【第9回】関連づけが学習意欲を高める④動画活用法の模索
~看護教員から教育学者へ~
西野先生のアドバイスを受けた後に、毎回メンバーで集まり意見交換を行っています。これまでは、自分の“過去”の授業経験を振り返った意見が多かったのですが、今回はこれからの授業にどのように先生のアドバイスを取りいれるかという“未来”の話が多くなってきたように思います。一歩一歩ではありますが、授業改善に向かっていく予感がしています。
動画の活用・目標立案・理解度の確認について意見交換をしました。今回も梅澤が書いていきます。
1.「まずはYouTubeで検索」という学生の常識が当たり前と再認識
当校では、「語りレク」という伝統行事があります。上級生から下級生にお勧めの勉強方法を伝えるなど学生主体の活動です。その企画の中で、上級生が下級生にお勧めの無料動画を紹介したいという希望があったそうです。その時、酒井先生は、信ぴょう性に問題があるという理由で却下したそうです。実際、看護学生向けスマホアプリに間違えた用語が使用されていることがあったそうです。本来は、「静脈血流」と表現しなければならないところ、スマホアプリに「鏡脈血流」と書いてあり、学生は間違えていることに気づかず、提出レポートに「鏡脈血流」と記載していたそうです。また、教員になりたての頃、先輩教員から「インターネットで調べる学習方法はよくない」と教えられていたことも酒井先生が却下した理由の1つでした。しかし、これだけスマホが普及している時代に、古い考え方だったな、学生の考えを尊重できればよかったなと思っています。
今の学生は、スマホ世代であり、西野先生がおっしゃるように「わからないことはまずはYouTubeで検索」が当たり前になっているのだと思います。青葉先生は、教員養成講習会で「学生の常識が今の常識」と習ったことを思い出したそうです。インターネットで調べるのはダメと禁止するのではなく、私たち教員が、目の前にいる学生たちに合わせた学習方法を改めて考えていかなければならないのだと、メンバー全員で再認識をしました。
2.学生が無料動画を見ることを前提にした学習支援
学生は勧めようが禁止しようが、自分たちの好んだ無料動画は見るだろうということを前提とした学習支援について考えてみました。
無料動画は確かにわかりやすいものがたくさんあります。例えば、多くの学生が苦手とする「酸塩基平衡」などは、動画を入口にして学び始めることで、難しいものと認識せず、「ちょっと分かるかも」と思えて、もう少し勉強してもいいかなと興味をもつことができるのではないかと思います。しかし、すべてを動画だけで学習すると先ほど述べたような「鏡脈血流」という間違いには気づけないままになってしまいます。そこで、動画で学び始めて、テキストに戻って学ぶ、初めて聞いた言葉はそのままにせず、調べるようになってもらえるような支援をしていきたいと考えました。
一方、学生がテキストに戻ったときに、書かれている文章を正しく読み取れるのかという懸念もあります。以前、梅澤がかかわった比較的勉強のできる学生が、妊娠高血圧症候群の診断指標となる症状について、テキストの文章のアンダーライン部分にマーカーを引いていました。(以下太字部分)
現在は、診断指標となる症状は「高血圧」なのですが、文章冒頭にある「従来」という言葉が目に入っていないのです。テキストに戻ってといっても、テキストが正しく読み取れないこともあると認識しておかなければいけないと思った事例でした。
3.教員が学生に勧められる無料動画はあるのか?
これだけたくさんの無料動画が出回っているなかで、すべてをチェックして学生に勧めたい動画をピックアップするというのは、至難の業です。看護教員として、学生に安心して紹介しやすい無料動画は本当にないのか意見を出し合ったところ、次のような無料動画であれば、基本的には信頼できるのではないかと思いました。
今後もよい教材になりそうな無料動画が見つけて、情報交換をしていきたいと思います。
4.有料動画の有効活用事例を紹介
板倉先生が担当している在宅看護論の授業の中で、活用している有料動画があります。在宅療養介入時期別の看護が分かりやすいNHKオンデマンドで見つけたドキュメント映像です。施設から在宅への移行期、在宅療養安定期、急性増悪期、看取り期、それぞれの看護が分かりやすく映像化されています。
単に動画を見せるだけだと、教員の見て欲しいと思う部分とは異なるところに目がいってしまうことがあるので、「今から見る動画はこういう内容です。○○の視点で見てください」と指示をしてから見てもらっています。学生からは、理解が深まったという感想が聞かれています。
3年でやっと1つ良い動画に出会えたという状況なので、良いものを探すのは時間がかかる作業だと思ってしまいます。
5.「目標はSMARTで」を合言葉にした学生支援
適切に自己目標を設定できるようになるためには、日頃から訓練していくことが必要だと感じています。SMARTな目標になっているかを学生同士でチェックし合うのは、とても有効だと思いました。またどの教員も「目標はSMARTで」を合言葉にしながら学生に伝え続けることをしていきたいです。
1つ質問があります。
西野先生の授業の中で、30秒程度で個人目標を立てさせ、それを意識してグループワークをしてもらうことがあると教えていただきました。学生が30秒で目標が立てられるものなのか、イメージが湧きませんでした。どんな授業で取り入れていますか? 学生に紹介した良い目標を一部ご紹介いただきたいです。
6.日々の理解度確認方法についての具体例とは
日々の理解度の確認方法の1例として西野先生が紹介してくださった「10のキーワードを全て用いて○○について説明しなさい」という問いを青葉先生や梅澤は取り入れたことがあります。理解度を確認する方法として良い方法だという実感があります。それぞれの用語の意味が分かって、区別ができないと正しく説明ができないと思うので、今後も取り入れていきたいと思います。
細かい部分の質問になるのですが、記事の中に「良い点が取れるまで何度も小テストを受けられるシステムがある」とはどんなシステムでしょうか?手間はかかりますが、大切なことだと思います。具体的に教えていただきたいです。