読書感想:アンデッドガール・マーダーファルス 2 (講談社タイガ) 著 青崎有吾
【今宵、怪物達が魔都にて最高の祝宴を繰り広げる】
魔都にて偉人達が錯綜する物語。
オペラ座の怪人として恐れられるルパンは、誰もが尻込みする大邸宅の警備を破り、世界最高の探偵と称されるホームズに勝利し。
緻密な計画の元で秘宝を奪う事を大々的に宣言する。
その大胆不敵な宣告を許す筈も無く、フォッグ邸は鳥籠使い一行と探偵ホームズに警備を依頼する。
それに便乗する様に、ロイズ保険機構や教授一派も動き出す。
三者鼎立どころか四つ巴となった宝石争奪戦にて、卓越した頭脳と圧倒的異能がぶつかり合い。
80日間世界一周を成し遂げたフォッグ氏が所有するダイヤを狙うとの予告状がルパンから届けられた事に端を発する、相手の手中の裏をかく騙し合い。
秘宝を巡ったミステリアスでスリリングな腹の探りあい。
それぞれの駆け引きにも独自の論理と見解があって。
己が矜持と都合が良いように誘導したい思惑は、めまぐるしく錯綜して、如何に相手に不利益になるように足を引っ張るかに終始する。
卓越した思考回路と戦闘技術を以てして、誰が勝ってもおかしくない混戦模様を繰り広げる。
まさに食べてみるまで味が分からない闇鍋状態。
それぞれが常人離れした力の持ち主達が知恵と体力の限りを尽くしてお宝争奪戦に挑む、熱く胸を揺さぶりかけるワクワク感が躍動した。
相手の作戦を斜め上を上回る奇策が、実に意表を突かれる。
例えば、ホームズに密室を作らせたり、変装について隙を与えたりと事前準備もさることながら、大量の水によって敵を金庫から遠ざけ、地下室の明かりを消し、水圧で鉄格子を壊して、水流でロープを地下へ渡し、ダイヤの本当の隠し場所を確認し、安全な逃げ道を確保するなど、常人の思考を超越した珠玉のトリックが実に軽妙で面白い。
一芸と呼ぶべき洗練された技術はまさに、常軌を逸した変態的さ。
そんな混沌の中で、じわりと浮かぶように語られる、津軽と鴉夜の過去が紐解かれる。
宿敵の組織、教授一派、夜宴の真の目的。
彼らがなぜ鴉夜の体を奪って、津軽に鬼の細胞を移植したのか?
魔都・ロンドンを舞台に、奇妙な人々が人狼を呼び出す一つのダイヤを巡って、滑稽ながらも熾烈極まる戦いを始める。
過去の因縁は、新たな因縁の火種へと移り変わって繋がり、やられっぱなしでは終われない、意地の張り合いとプライドのぶつかり合い。