読書感想:恋は夜空をわたって2 (電撃文庫) 著 岬鷺宮
【想いは、夜空のように複雑で結ばれる為に超えるべき壁】
玉砕した壮一は咲の恋心を探り行く物語。
互いの想いが同じなら結ばれるべき筈の恋なのに。咲の告白に応えた壮一を待っていたのは、敢え無き玉砕。
その咲の複雑怪奇な心模様を探っていく内に明かされる、異性と恋愛をする勇気が足りていなかった事実。
壮一の妹の協力もあり、互いの足りない部分を補う事で。
乗り越えるべき障壁を超えた時、二人の絆は簡単には解けない強固な結び目となる。
最初から強くなくていい。
互いの存在が踏み出す為の勇気となるなら。
お互いがお互いを必要とする事の意味。
あまりに甘酸っぱい青春だと周囲は思うが、当人はその一つの等身大な想いの折り合いのつけ方に散々と苦悩を余儀なくされる。
恋愛は美しい物ではない、人間として当然産まれる様々な感情を受け止める必要がある。
しかし、この面倒臭さも青春を謳歌する彼らには大切なイニシエーションなのだろう。
付き合って欲しいという壮一の告白は咲に断られる。
なぜ断られたのか、なぜ断ってしまったのか?
両思いにある筈なのに、想いがすれ違った切なさを胸にしまい込みながら。互いに混乱しつつ深夜ラジオを通して原因を探っていく。
そこにある理由が配信内の質問と合わさる形で紐解かれていく。
心をひっくり返して、そこに溜まっていた複雑な感情を一つ一つを吟味しながら答えを探していく。
すぐに答えを出さなくてもいい。
人生、時には立ち止まったり寄り道する事も必要だから。
前に進むだけが全てではないからこそ、今まで歩いてきた人生の足跡を振り返ってみてもいい。
好きなのに嫌いと言ってみたい、嫌いなのに好きだと言ってみたり。
恋とは一朝一夕で行かぬ本当に分からないものだ。
それでも、当の咲さえその理由を当初はあやふやだとしても、配信者としてリスナーの恋路の相談に乗っていくうちに次第にその原因が明確になっていく。
一筋縄でいかず、拗れに拗れて紆余曲折しながらも、遠回りしてしまうのも青春の醍醐味で。
その答えを胸に配信に向かい合い、咲は優しく、延命を打ち切るその答えを届ける。
リスナーと共に自分も進む為に。
前へと歩いていく為に。
その願いを込めて、電波に乗せてその思いを届けていく。
ようやく告白の決着が終止符を打ち。
二人は追いついただけではなく、更に高め合う素敵なパートナーとなった。
お互いに駄目な時はその手を引っ張り合っていく。二人の世界を包むのは新たな環境。
自分に自信がなかったとしても、二人で共に生きる事が、答えがあやふやな世界だとしても、唯一の正解だと心から信じ抜いて。
互いの存在が踏み出す為の勇気となるなら、充分に恋をした意味があるだろう。
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