君たちは古事記を読んだか
どこかの映画タイトルのようになってしまった。
古事記とは、ご存知日本最古の歴史書である。
天地創造から始まり、日本の最初の女帝とされる推古天皇の時代の事柄までが記されている。
歴史の勉強の中では誰もが一度は聞いたことがあるだろう。
すべてを読んだわけではないが、イザナギ・イザナミによる創造の話や、スサノオノミコトのヤマタノオロチ退治、海幸彦と山幸彦、因幡の白兎あたりなどは子供向けの絵本やアニメになっていたりしているから、その出典を知らずとも馴染がある。
今回読んだのは、『この世界の片隅に』のこうの史代氏による『ぼおるぺん古事記』
表紙の丸っとふくよかなのは、有名な天照大神。
世界を照らす太陽神のとするならピッタリのイメージ。
天地創造からすべてをボールペン1本で書き起こした面白い本。書き込みが凄い。
漫画なので読みやすく、しかし原文をまま載せてあるので真剣味が伝わる。注釈には個人的な解釈もあったりで、人によっては余計なお世話と思うかもしれないけれど、概ね噛み砕きやすい。
全3巻のうちまだ1巻しか読んでいないが、今更お浚いするならこれくらいが取っ掛かりとしては最適だろう。
ここで満足しても良し、更に他の文献で深く追求しても良し、だ。ひとまずは全巻揃えて読みたい。
古事記は、それまで口伝でのみ伝わっていた歴史を8世紀ごろ天武天皇の勅命により編纂したものとされている。稗田阿礼とか太安万侶とか、その辺も歴史の授業で習った。
口頭の伝聞というものは誤り、とまでいかずとも正確性には欠ける。伝言ゲームという遊びが成立することを考えれば、その点に疑問はない。
そして古事記というものは、自分たちの祖先の話である。
自分たち、仕える主人の来歴がどれほど壮大で機知に富んで正当性があるのか、「こうだったらいいな」なんて思いで多少なりとも盛ってしまうのは人間の性ではなかろうか。
しかし自ら歴史を語ったにしては、偉大なる神々の姿が結構素朴。
特にスサノオノミコトなんて、母親恋しさに泣きわめいて家を追い出され、転がり込んだ先で姉神(天照大神)に迷惑をかけて高天原を追い出される、などと盛大なやらかしもあってなんとも愛嬌がある。それもこうの史代氏の絵柄によるものかもしれないが。
第1巻で登場するのは神々であり、現実味のあるものではない。自分たちの祖先ともとても思えない。これを誇りに思え、というのも変な話だ。
ただ日本の有史以来、己から辿れるだけ辿った祖先たちが、ずっと大事にしてきた物語なのである。
一度くらい真面目に取り組んで、じっくり噛み砕いてみるのも良いのではなかろうか。