私のわがままが誰かを救った夜
昨日、とってもメンタル落ちてしまって、最近減っていた、
「北、今すぐ来て」
が発動。
日付けが変わって直ぐに来てくれる。
「来たけど俺はどうすればいいの?」
昨日は結局歩けなかったし、歩きたいという私。
時間は深夜1時だったけど、2人ともモコモコした耳あて?(なんて言うんだろう。私はふわふわの望がくれた可愛いの、北にはシンプルな普段使いのを貸した)をして、夜でも雲の厚い空の下、歩き出した。
ピクミンブルームの今月のお題で、北が、
「赤いクリスマスローズがないからクリア出来ない」
というので、クリスマスローズ目指して歩いていたら、背後からいきなり声をかけられたらしく、北が立ち止まる。
私はまだ耳がちゃんと聞こえてないし、耳あてもしていたから気づかなかったのだ。
「すみません、駅はどちらにいけばいいですか?」
最寄り駅なら、この道を反対方向に真っ直ぐ歩けば20分くらいで着くが、この時間にあの小さな駅に用はないだろう。
「駅前のホテルに帰りたいのですが、道が分からなくなって」
うーん、これは間違いなく米子駅。
私なら道が分かるけど、ちょうどクリスマスローズのためにちょっと米子駅を案内するにはめんどくさいとこにいた私たち。
「タクシーもつかまらなくて」
この時期の金土日の深夜にタクシーがつかまる訳がない。
色々お話したけど、全然土地勘がない方、とわかり、北が、
「一緒に歩きましょう」
「そうですね、私たちただ歩きたいだけですから」
とぽてぽて3人で歩いた。
私は米子駅まで行く気はなくて、うちの近所の飲み屋街には、店の前に何台も出待ちタクシーいるのでそこまで案内すればいいかな、と思ったのだ。
歩きながらお話して、米子の友達と駅前のお店で飲み、〆のラーメンに行く組と行かない組に別れ、地元民でないこの方は米子の街をさまようことになったようだ。
米子駅前で飲んで、ここまで歩いてきたー?
私は変態なので、真っ直ぐ米子駅にいくなんてせず、2時間くらいかけて米子駅にいくのだけど、真っ直ぐここまで来ても30分くらいかかるかな?
土地勘がなく、だんだん街の灯りも少なくなり、住宅街に入り、人気も車も全くないところに来てしまったこの人はどれくらい不安だったろう。
駅前で飲んで、と言うが、酒臭くもなく、紳士的なその方に私は同情してしまっていた。夜中にこんなに歩くことなど想定してもなかった格好でいらしたし、寒くてたまらないだろう。
そして、北の車を停めている駐車場の前まで戻った時、
「考えたら俺の車で送ったらいいと気がついた」
北が思いついように言った。私もなるほど、と思った。
その人はとても恐縮していたが、小さな雨が降ってきていて、そのくらいの雨でも大丈夫な装備の私たちとは違う服装のその人のためにはそれが1番いい。
北がホテルの名前を聞く。
マップで検索すると、米子駅からは少しそれて、そこからまた歩いて貰うのは忍びないので真っ直ぐホテルに向かう。
何度もお礼をと言われたけど、北はそんなことを望んでないし、
「早くお風呂に入って暖まってください」
とホテルの前でお別れした。
私たちの車が見えなくなるまで、その人は私たちを見送ってくれた。
2時を過ぎると一時的だけど雨が強まり、車であちこち行って、北も赤いクリスマスローズのお題クリア、私も青いポインセチアを集めることができたし。
寒いし、私は昨日まともに食事を摂ってなかったので、お肉が食べたかった。
「アヒージョ食べたい…」
お肉食べたくてアヒージョなのはなぜか?だけど、それから24時間スーパーをハシゴして、アヒージョの材料を集める。
途中、北が用があってコンビニによった。
私は車で待っていたけど、女の子の集団が明るい声を上げながらコンビニに入っていく。
なんとなくほっこりしていたら、北が戻ってきて怪訝そうに私の様子を見る。
「若い女の子は花で、子供は天使で、見てるだけで幸せになるなって」
「そういう考え方はいいね」
帰宅したのは4時。
それからアヒージョ作り。
深夜で冷凍物も使ったけど、手早く美味かった。
なんとなく飲みたくて買ったけれど、ワインだけでよかったなー。
でもカボス美味しそうで楽しみ。
でっかいチーズケーキ、大味かと思うかもだけど意外に美味しい。
アヒージョもケーキも余ってるけれど、今夜から明日に食べればいいから。
北は明日から準夜勤で、睡眠の調節があるので、8時半くらいに帰って行く。
「君のわがままが人を救った珍しい例だな」
そんなことを言って。
それから私も昨日と違って、気持ちよく12時前まで眠る。
外は雪が混じった雨。
暖房を効かせて、ゆずの香りの紅茶を飲んで、ただ、密やかに幸せでいよう。