読書感想:問題児の私たちを変えたのは、同じクラスの茂中先輩 (角川スニーカー文庫) 著 桜目禅斗
【一つひとつが異質でも交じり合えば、青春は煌めきを放つ】
居場所がない者同士による青春の狼煙が上がる物語。
問題を抱えるからこそ、普通という枠組みに収まり切らず、はみ出して孤高を貫いていた同級生達。
リア充の素質を持つが、とある事情で留年した碧は、彼女達に声をかける。
修学旅行で余り者になった彼女達と。
孤独を抱えるからこそ、出来る青春もある筈だと信じて。
一人ひとりが抱える問題に誠実に向き合う事で、塞ぎ込んだ心の殻が破れて行く。
変わりたいと思えたら、もう失う物は何も無い。
世界から除け者にされようとも、共に孤独の痛みを知る仲間達が居るのなら、もう恐れる物も何も無い。
個性がバラバラな色だった彼女達の闇に向き合い、その果てに混じり合ったキャンパスがカラフルで素敵な色を生み出すように、碧を中心に絆が結束して、自分達だからこそ出来る青春を謳歌していく。
問題児と周りから揶揄されようても、自分の気持ちを上手く表現する事が不器用なだけで、彼らの心根は純朴な優しさで満ち溢れている。
特異な個性から周囲との軋轢を招き、孤立していた者達。
耐え難い孤独の中で、その痛みを埋めるには、心を曝け出した真の友情しかない。
世間は、「問題児」を嫌って排斥しようとするが、彼らには悪意は無く、己の信念を貫いた結果として、不名誉な評価を甘んじる事になった。
そんな彼らにも叶えたい夢と願いがあった。
綺麗な砂浜に行きたい。
星空を見たい。
ナンパがしたい。
修学旅行の目的として聞くとあまりにも似つかわしい、彼らだけの願い、心の発露。
それでも、彼らにとっては切実な願望。
それらを、全て叶えるにはどうすれば良いか?
単純明快な話だ。
枠からはみ出すなら、枠に収まらなければいい。
どうせ何も失う物など問題児同士。
他人にどう思われようが、好き勝手にやってやれば良い。
そうやって開き直る事で、彼らにしか出来ない一度きりの修学旅行が始まる。
ここにしか無い青春を、互いの闇を照らしながら。
自分達の欲求とやりたい色を見出していくのだ。
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