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わたしが料理家として、アーユルヴェーダを生きることを選んだ話
アーユルヴェーダというと、日本ではエステの一環だと思ってる方が大多数です。
それもそのはず、日本にアーユルヴェーダが入ってきたのは、大手エステサロンがアーユルヴェーダのオイルマッサージをサービスに取り入れたことがはじまりでした。
一方、アーユルヴェーダは世界三大古典医療のひとつ(注1)で、今もアップデートされていく生きた「生命の智慧」です。
日本のお医者様と同じように、海外には大学に6年間通い、医師の資格を持ったドクターが開業し、代替医療として多くの人の病の予防、病の鎮静に携わられています。(日本はアーユルヴェーダのドクターの資格で開業することはできません)
そんな中、料理にたずさわる人間がアーユルヴェーダを生活の柱としていくことはあまりメジャーではないのですが、
わたし自身がeatreat.として、アーユルヴェーダを軸に仕事をつくっていこうと思ったことを自己紹介として書いてみたいと思います。
食医に憧れて、料理を始めた日のこと
アーユルヴェーダと同様、古典医療とされる中医学(注2)では、医師は「食医」、「疾医」、「瘍医」、「獣医」の4分類に分けられ、食医がもっとも重要な位とされていました。
「食医」は皇帝に提供する毎日の食事を考え、管理する医師のこと。皇帝が病気にかかることなく、健康で長生きできるように、皇帝の食事と健康の管理を任されていたのが「食医」です。
私がこの食医のことを知ったのは今から10年前。大手キー局につとめ、今と全く関係のない仕事をしていた頃のことです。
当時、ハードワークで体調を壊した私は、働き方を見直し、異動を願い出て、週末にぽっかり空き時間ができました。
スタートした時から働きづくめの社会人生活、急にできた休日をもてあまし、趣味の一つだった料理を人に食べてもらう機会を持つようになりました。
忙しすぎてあまり会えなかった友達にも久しぶりに会う機会ができ、料理を作ると人が集まり、みんなが笑顔で元気になっていく。何よりも自分自身が元気をもらい、チューニングが不可能になっていた身体が元どおりになっていくことを感じました。
ちょうどその頃読んだ薬膳の本で知ったのが「食医」という言葉。体系的で具体的に身体の症状と毎日の食事がつながっていく世界に深い興味を抱きました。
「医食同源」という言葉は知っていても、それが医療として機能していた時代があることにも驚きました。
漠然と「おばあちゃんになるまで、飽きずに追求できる仕事がしたい」と思っていた私は、大手キー局の仕事はそのようにイメージができなかったけれど、
食に携わることは「生きることに近い」仕事。これなら飽きずに追求することができると感じて、
ひとの身体に直接入るものを作るのだから、いつか食医のような働きができるようになりたい。素人仕事ではない仕事ができるようになりたい、とプロの道に進むことにしました。
接触アレルギーを発症し、快復のために出会ったアーユルヴェーダ
会社を辞め、初めて入店したのはビストロ。フランス料理を作るお店です。
食材の組み合わせやレシピの組み立て方、そして店での働き方は、今思えばアーユルヴェーダとは全てが真逆を突っ走っていますが笑、
私はこの店でキャリアのスタートを切ったことを心から誇りに思っています。
それはそれは厳しい毎日で、ほとんど毎晩泣きながら自転車で帰宅していましたが、初めて仕事というものに情熱を抱きました。
視覚・聴覚・味覚すべてを通して顧客を喜ばせる料理を作るシェフの姿に心底憧れ、どんなに寝不足でも朝飛び起きて、夜眠るまでずっと突っ走る日々を過ごしました。
ただ、途中で甲殻類アレルギーを発症してしたことがブレーキをかけました。
鯖・エビ・カニの3つで、鯖とエビは特に日々の営業の中で特に多く扱っている食材でした。これは接触アレルギーと言って、アロマオイルマッサージに携わる方が精油アレルギーになったりするのと同様、珍しいことではないのですが、
私はどこの皮膚科を受診しても「アレルギーの根本的な原因は不明。完治も難しい」と言われ、それがどうしても納得がいかなかった。
他にどこにもない自分の身体なのに、面倒を見切れないことがあることが納得がいかなかったのです。
それまで個人的に学んできた薬膳にもわかりやすいアプローチがなく、漢方薬局を訪れたら目が飛び出るような金額の漢方を処方されそうになり、
もう少し独学で...と勉強を進めていくと、薬膳・中医学の源流を遡った先にあったのがアーユルヴェーダでした。
アーユルヴェーダの健康の要「消化力」はアレルギー快復の鍵
アーユルヴェーダの健康の要は、その人の「消化の力」にあることをこのnoteでもたびたび紹介してきていますが、この「消化力」は「抵抗力」「免疫力」と同じ意味で、アーユルヴェーダでは「力(バラ)」と言います。
アレルギーの発症の原理は、西洋医学の病理学的に言えば、
細菌やウイルスなど人体にとって危険な異物が体に侵入したときにこれを撃退する仕組みを免疫反応。この免疫反応が通常は人体に無害な物質やごく微量の異物に対して過剰に反応してしまい、逆に自分の身体を傷害する病態をアレルギーという
ということ。つまり、免疫力が何らかの原因で低下し、本来であれば身体の中でチューニングする機能が間違った選択を行うと、アレルギー反応が出ます。
私は長年のハードワークと、飲食店勤めをしていた時代の食事の組み合わせ・食べ方・そのほかの不規則な生活習慣のツケとして「力」が弱まり、結果として現れたのが甲殻類アレルギーなのだと理解できました。
「消化力」を本来の自分が持っていたものに戻し、安定してその火を燃やせるようにすればきっと治るはず。
どのような物事にも、必ず原因があるからです。
そう半ば直感レベルで理解し、これだ!とアーユルヴェーダの波に飛び込んでいきました。
ユニークで、冒険心を心地よく刺激する、アーユルヴェーダの深い世界
追求し始めたらどこまでも追求したい性格のせいか、その後仕事を続けながら入学したのが日本アーユルヴェーダ・スクール。
インド人の校長先生をはじめ(まだ日本では希少な)日本人アーユルヴェーダ・ドクターの先生方による講義は本当に面白く、
「わからないことがわからない」
ということに苦しみながら向き合うのが楽しいなんて、学生時代には経験がなかったかもしれない。笑
私がもっとも尊敬する及川先生は「アーユルヴェーダって、インディジョーンズみたいじゃない?」といつもいうのですが、
本当にその通りで、アーユルヴェーダは美容法やセルフケアとか、そういう言葉でまとめることのできない、深く不思議に満ちた宇宙のような「生命の智慧」なのでした。
その後、基礎の一年生を受けている間に私は自分なりに自身の「消化力」を鍛え直すことができ、鯖アレルギーを克服するに至ったのですが、その話はまた今度。
とにもかくにも、自分の実体験を通して「これは良い」と理解できることって強いですね。
知れば知るほどわからないことが出てくるけれど「このアーユルヴェーダというものを通して、食の仕事を作っていこう」と決意したとき、私が歩む道のスタート地点が定まりました。
個人の生活に寄り添った「食と生活のレシピを作る仕事」
日本アーユルヴェーダスクールで得られる民間の資格は「アーユルヴェーダ・ライフスタイルカウンセラー」というもの。
食事や生活など「毎日の当たり前の暮らし」を見直す機会を作り、アーユルヴェーダ的なアプローチでアドバイスする技術の基礎が身につきます。
もちろん、知識が身につくだけで、やってみないことには始まらないのだから「これを仕事にして生きていこう」というよりは「もっと理解を深めたいから、知り合いからカウンセリングさせてもらおう」くらいの気持ちで、アーユルヴェーダカウンセリングをスタートしました。
*アーユルヴェーダカウンセリングって何をするの?ということについては、こちらの記事を読んでください。
当たり前のことですが、一人一人みんな違うことに毎回ゼロから感動し、「人間ってすごい!!」と思いました。今でもそれは変わりません。
そして、自分がやっていくにあたって「個人の生活に寄り添って」話を聞き、アドバイスができるようにしようと気をつけるようにしました。
規則正しい就寝と起床をすすめるからといって、夜勤が前提の仕事の方に仕事を替えるよう促さず、できる部分で睡眠を見直すよう考えること。
アルコール摂取が身体に大きな影響を与えているからといって、飲食業の方にアルコールをやめようと言わずに、アルコールのデトックスを一緒に考えること。
みんな、今の自分が何かちょっと間違った方向にいっているとわかっているからカウンセリングに来るのです。でも、一人では「チューニングする糸口が見えない」だけ。
その糸を解いて「ここからゆっくり、ほどいていきましょう」と声をかけるのが私の仕事だと思っています。
そして、生活習慣はもちろん、食事のレシピは料理をやっている自分だからできること。簡単で、すぐにできて、身体も喜ぶごはんの作り方をその場でお伝えすることができる。
日本人にとってはカウンセリングというと仰々しいし、ついかまえてしまうけれど、「食と生活のレシピを作る仕事」といえばその方が近いですね。
そうしてアーユルヴェーダ・カウンセラーとなった私は、その後お茶を作り、店舗を持つことになったのですが、その話はまた次回...
to be continued!!
(注1)世界三大古典医療...世界三大伝統医療のこと。アーユルヴェーダ・中医学・ユナニ医学。
(注2)中医学...中医薬学の理論と臨床経験に基づく中国の伝統医学(いわゆる中国漢方)
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![eatreat.身体と心が整うアーユルヴェーダの食のレシピ](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/77446311/profile_b57ff13499d21916d45d25ccffadb5ea.jpg?width=600&crop=1:1,smart)