世界を作り上げているのは
1000円の書籍を100冊売ったとしても、いろんなものを差し引くと利益は30000円未満だったりする。本屋だけでなく、菓子店でも、雑貨店でも、いかに戦略を立てて売っていくかが鍵。そしてレジ業務などに従事する人たちの給料は大体において安い。時給800円で書店勤めもしているわたしは小売業の現場にいながら、「中の人」たちが、それぞれの楽しみを見つけて生活しているのを見ると、ぐっと来る。みんな「自分にできること」を一生懸命考えて生きている。
この数年、独立系書店をはじめ、本屋の動きが活発で、一部この業界は盛り上がりを見せている。利益率で比較すると、グロスで仕事をする版元・広告社・メディア>小売店という構図が否めない。商品を並べ、消費者へと届けているのは、まさに売る人たちなのに。それでも毎日コツコツとやりくりしながら、腐らず、地に足をつけて、商品を売るだけでなく自らも日々消費者となり楽しみつつ、世に広める。そんな人たちが増えているように思う。
そして、そうなると小売業はもう売るだけではない。創意工夫をもって自ら生み出す人なのだ。この盛り返しは格差への「逆襲」にも思えるし、この小売自体のシステムを見直したり、従事する人たちの環境や待遇を改善したりすることが必要なのではないか。例えば、ネットが普及してもあえてリアル店舗で対面販売を続ける小売業者に何らかの支援をするとか。
改めて、生活に欠かせない物資や食べ物などを提供する商店、飲食店の方々に、尊敬の念をおぼえる。わたしがもっと深堀りしたい対象として興味があるのは、やっぱり民間の人々。それも、世界を作り上げているにもかかわらず、表向きには「生み出す人」として取り上げられない一人ひとりの個人なのだ。