読書感想:サマータイム・アイスバーグ (ガガガ文庫) 著 新馬場新
【あの夏を凍らせて、青春をもう一度始めよう】
真夏と氷山が内在する三浦半島にて、少年達は苦悩をバネに謎を解き明かす物語。
せっかくの夏休みを鬱屈と過ごす進と羽と一輝。
一年前にとある事故がきっかけで、幼馴染の意識を失ってから、彼らの時間は停まったまま。
そんなある日、氷山の現れた海岸で進が出逢った謎の少女·日暈。
天音と瓜二つの外見をする彼女に運命を感じて、彼女の望みを叶えていく。
それと共に世界を巻き込んだ氷山の一角が現出し、謎と秘密が溶けて明らかになる。
不意に現れた氷山。
波打ち際で倒れる幼馴染によく似た少女。
高校二年生の進に訪れる人生を左右する夏。
二度と戻ってこない夏。
この夏が彼らのターニングポイントとなる。
一年前の事故以来、昏睡から醒めない進の幼馴染の幼い頃とそっくりな謎の少女。
幼馴染のことで無力感に苛まれる進。
進に複雑な想いを抱く羽。
優等生で密かに悩みを抱える一輝が、少女と楽しい夏を過ごすために協力する展開で、複雑な想いからたびたびぶつかり合い、秘密が明らかになる中で大人の事情に振り回されながらも、少女を元いたところに帰すために力を合わせて夏の空の元、全力で奔走する。
同じ夏は二度とこない、正解も答えも難しい。
けれど駆け出したのなら何かが変わる。
いつかの出会いに向けて、未来を駆け出していく。
一度きりの青春、一度きりの夏。
青臭い感情のままに時にぶつかり、それでも駆け出す。
それはまさに青春の情動、青くて瑞々しい躍動。それがこれでもかと溢れているこの作品は、正に青春そのもの。
それぞれの淡い恋心や悩みを抱えたまま、進たちは氷山を目指す。
煌めく夏の青春の輝きを閉じこめた、宝石のような青春の一瞬。
完璧な正解なんてない。
正解を決めるのはいつだって今の自分と未来の行動。