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真剣にバカゲーを作る喜びと苦悩
■ゲームを作るって、楽しくて辛い
僕は個人でゲームを制作している。「まぐろ定食」という名前でいくつか作品を公開している。制作ツールはRPGツクールというプログラミングが分からなくてもゲームが作れるツールを使っている。
作品について軽く触れておくと、現在公開している作品はほとんどバカゲーと呼ばれるジャンルだ。面白おかしく展開が進んでいき、ギャグを挟んでは突拍子もない方向に物語が進んでいく。そんなゲームを僕は作っている。
ギャグばかりのおバカなゲーム。そう聞くと、制作も気楽なものだと思われる方もいるかもしれない。だが、ゲーム作りというのは、楽しいことばかりではないのだ。
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僕の代表作『新ジャンル「おかしな脱出ゲーム」』を例に挙げてみよう。
作品リンク↓(無料でプレイできます)
※追記 上手くリンクが貼れないのでジャンプしたい場合は手動でURLをコピーして頂けると幸いです。申し訳ございません。
※2024年12月追記 アツマール様が閉鎖したため、ふりーむ!様にリンクを変更しました。
アツマール版(現在終了)→https://game.nicovideo.jp/atsumaru/games/gm10146ふりーむ!→https://www.freem.ne.jp/win/game/21549
このゲームは、「新学期に入って脱出ゲームをやることになった中学生の主人公が教師に閉じ込められ、教室の謎を解いて脱出する」という内容のものだ。現在RPGアツマールで14000プレイを超える嬉しい結果になった。
しかし、その開発秘話は、血と汗と涙の結晶であった。
■血と汗と涙のゲーム作り
2019年2月20日、自作小説(下記)の1章を書き終えた僕は、テンションが上がりに上がっていた。10万字を書き終えた段階で、謎の万能感と睡眠不足による高揚感を味わっていた僕は、「このままの勢いで新作ゲームも作っちまおう」と意気揚々とツクールMV(以下ツクール)をたち上げた。
自作なろう小説↓
https://ncode.syosetu.com/n9936fg/
僕は基本的に散歩をしながらアイデアを膨らませるので、その日も外に出た。ツクールをたち上げたのは幻覚だった。しかし、1km歩いても2km歩いても、新作のアイデアは訪れない(もしかして3km歩いたら思いついてたかもしれない)。アイデアが思いつかないまま、僕は部屋に帰った。
部屋に帰ってウンウンと頭を抱え、うなされていると、ある時こんなひらめきが浮かんだ。
「テーマは自分で見つけるんじゃない、他から借りればいいんだ!」
他力本願極まる発想で僕はツクールフォーラム(ツクールをしている人たちが集まる交流所みたいな所)を開くと、あるイベントがちょうど開かれているのを発見した。
「平成最後の!ツクールの日記念イベント」
そうだ! もう令和なんだ! 僕の頭に電撃が走った。
このイベントは、「平成」か「新〇〇」をテーマに短い作品を作る作品公開イベントで、ゲーム制作が久しぶりだった僕にとってリハビリに最適だった。心の中で、歩けないヒロインが勇気を出して立ち上がるシーンがよぎる。ク〇〇のいくじなし! そう僕のハイジが叫んでいる気がした。
こうして、僕はそのイベントに参加することに決めたのだ。
■運命の選択! テーマ決め
テーマは「平成」もしくは「新〇〇」。僕は考えた。どちらのテーマが簡単だろうか。
平成というテーマは一見すぐに「平成あるあるネタ」や「平成で印象に残ったもの」をネタにしやすい。しかし、ゲームにするという点において、僕は長く遊んでもらえる作品にしたかった。となると、賞味期限のある平成ネタは、諸刃の剣に見えた。
対して新〇〇はどうだ。新〇〇というテーマは、新しければなんでもOKである。この時点で、なまけ者の僕は楽な道を選んだ。ナマケモノは激しく動くと死ぬ。
こうして、新作のテーマは「新〇〇」に決定したのだ。ぱちぱち。
しかしゲーム制作はここからが本番。まずはジャンルを決め、シナリオを考えなければならない。むろん、シナリオがないゲームもあるが、シナリオが無い分ゲームシステムで魅せる部分が大きいため、技術力Eの僕には荷が重いのだ。
「まずはジャンルだ」
ここでRPGツクールだからと言ってRPGを選んでしまうのは罠である。RPGというものはストーリー、戦闘、マップ、システム、etc..を作らねばならず、一言で言うと、作業量が多い。そんなものを作っていては、イベントが終わった後に公開する走れメロス状態になってしまう。いやメロスはギリギリ間に合った。
かといって、僕にシューティングだのパズルだのを作る技術力などあるはずもなく、今から習得するには時すでに遅しという奴だった。
そこで脱出ゲームを考えた。
「脱出ゲームは楽だ。アドベンチャーの一種である脱出ゲームは、プレイヤーに操作させて調べさせ、クリアまで進行させればいい。基本的にはそれだけだ」
(話が逸れるが、ゲーム制作初心者にオススメなのは、断然アドベンチャーだ。バランスを取らなくてはいけない戦闘を省けるし、イベントの進行さえできれば難しいプログラムを組む必要はない。必要に応じて自作絵などでオリジナリティを出すこともできる。アドベンチャーばんざい!)
脱出ゲームなら、短い期間で完成させることができる。そう考えた僕は、脱出ゲームの作成に取り掛かることにした。
ジャンルも決まったし、勝ったな。と敗北フラグを立てる敵キャラのような笑みを浮かべていた。しかし、そこからも苦悩の連続であった。
■アイデアは突然天から降ってくる
脱出ゲームという題材において、シチュエーションは重要である。どこかの研究所、シェルターの中、学校。選んだシチュエーションによって、脱出ゲームで扱うアイテムすら変わってくるのだ。ギャルゲーで選んだヒロインによって、ルートが変わってくるかのように。(?)
とにかく、シチュエーションは最重要ファクターだった。僕は頭を悩ませた。というのも、ツクールには素材が豊富にあるものの、最初から入っているのはファンタジーの素材が殆どだったからだ。
有料素材は高い。できればお金をこれ以上使わず済ませたい……そんな僕のケチさが導き出した結論は、サンプルマップを使うというものだった。ツクールにはあらかじめ作られたサンプルマップが何個も用意されている。
サンプルマップをロードしては削除、サンプルマップをロードしては削除、目標をセンターに入れてスイッチしていると、ある一つのマップが目に留まった。
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教室である。
「教室なら、程よい広さで短編を作れるんじゃないか?」
こうして、新作のシチュエーションは教室に決まったのである。
■第二の壁! テーマ「新〇〇」
次の壁は、テーマについてのものであった。
テーマが「新〇〇」な以上、テーマに沿った作品を作らなければならない。これはプライドであると同時に、プレッシャーであった。新しいものをそう簡単に生み出せたら製作者は苦労しないのである。
これも大いに悩んだ。悩む途中で炭酸を飲んでストレス解消をした。おいしい。炭酸の刺激のおかげか、ある妙案がひらめいた。やっぱりコーラはすごい、ペプシより断然すごい。
「脱出ゲームでバカゲーって、なかなか見ないんじゃないか?」
そう、無謀にも、プレイヤーに緊張感や閉塞感を強いて脱出を促す脱出ゲームというジャンルに、バカゲー要素を持ち込もうとしたのだ!
こうして、新作脱出ゲームの新〇〇要素は「脱出ゲームなのにバカゲーをやってしまう」という、(僕の中では)斬新と呼べる作品にすることに決まったのだった。
■ひたすら作業に打ち込む日々
ジャンルが決まり、シチュエーションが決まり、テーマが決まった。あとは形にしていくだけである。簡単な筋書きを用意し、謎解きの順番を決め、配置するキャラクターやオブジェクト(物)を決める。
プレイヤーにどんな順番で解いて欲しいか、どんな印象を与えたいか、僕は感覚でやっているので説明しづらいが、とにかく面白いと思ってもらえるように、何回もテストプレイを重ねる。
キャラクターがどんな台詞を喋るか、どういう風に動いて欲しいか、それは明確な答えはないし、完璧な完成形というものは存在しない。だからこそ、僕はここに一番魅力を感じるのだ。自分の思い描いた場面を、プレイヤーに分かってもらえるように表現して、分かってもらえた、楽しんで貰えた時の喜び。これこそが、ゲーム作りの醍醐味であると感じる。
とはいえ、とはいえだ。ゲーム作りは地味な作業も多い。ひたすら文章を打ち込んだり、効果音やBGMの調整をしたり。たまにバグが見つかって心が折れそうになりながらも、それでも自分が作らなければ進まないのだ。
ゲームを作るって、楽しくて辛い。
■完成 ~そして公開へ~
一通りエンディングまでのイベントを作り、バグ取りも終わると、通しプレイを何回かこなした後にいよいよ公開への道に入る。なにせバグだらけで公開などしようものなら、袋叩きに逢うのは確実なので、ここからは緊張と期待が同居するシェアハウス状態だ。
RPGアツマールという作品を全世界に公開できるサイトにアクセスし、アップロードの準備を終えると、いよいよアップロードボタンを押す。
どんな名作も、プレイ数のカウントは0から。作者達は皆、緊張と期待と不安の中、自分の作品をネットの海に公開するのだ。
さて僕はというと、テストプレイの段階で結構面白いものができたと確信していたので、1000プレイぐらいは見込めるかなと思っていた。バグが出ないかは不安だったものの、それより作品を公開できる喜びの方が大きかった。
こうして、『新ジャンル「おかしな脱出ゲーム」』は完成したのである。
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↑たくさんのコメントも嬉しい
■ゲーム制作を終えて
一つのゲームを作るのには、多くの時間がかかる。実際に作る時間もそうだし、アイデアを考える時間も含めると、かなりの時間を制作に充てることになる。そして、完成して公開しても、どれくらいの人が興味を持ってくれるのか、面白いと思ってくれるのかは出すまで分からない。
それでも僕はゲームを作り続けている。それは、プレイヤーの反応も嬉しく、とても励みになっているのも大きいが――なにより自分がゲームが好きで、ゲームを作るのが好きだからだ。
「好きじゃなきゃ100時間も200時間もゲーム作りに捧げたりしないわよ!」
と変形型ツンデレみたいなことを言いつつ、そろそろまとめに入りたいと思う。
僕は、この記事で「ゲーム制作って大変なんだな」ということだけを伝えたいのではない。確かに大変な部分もあるが、それ以上に自分の作品が世に出る喜び、自分の作品がプレイされる喜び、そして自分の作品を作る喜びがあることを伝えたいのだ。
これを見ているあなたに伝えたいのは、それはゲームに限らずとも、自分を表現できる何ものかを見つけることは、代えがたい喜びであること。それは、自分の中のもやもやした感情や、自分だけにしかない感性を表現する絶好の機会であること。それを伝えたいのだ。
ブログでも、小説でも、noteでも、イラストでも、youtubeでも、3Dでも、楽器でも、作曲でもなんでもいい。僕は、自信を持って
「何かを作るって楽しいよ!」
と言いたいし、自分だけでは溢れるくらいのその喜びが、皆のものにできたらいいと思っているのだ。
この記事が、僕自身が持つ力は小さなものかもしれない。
でもいつか、この記事を読んでくれた人がちょっとだけ、ほんのちょっとだけ勇気を持てるお手伝いができたなら、僕の本望である。
おわり。
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