定期保険を掘り下げる
「白って200種類あんねん」のセリフが印象的なアンミカさん。似たような発想で、保険の持つさまざまな顔をもっと掘り下げられないだろうか。
そんな想いから本日は保険の最も基礎的な形である定期保険について語ってみよう。
個人保険で加入する定期保険
定期保険は期間限定で購入する死亡保障である。個人で加入する場合、子供の教育費に備えるために20〜40代の親がお世話になることが多いのではないだろうか。
ガッツリ終身保険で備えようとすると高くつくが、定期保険のように期間限定で保障を手厚くするならば保険料を安く抑えられる。"保障額の調整弁的な役割"で用いることが多い。
おそらくネット生保の影響だが、「保障こそが保険の本分であって、必要な時期だけに絞って定期保険に加入しよう」という思想が時代と共にどんどん進んできている。
そういう意味では、死亡保障に関しては終身保険や養老保険よりも定期保険のほうが優勢なのが最近の風潮だ。
さらにいうと、定期保険よりもさらに合理性を追求した逓減定期なるものもある。これは時間の経過とともに死亡保障額がどんどん減ってゆく。
子供が大きくなって残りの必要な学費が減ってゆくにつれて、勝手に保障額が減ってゆくので、常に一定額の定期保険よりもさらに保険料を減らすことができる。
ただし、子供が大学で留年したり留学したいと言って卒業が遅れると計算が狂ったりするので、切り詰めるのも良し悪しである。
ただし、あくまで期間限定の保障なので、「相続税の非課税枠を活用したい」といったニーズだとやはり終身保険に軍配が上がる。
定期保険を長く継続すると更新のたびに保険料が大幅に増えるので、得策ではないのだ。
法人で加入する定期保険
さて、法人で加入するとこの保険は様相が一変する。損金算入、要するに保険料が経費で落とせる部分があるのだ。
標準的な定期保険だと保険料は丸ごと損金になる。(詳しくは各保険会社に問い合わせください)
結局保険金が払われた時に丸ごと益金になって法人税が取られるので、課税の繰延でしかないのだが、銀行への借入金を返済したり、取引先の連鎖倒産を防いだりするのには大きな威力を発揮してくれる。
社長に万が一のことがあった時に突然起き上がって何億円も持ってくるなんて、人間にはできない芸当だ。
普通の会社は換金できない資産を色々持った上で事業を行なっているので、会社を畳むにしてもまとまった現金が即座に用意できるのは大きな話だ。遺族の負担も全然違ってくる。
ちなみに、医療機関だと周辺に薬局が隣接していることも多く、倒産した場合には広く影響が及ぶ。最新設備を備えている大病院ならば、初期投資の額が大きくて借入に頼っているところもあるだろう。
そのため、医療機関の経営者は保障額が大きくなる傾向にある。
なお、生命保険はキャッシュをいただく商品なので、最優先である日々の借入金返済をまず考えた上で、残された余裕資金で保険を持つことになる。
法人に保険提案をすると必ずといっていいほど「税理士に相談する」と返されるのだが、これは資金繰りの観点から問題ないかを確認しているのだろう。
銀行と違って、法人は生命保険会社に財務の細かな内容を伝える習慣はない。資金繰りの状況が手探りの中で提案をしてゆかなくてはいけないのは保険会社の泣き所である。
流動性に余裕を持たせておくと、銀行からの借入条件も良くなる。そういう意味でも、定期保険を織り交ぜて保険料の出費をおさえつつ保障額を確保するのは有力な選択である。
私は営業時代に独自で教材を購入しながら、「会社の資金繰りという大きな枠組みの中で生命保険を捉える」ことの大切さを学んだ。
法人保険の世界を知ることで、保険は実に豊かで多様な顔を見せてくれるのだ。