詩:点線になっていく自分のからだ
長い間一人でいると自分の輪郭が
どうやらぼやけていくらしい
まず手の皮が薄くなり 浸出液と血が
シーツを濡らすようになる
首元はただれ 襟があたると痛む
胸元の実線はやがて細かな点線となり
針を呑み込んだほこりが
風に吹かれて心臓をなでる
コップの水を排水溝に流すように
いっそのこと
僕の拙い輪郭が抱えている内容物を
ぜんぶどこかに
そうすれば僕は 地面になり 水になり
木になり あるいはぜんぜんちがうだれかにだって
なれるかもしれないのだ
目を閉じて 僕は 自分の中に起こっていることを観察する
蟻のような虫たちが
僕の 体力 気力 希望、をすこしずつ削り取り
外に持ち出していく
そのお礼に 彼らは僕の中に砂利を置いていく
だんだん重くなっていく体をベッドに寝かせ
ワインを自分に浴びせかける
点線で囲まれている僕のなかに赤いアルコールが入ってくる 吸収する
そうして僕は二日ぶりに眠りにつくことができた