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脱炭素。欧州メーカーは大人の対応。トヨタは子供っぽく見える。でも、そこがスバラシイのだ!

今話題の、自動車メーカーの脱炭素対応。スポーツカー好きのワタシの目線では、こう見えます。
(※エンジン車とEVの間に、面白さの差を感じない方にこの文章は無意味なので、トバしてください)

まずは欧州スポーツカーの惨状。

英ロータス…

英国のライトウェイトスポーツカーの雄ロータスは、完全EVの新型車「エヴァイヤ」を発売し、ガソリンエンジンのエリーゼ、エキシージの2車種の生産を打ち切りました。
エモーションを大事にするスポーツカーメーカーなのに、大人の対応かい!と突っ込んでみる。

新型車エヴァイヤ、カタチは良いが、全長4459mm、全幅2000mm…デカすぎ。こんなのイギリスの田舎道で走れるのか?
そしてお値段3億円。
さらにはなんと、車重1,680kg。こんなのライトウェイトじゃない。1,680に”抑えた“なんて言うが、大きく、重い。こんなスーパースポーツはマクラーレンやランボに任せておけば良かったのに…EV化が重量増に関係していないことを願う。

ちなみに、創設者コリン・チャップマン自ら開発した往年のロータス・セブン(今もケーターハム他が作り続けてマス)は車重500〜600kg程度。エヴァイヤはセブンの3台分の重さ。そしてセブンの1960年代当時のお値段、200万円程度。
これは、チャップマンさんが、軽くて、運転して楽しいクルマを安価で販売して、沢山の人々に乗って欲しい、と志したからに他ならない。

なのに、現代のエヴァイヤの値段は、当初のセブンの15台分だ。

エヴァイヤのコンセプトはとても、創業者の思いを継いでいるとは思えない。

これにより、エリーゼとエキシージの中古車価格は跳ね上がるでしょう。お金持ちは今のうちに、この2車種の在庫新車を買い漁るのでは。あまり距離を伸ばさずに大事に乗っていれば、将来高く売れるのは間違い無いかと。今新車で買える、最後のホンモノのロータスですからね。

はあ(ため息)

さらば、ロータス。

ガクッ(落胆)

仏アルピーヌ…

仏アルピーヌもスポーツカーの名門。
ため息の出るような美しいデザインの、低くて、小さくて、青い(笑)、傑作スポーツカーを送り出してきた。
代表作のA110。↓

後ろにチラと見えるのが新型A110。

しかもA110は2017年に新型に生まれ変ったばかり。

なのに…アルピーヌお前もか!

2026年までにA110の後継を含む3車種を全てEV化し、そこから先はEV専業メーカーになると宣言。しかも3種の新型車のうち1種は、SUV…背の高いアルピーヌなんか、見たくないよ…
メチャクチャ小さくて低い車体に、ゴルディーニ・チューンの野太いサウンドを響かせた、あのフィロソフィーはどうしてくれんねん…
ま、仕方ないか。大人の事情だし、ビジネスだから…


はあ(ため息)

さらば、アルピーヌ。

ガクッ(落胆)

伊アルファロメオ…

下記にて既報。↓

はあ(ため息)

さらば、アルファ。

ガクッ(落胆)

イタリア勢に言いたいのは、ランボルギーニとフェラーリの2社。あなた方だけはどうか、内燃機関を守り抜いて欲しい


…そこへ持って来て、我らがトヨタはエライ!

なぜってまず、
GRヤリスを発売。
4mを切る全長、車重1,280kgのコンパクトボディに、272馬力、トルク37.7kgの高性能エンジンをぶちこんだ。やりたいことをやる子供のようだ!エライ!
お値段何と、330万円から(RC)。安い!
これ仮に欧州メーカーが作ったとしたなら1,000万円くらいは取られますよ。

そして、GR86/スバルBRZを発売。
全長4,265mm、車重1,260kgのコンパクトFRに、何と先代から400ccも排気量を上げた2.4リッター自然吸気ボクサーエンジンを搭載。235ps。
時代逆行にリスペクト!エライ!
サイズはあのポルシェ・ケイマンとよく似ています。ケイマンは300psありますけど、86は、お値段何と279.9万円から!
ケイマンは729万円からですからね!およそ2.6倍!

さらには、従来のエンジンの技術やパーツを活かせて、雇用も維持できる水素エンジンに挑戦中。

エライ! エラすぎる!

こりゃもはや、軽くて小さく、皆が安価で楽しめる、内燃機関搭載のスポーツカーは、今後、トヨタはじめ、日本のメーカーにしか作れないのでは? そう思ってしまうほど、この分野では、欧州車のお株を奪ったと言えるでしょう。

頑張れトヨタ!

と思っていたのですが…
世界中から、EV軽視だとバッシングを受けた
トヨタ、ついに昨年末、さらなるEVシフトを発表。(2030に350万台EV化)
しかし同時に「EVだけに舵を切ったとは思われたくない」とも。(2022.2.7 日経新聞より)

ある程度、大人の対応に合わせるのは仕方ない。ビジネスだから。そう思います。

時計業界の逸話。

ただ、時計業界には、こんな逸話があります。
今も機械式クロノグラフムーブメントで最高峰の一つと言われる、スイス・ゼニス社の「エル・プリメロ」。
1969年にこの超絶ムーブメントが開発された直後、正確で安価な日本メーカーのクォーツ旋風にさらされ業績が低迷。ゼニスはアメリカの会社に買収され、機械式時計は製造中止に追い込まれ、部品や金型の廃棄が命じられます。

しかし! 
必ずや機械式の時代が再来すると信じた当時の技術者シャルル・ベルモさんは、社名に背き、金型や製造工具、設計図などを会社の屋根裏部屋に隠したんですね。

時は流れ1980年代。クォーツブームは落ち着き、会社はスイス資本に戻り、なんと! エルプリメロの製造を再開しようということになった!
この時、スイスのメーカーはクォーツシフトが進み、機械式時計の技術が失われていたわけです。ゼニスだって「しかし金型も設計図も廃棄したはずだから、イチからやり直しかー」となったはず。
そこで、隠されていた設計図や金型が大活躍することになったわけです。「実は屋根裏に…」と語り始めるときの興奮したベルモさんのドヤ顔、見てみたかったなー。

ところで日本ではこの話を、気骨のある技術者の美談だと受け止める向きが多い。
しかし、ゼニスは今も、エルプリメロで儲け続けている。価格設定も、私が買った20年前と比べて2倍以上になっている。

良い意味で、したたかな話だとも読める。

何が言いたいかというと、

内燃機関の設計図も、廃棄せずに屋根裏に隠しておいてください!

ってこと。
心理的に、って意味です。

トヨタさん、日本のメーカーさん、いや欧州のスポーツカーメーカーの中にも、ベルモさんのような気骨のある技術者が、そしてしたたかな経営者が絶対いると思います。

CO2排出を大幅に減らし、既存の内燃機関で使える新燃料を世界に先駆けて開発するとか。やることもあると思います。
案外、欧州メーカーは、黙って必死で開発しているかもしれません。内燃機関の設計図は金庫に閉まっておいて、したたかに。

青臭いこと言いますケド、ワタシは
ヒトの感情に訴えかける内燃機関、これが機械式時計と同じように再評価される時代が必ず来ると信じています。

雇用を守り、かつ、ヒトの気持ちを上げてくれるものを作り続けたいという子供っぽさは、人間社会を豊かにするために、すごく大事だと思います。

それでは、またー。


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