10月:木枯らしの風に備えて油分で温めるレシピの作り方〜暮らし編
木の葉が色づき、空の色が一層澄みわたる秋の終わり、大気中には木枯らしの風が吹きます。寒さに思わず身体が縮こまり、トレンチコートの襟をたてて腕をくみ、背中を丸めて歩く人が増えてきます。そのまま忙しい日々を送っていると、思いついてやろうとしたストレッチで「あれ、全然体がゆるまないぞ?」と固まりきった自分の身体に驚くのではないでしょうか。
この時期は1年のうちでももっとも風のエネルギー「vata(ヴァータ)」が大気中に上昇し、その影響で体は硬くなり、肌は乾燥し、末端が冷えるなどの変化が現れるとアーユルヴェーダでは説いています。
top photography : Koji Nishida
vata(風)は運搬担当。彼がいないと始まらない。
風を象徴とするアーユルヴェーダのドーシャ(生命エネルギー)「vata(ヴァータ)」は人間の身体の中では運動・呼吸・排泄、神経や感覚の刺激伝達などを担当するドーシャとされています。
一言で言えば何かを「動かす」運搬の働き。息を吸って呼吸器に下ろす働き、心臓のポンプから血液を血管に送り込む働き、生理の時に経血を膣から出す働き、お通じの際に腸から肛門へと便を下ろす働き。
このように、vataの仕事は何かを動かす仕事で「vataがいないと始まらない」ことばかりです。
日々の食事と消化についても、3ドーシャが全員で協力して成り立つもの。まずはじめにvataが口に入ってきた食べ物を食道を通じて下に下ろし、胃腸でpitta(火)が受け取って消化・変換し、kapha(水、土)が栄養成分を体に固定させる。といったリレーをしています。最初のvataがpittaにバトンを渡さなければ何も始まらないのです。
そのせいなのか、vataが優勢な体質の方は、人の輪の中でも上手にコミュニケーションをとり、率先してアイディアを出して、場の空気を新たに作って行く方が多いように思います。(※性格形成は人それぞれなので、そうでない場合ももちろんあります)
病気の8割はvataが原因。こじらせやすいのが難。
重要な働きを担うだけあってストレスが多いのか、こじらせると難点がたくさんあるのがvataエネルギーです。
「世界の病気の8割はvataが原因」とアーユルヴェーダでは言われていて、残りの1.5割がpitta、0.5割がkaphaとされています。もちろん、病気の段階でも発病状態になれば、単一ドーシャのみが原因になっていることはなく、複数のドーシャが絡み合って生まれているので、これは「vataの上昇が引き金になって生まれる病気が多い」という意味。
ドーシャを知り、自分の体質を知ると、例えばpittaが優勢ならpittaケアだけ、kaphaが優勢ならkaphaケアだけしていればいいように思ってしまうのですが、pitta体質でもkapha体質でも、vataケアというのは怠ることはできない。というか、どんな体質の方でもはじめはvataケアから始めれば良いのではないかな?とわたしは思っています。
そんなvataエネルギー、日本という国は年がら年中増えやすい環境にあります(!)vataは風を象徴とするエネルギー。風が吹けば上昇し、また変化すること、乾燥していることなどもvataを増やしますので「島国、四季がはっきりしている、秋冬は空気がしっかり乾燥する」日本は全国平均的にvataが増えやすいのです。
季節で言えば「気候が大きく変化する冬から春(2〜4月)」「一度上がった気温がちょっと下がる雨の多い梅雨(6月)」「熱で油分が奪われる夏の終わり(9月)」に続き「木枯らしの風が吹く秋の終わりから冬の始まり(10月終わり〜)」。こう見ると「一年中vataが増えてる!」とお気付きの方も多いのではないでしょううか。そして、1年を通して最もvataが増えやすくなるのが11月以降の秋の終わり〜冬の始まりなんです。
晩秋のvata上昇で「眠りに悩みを持つ人」が増える
vataが増え過ぎた時の不調の特徴として「痛み」が現れることは先月の記事でお伝えしました。
9月、10月の間は「なんとなく夏の疲れなのか、肌が乾燥している」「体の節々がぽきぽき鳴る」程度だったのが、ここにきて「背中がバッキバキに硬くなって動かない」「とにかく肩がはって揉んでもらっても良くならない」という話をよく聞きます。
これは冒頭にも書いた通り、ぐんと冷え込んだ影響で体を縮こめて歩いてしまったり、寒さのあまり運動不足が進み、ストレッチもしないでお布団に入るなどの習慣の結果ですが、もともとの「冷え込み」「寒さ」はvataの上昇の現れ。
こうした本格的な痛みに加えてこの季節は「眠りに悩みを持っている」人が増える印象があります。
・夜、なかなか寝付けない
・毎日のように夢を見る
・夜中にトイレや、トイレでなくてもなんとなく目が覚めてしまう
・朝起きた時にスッキリしない
・たくさん眠ったはずなのに、疲れがとれずに二度寝してしまう
以上の項目で思い当たる方が多いのではないでしょうか?
vataエネルギーは神経と非常に密接な関係にあるドーシャ。憎悪すると「自律神経への影響」がまず間違いなく現れ、それによって眠りの質を低下させてしまうのです。
こうしたvataエネルギーの上昇に備えて、木枯らしの風が吹く前にどのようなケアをすると予防になるのでしょうか?早速見ていきましょう。
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【レシピの作り方】身体と心を整えるアーユルヴェーダ料理
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