映画感想文【憐れみの3章】
2024年 アメリカ・イギリス合作
監督:ヨルゴス・ランティモス
出演:エマ・ストーン、ジェシー・プレモンス、ウィリアム・デフォー
エマ・ストーンたち同一俳優がそれぞれ異なる役柄で三話、各章一時間弱の物語を綴る。
同じ俳優が出演しているということ以外、各章に繋がりはない。(R.M.Fは例外とする)
なまじなホラー映画よりもホラー、エロ・グロ備えたそれぞれの結末に観客は衝撃を受けているのに、余韻に浸るまもなく次章が始まってしまうので切り替えが難しい。撮影時間と上映時間に関係はないと重々承知ながら、演じ分ける俳優の技量に圧倒される。
通常料金でこれだけの物語が見られてお得!
という意見もあるだろう。
しかしながらすべてが珍妙オブ珍妙。特異すぎる物語は強烈で、内容を咀嚼し感情移入しかけたかな、というところで終わってしまうので若干勿体ない気もする。その後が気になる話ばかり。
ネタバレになるが各章の内容を簡単にまとめると、
第一章:富と引き換えに全てを管理された男が、自分の人生を取り戻そうと足掻く話
第二章:海難事故から九死に一生を得て生還するも別人の気配をまとわせる妻と、それに抗う警官の夫の話
第三章:カルト宗教を妄信する女が、教団の方針に従い奇跡の力を持つ人物を探し求める話
まとめるのが非常に難しい上、実際の映像の特異さはまったく伝えきれていない。
興味が湧いた人は上映を観れば良いとは思うものの、これらの一文はめちゃくちゃ濃度を薄めた上澄みに過ぎないので、事前に十分気合を入れられることを僭越ながらアドバイスさせていただきたい。
キモいしエログロだし話も訳わからん、と断じてしまっても良いと思う。
好き嫌いで分けるのは難しいが、観なきゃよかったとも言い切れない。
これをやり切るヨルゴス・ランティモス監督は、まぁ凄いと思うし、俳優陣の演技にはひたすら目を奪われる。
彼らの”凄み”を味わい人には良いだろう。よくもまぁこんなものを考えてやったもんだ、という衝撃には偽りなし。
だが『哀れなるものたち』と比較すると、友人にはオススメできない、かな……。何故なら自分がそのクチだから。