読書感想:飛び降りる直前の同級生に『×××しよう!』と提案してみた。 2 (電撃文庫) 著赤月ヤモリ
【死にたいなんて思わないくらい、素敵な未来をあげるから】
修学旅行を経て絆を深める物語。
人生に絶望する人の心境は、大抵が孤独である。
その孤独を分かち合える人が居るだけで、どれだけ救われるか。
その点でいえば、ずっといじめ問題に悩んだ胡桃に寄り添って解決の糸口を模索してくれた貴一にって、恋人関係になれた胡桃は幸運だったのだろう。二人の絆をより深めるべく、京都の修学旅行で繰り広げられる糖度の高いイベントを楽しむ中で、浮上する胡桃の父親の存在。衝突する中でも貴一が橋渡しになる事で。
貴一がひたすら胡桃を直球の愛で押しまくり。あまりの真っ直ぐさに照れて否定しながらも時折デレを見せてくれる胡桃。
いじめ問題を解決し、正式に恋人同士となり。もはや止めるものが無くなったことで更に貴一の愛は高まり、ぐいぐいいくようになって。
そんな彼に胡桃もまんざらではない様子を見せ、それが当たり前の光景として受け入れられるようになっていって。
そんな彼等の元へ舞い込んでくるのは、京都への修学旅行のお知らせ。
学生にとっては青春の一幕。
当然、付き合いたての恋人同士である二人にとっては盛り上がらない訳もなく。
清水の舞台を始めとした神社仏閣を巡ったり、久しぶりの遊園地に子供らしくはしゃいでみたりして。
そんな安楽も束の間、幸せな日々の中で、胡桃の表情には一筋の陰りが見える。
その理由は修学旅行の前、父親からの一年振りの連絡があったから。
会いたいと言う願いに応じ、久しぶりに二人で向き合って。
告げられたのは、京都でまた家族で暮らさないかという提案。
今更何だと激情のままに叫びそうになり。
それを押しとどめるのはその場に駆け付けた貴一の真剣な眼。
そして彼は胡桃の父親に対しても物怖じする事もなく、真っ直ぐにずけずけと切り込んでいく。
どんな相手でもいつも通り、一見すると愚直だが、それこそが彼の良さ。
その良さに再び救われ、胡桃は自分は大丈夫だからと断りを入れる。
さらに盛り上がり、もっともっと求め続けて。
その果てに一線へと踏み込んでいく。
だがそれは至極当たり前であり、二人が共に希った結果である。
ならば憂いなく祝福すれば良い筈だ。
このお馬鹿なバカップルは心配なんて言葉は似合わないから。
いじめ問題に関する人間関係のもつれにも、胡桃が抱える親子関係のもつれにも一肌脱いで力になった貴一の頑張りが手繰り寄せた結末。
世界に悲観して人生を終わらす事よりも素敵な事がこの世にあるのだと胡桃に教えてあげた。