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お気に入り短編まとめ

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これ好き、好評だったな、な短編小説。更新120日目に突入した記念に。読んだりスキをいただいたり、ありがとうございます。
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記事一覧

プルトギニユンと怪物

海溝はふかく、複雑に入り組んでいた。一方では地底マグマのほうへと地下深く削りそびえ、一方…

海老かに
4年前
9

心臓と熱帯魚

翻訳機を通して、ガーガーと錆び付いた声が届いた。 「あな……たの……心臓……」 「おや? …

海老かに
4年前
10

僕のジュリエットの死

僕のジュリエットが死んだ。いや、ほんとうは、ジュリエットなんて彼女の名前ではなくて、『ロ…

海老かに
4年前
8

ヤンデレ処理ゴミ捨て場

みどうはるか。は、『あいうえお表』から、適当に拾われてきた名前だ。このキャラに名前は必要…

海老かに
4年前
7

三道の武家むすめ

三道遙佳は、三道に通じている。彼女の場合は兵法のことで、兵を用いるための三つの方法である…

海老かに
4年前
4

note

未瞳春花はクレープが食べたい。原宿、竹下通りにママと手を繋いでやってきて、春花はママに頭…

海老かに
4年前
6

私の夫と深夜3:33のパンケーキ

私の夫は『変』だ。 よい『変』なところは、なんだか暖かいところ。春ともなれば蝶々が寄ってきて、どうしてか全身から花の香りがする。リスなどと遭遇する。ベンチに座ろうとすると、だれの置き土産なのかどんぐりなどが置いてある。春だけでこれだから、夏、秋、冬もそれぞれの季節らしい、プレゼントらしき奇妙なことが連続する。 結婚する前から、私はそれは知っていた。旦那はひょろひょろして痩せていて食も細く、病気がちでよく風邪をひく。病弱だ。頬もこけている。 けれど、結婚してから、私は夫の

マーメイド・マンション

人類、ついに砂漠にまでマンションを建て始めている。そうかと思えば、また人類初なんてキャッ…

海老かに
4年前
6

教授の免許返上(たんぺん怪談)

蛙洞立芳教授は、今年六七にもなるが、海辺の自宅から数キロ先までの勤務地である私立大学まで…

海老かに
4年前
3

捨てた森の海の魚子

古来、忌むべき習慣として姥捨て山なるものがあった。この山もまた働けなくなった、動けなくな…

海老かに
4年前
4

一匙の夢を食べる

スプーンにひとさじ、夢をすくう。プリンに穴をあけるように。スプーンが侵入してスプーン以上…

海老かに
4年前
4

悪魔のジュース(コメディ)

「あのぉお……。ゆみ君のお母さんさん、ゆみ君の血まで、悪魔に染めないでください。勘弁して…

海老かに
4年前
3

好きの枯渇と干からびる僕

これ絶対泣けるから!! 意気揚々とカラオケにいれてアイドルの応援歌を歌いあげた僕を、彼女…

海老かに
4年前
7

海の家のマーメイドプリンセス

人魚姫が恋をする。なにも、嵐の日に難破船から救った王子に恋をして、とか、王子のためにすべてを失って泡になるとか、そんな命がけの恋愛だけとはかぎらない。 かのお姫さまの場合は、近所の浅瀬がいつのまにやら人間たちの大衆海水浴場となっていた。 上半身は人間とそっくりに創造されている人魚姫である。ときおり、人間たちにまじって、人間のふりをして上半身だけを海から出して遊びにまじることがあった。ただの気晴らし、たんなる気まぐれだ。人間たちは、楽しそうに声をあげて海やら波やらで遊んでいる