永守重信『成しとげる力』を読んで:バリバリ働く管理職おじさんの価値観を理解するためにぜひ。
日本電産創業者の自伝。
総じて、大味で骨太な自身のこれまでの苦労話や、成功談、生い立ち、母からの教え、自らの考える育成論、人間論みたいなものをざっくばらんにまとめた本。
本書が、世にこれまで出回ってきた「創業者の自伝」の類いと一線を画す要素はほとんどないと思われる。この評価については、私自身、あまりこのような自伝の類いを読まないたちなので、よくこういう成功者本を読む皆さんには、改めてご判断頂ければと思う。
とはいえ、28歳で4人で小さな六畳間から会社をスタートして、世界的モーターメーカーへと発展させた男の、これまでのストーリーは中々具体的に綴られていて、面白い。ここまでしなければ成功できないのかと迫るものがある。
大学改革についても、歯に衣着せぬ持論を展開しており、賛同しかねる部分もあるが、「こういう人もいて、世界で闘っているよね。信念があるのは美しいことだな。」という意味では悪くないのかもしれない。
この有言実行の男は、たしかにこれまで数えきれぬ人々の心を動かしてきたのである。
なにより、本書は「今時の役員のおじさんが好きそうな男らしさや、歯を食いしばれ!、人の倍働け!できる人はこうあるべきだ!というような価値観がウルトラスーパーな形で書きなぐられている(現代的にはブラック企業人といわれるようなマインドに当たると思う)」本なので、そういう「ジェネレーションギャップ」的なものを埋める、ある種の「教養」になると読んでいて思ったものである。
主にそういう意味で、一読の価値はある。