの奥の方を開けてくれた言葉です。
このように、自分の中にある程度の言葉のストックがあれば、AIがそれを素早く引き出してくれますが、もともとストックがなければ、提示された言葉が正しいかはわかりません。
◯企画書のイントロ文
インナー向け企画書のイントロ文作成でもチャットGPTを使ってみました。みなさんもありませんか?「それっぽい出だし」を入れたいとき。
こちらの文章は、チャットGPTに「現代社会の特徴」を聞いた結果の一部ですが、企画書の冒頭にありそうですよね。
もっとも、「調べもの」と同じくソースが不明ですので、使えるとしても社内資料ぐらいでしょう。
◯名言っぽい言葉
当社では毎月メールマガジンを発行しています。
マガジンの最初には「e言葉」という連載を設置し、仕事で出会った素敵な言葉などを紹介しているのですが、試しに4月の「e言葉」をチャットGPTに作らせてみました。
こんな言葉を返してきました。「まあそうだけど、それで?」というのが正直な感想でしたが、話題性もあるため「AIが作った」という種明かしとともに配信しました。
2.チャットGPTの原稿はどこか不気味
ここまで、編集プロダクションである当社のチャットGPT活用事例を紹介しました。
新聞や情報誌、企業のオフィシャルHPなどのコンテンツを手掛ける立場として、使ってみた感想は大きく2つにまとめられます。
◯真偽不明でそのまま世に出せない
チャットGPTのAIはこちら側のインプットからも学習するそうなので、必ずしも出てくる情報が正しいは限りません。また、上にも何度か書きましたが、チャットGPTが生成する文章には、元となるソースが添えられていません。
インターネット上の膨大なデータを学習する以上、チャットGPTのアウトプットに著作権のある文章が含まれる可能性があります。
共同通信によると、科学雑誌サイエンスはチャットGPT作成の論文は「盗作」だとして認めない考えを示したそうです。
もちろん、正確性を大切にしている当社も、チャットGPT作成の文章をそのまま世に出すことは絶対にしません。
◯心に響かない
チャットGPTのアウトプットは、真偽は定かであれ文章としては完成しています。同じ語尾が連続するなど、リズム感には欠けていますが、駆け出しのライターよりもよっぽどきちんと書けています。
日本語として問題はないのですが……なぜか心に響きません。
メルマガの名言では、手垢がついた言葉が提案され、その解説も教科書のようでした。
私はここで一つの真実を知ります。
ヒト(受け手)は無意識に、
創作物の向こうにいるヒト(作り手)を感じ取っている。
ということに!
「不気味の谷」という現象を聞いたことはありますか?
ロボットなどの人工的な物を少しずつ人間に近づけていくと、ある一定を超えて人間に似た途端、急激に嫌悪感を生じる心理現象。さらに人間に近づけると、以前にも増して親しみに変わることから、「谷」と表現されているようです。
主に人工物の「見た目」で使われる現象ですが、私はチャットGPTの生成する文章でも同じものを感じてしまうのです。
それっぽいことを美しくまとめるものの、真実は不明。ヒトが書いたようでどこか違う不気味さ。これが心に響かない原因ではないかと。
3.前編のまとめ
このように、編集プロダクションである当社が、チャットGPTを利用してわかったのが、正確性とリーチ力に問題があるため、「世の中に出す文章としては」使えないということ。
裏を返せば、「世に出す前の素材として」は使えそうです。
また、AIの弱い部分をヒトの力で補えば、効率的に「伝わる」コンテンツが作れることでしょう。
前編がチャットGPTの「毒」の部分なら、後編は「薬」の部分について。
ヒトである私たちのライティングの力の入れどころと、AIの特性をふまえた活用法についてまとめてみたいと思います。