西野毅朗

京都橘大学 教育開発・学習支援室 (経営学部 経営学科)准教授。同志社大学社会学研究科教育文化学専攻博士後期課程修了。博士(教育文化学)。専門は教育学(大学教育、高等教育開発)。現場の教育力を高めるため、日々現場の教職員と協力して教育開発を推進中。

西野毅朗

京都橘大学 教育開発・学習支援室 (経営学部 経営学科)准教授。同志社大学社会学研究科教育文化学専攻博士後期課程修了。博士(教育文化学)。専門は教育学(大学教育、高等教育開発)。現場の教育力を高めるため、日々現場の教職員と協力して教育開発を推進中。

マガジン

  • 看護の授業で学生の学習意欲を高める12のヒント

    看護大学や専門学校の授業で、学生の学習意欲を高めるためのヒントを紹介しています。実際の授業改善に役立てていただけるよう、教育学の研究者による解説と、看護教員の実践報告の掛け合い形式で記事を書き進めます。

最近の記事

【第22回】(最終総括)ARCSモデルを実装した連載

 学習意欲を高める授業づくりのために「ARCSモデル」をテーマにした全23回の往復書簡型連載は本回をもって終了となりますが、いかがでしたでしょうか。  梅澤先生とのやり取りを振り返りますと、この連載そのものが「ARRCSモデル」を実装した学習の場だったように思います。つまり、「学生」を「梅澤先生たち」に置き換えた以下の目標を先生たちと共に達成することができたのではないだろうかということです。 Attention(注意)…梅澤先生たちの注意をひきつける Relevance(

    • 【第21回】(看護教員の総括)学生の意欲を引き出すためには教員が学生のモデルとなる行動ができるかどうかが大切

      ~看護教員から教育学者へ~  ARCSモデルは「学習意欲についての心理学諸理論を分類したものと、学習意欲を引き出すことが上手な教育実践者の知恵を分類したものが、ARCSという4分類に重なったもの」と教えていただき、モデルが確立されるまでに非常に多くの時間と労力が費やされたのだろうと想像し、先人の知恵を受け継ぐことのありがたさも感じました。それを受け継ぐ私たちは、ARCSモデルを活用させていただき、よりよい授業を目指していかなければならないなと改めて肝に銘じつつ、今回は梅澤が

      • 【第20回】満足感のある授業をつくる⑤ARCSモデルのその先へ

        ~教育学者から看護教員へ~  前回、先生方から「学生が意欲的に取り組み、想定以上の成果を得られた」「教授活動をARCSモデルに当てはめて振り返ることで、教育的な意味を見出すことができた」「明確な目標設定の重要性を学び、評価基準を明確にしようとしている」「自分たちの意欲が高まったのは、このやりとりの中にARCSモデルが含まれていたからだろう」といった嬉しい声をいただきました。一方で、授業設計はどうすべきか、学習評価はどのようにすべきかという、まさに授業づくりの基盤となる部分、

        • 【第19回】満足感のある授業をつくる④ARCSモデルを用いた授業設計と評価について教えてください

          ~看護教員から教育学者へ~  前回、「希望の登校・満足の下校」を目指していきたいと述べましたが、それをかなえるためにはARCSモデルを学校全体に広げていくことが大事であるというアドバイスをいただきました。まさに、組織として教育力を上げるために必要なことだと思いました。学校全体に広げていくにあたり、もう少し教えていただきたいことがあります。今回は、梅澤からの質問を中心に書いていきます。 1.ARCSモデルを活用した授業の効果をどのように評価するか?  私は最終学年である3

        • 【第22回】(最終総括)ARCSモデルを実装した連載

        • 【第21回】(看護教員の総括)学生の意欲を引き出すためには教員が学生のモデルとなる行動ができるかどうかが大切

        • 【第20回】満足感のある授業をつくる⑤ARCSモデルのその先へ

        • 【第19回】満足感のある授業をつくる④ARCSモデルを用いた授業設計と評価について教えてください

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        • 看護の授業で学生の学習意欲を高める12のヒント
          23本

        記事

          【第18回】満足感のある授業をつくる③ARCSモデルの理解と活用

          ~教育学者から看護教員へ~  「希望の登校・満足の下校」、素敵なビジョンですね。学習意欲に満ちた学生の姿が目に浮かぶようです。このビジョンを実現していくためも、ARCSモデルは役に立つのではないでしょうか。 ルーブリックの作り方Q&A   学生の満足感を高めるために、評価の公平性を担保する。そのために、ルーブリックなど評価基準を具体化したものを活用することをヒントとして挙げさせていただきました。特に看護実習は、学生の実践力を細かく評価していくことが期待されるため、ルーブ

          【第18回】満足感のある授業をつくる③ARCSモデルの理解と活用

          【第17回】満足感のある授業をつくる②学生の「希望の登校・満足の下校」を目指して

          ~看護教員から教育学者へ~  ARCSモデルの最終段階にはいり、最後は「S:満足感」と聞き、横田先生が折にふれて口にしている「希望の登校・満足の下校」という言葉が頭をよぎりました。学生が学んで良かったと満足できるよう、日々の授業を行うことは、教育者として目指したい大きな目標です。また、満足感が持てると明日もまた学びたいという気持ちになり、学びが続いていくのだと思います。さらに、学生が学べたという満足感がもてると教員の満足感も高まっていきます。だからこそ、今回の「S:満足感」

          【第17回】満足感のある授業をつくる②学生の「希望の登校・満足の下校」を目指して

          【第16回】満足感のある授業をつくる① 3つのヒント

          ~教育学者から看護教員へ~  今回から、学生の学習意欲を引き出す授業設計モデル「ARCSモデル」の最後となる「S(Satisfaction:満足感)」になります。具体的には、心の内側から湧き上がってくるような満足感(内発的な動機付け)、外側から与えられる満足感(外発的な動機付け)、そしてそれらを支える公平感があります。  学んで良かったと思えること(学びの満足感)は、学んだことを大切にしていこう、もっと学ぼう、学び続けようという気持ちにつながります。 ヒント10「成長や価

          【第16回】満足感のある授業をつくる① 3つのヒント

          【第15回】自信を持てる授業をつくる⑤「自信」から「満足感」へ

          ~教育学者から看護教員へ~  ここまで、学生の学習意欲を引き出す授業設計モデル「ARCSモデル」の「C(Confidence:自信)」について、扱ってきました。  青葉先生が実践されているプレ・ポストテストの後の振り返りは、まさにヒント9の実践ですね。さらにいえば、プレテスト後に正解を自分たちで調べながら考えるという学習法は、ヒント2「探求心を喚起する」にもつながります。ポストテスト後に、自分が担当した患者さんに当てはめて解説をしてもらうことは、ヒント6「経験と関連付ける

          【第15回】自信を持てる授業をつくる⑤「自信」から「満足感」へ

          【第14回】自信を持てる授業をつくる④学生の学ぶ力を活用し、スモールステップが踏めるようにかかわりたい

          ~看護教員から教育学者へ~  学生が自信を持てるような授業をつくるというテーマでお話が進んでいますが、前回の西野先生の記事の冒頭にあった「酒井先生、青葉先生の実践はまさに『自信』につながる工夫を織り込めるものでした」というコメントは、私たち教員メンバーに自信を与えてくれています。学生にもこういう感覚をもたせられるように意見交換したことを、今回も梅澤が書いていきます。 1.学生同士で学び合う力を活用する①「テストの点数が悪かった」を「解けなかった問題から学べた」という認識に

          【第14回】自信を持てる授業をつくる④学生の学ぶ力を活用し、スモールステップが踏めるようにかかわりたい

          【第13回】自信を持てる授業をつくる③適切に自信を伸ばしていく

          ~教育学者から看護教員へ~ フォームのテスト機能を活用する 酒井先生、青葉先生のご実践は、まさに「自信」につながる工夫を織り込めるものでした。なんとなく小テストを行うことと、目的をもって小テストを行うのでは、学生の小テストに向き合う態度も違ってきます。  小テストを行うにあたって、「関連づけが学習意欲を高める⑤」でもご紹介した、Googleフォームや、Microsoft FormsといったWEBツールのテスト機能を使うこともお勧めです。酒井先生の場合は、授業時間が余らなか

          【第13回】自信を持てる授業をつくる③適切に自信を伸ばしていく

          【第12回】自信を持てる授業をつくる②小テストの活用と個別支援の悩み

           ~看護教員から教育学者へ~  学生に自信をもってもらいたいと願い、試行錯誤していますが、そう簡単にはいきません。  当校だけでなく、他の看護学校の先生からも、自己肯定感の低い学生が多くなっているという声を耳にします。自己肯定感の低い学生たちが、自信を持てるような授業をしたいと願う私たちにとって「自信を持てる授業をつくる」は、興味関心が高いテーマです。今回も、西野先生の記事を読んだあと、メンバーで意見交換をしましたが、残念ながらこれまで学んできたARCSモデルの「A注意」「

          【第12回】自信を持てる授業をつくる②小テストの活用と個別支援の悩み

          【第11回】自信を持てる授業をつくる① 3つのヒント

          ~教育学者から看護教員へ~  今回から、学生の学習意欲を引き出す授業設計モデル「ARCSモデル」の「C(Confidence:自信)」に突入です。タイトルを、「自信を持てる授業をつくる」としました。  このタイトルをご覧になられた際、”主語”は誰を想像されましたか?多くの方は、”私”=”先生”を想像されたのではないでしょうか。とりわけ看護の先生方は謙虚な方が多く、「私、自分の授業に自信がないの…」という言葉をよく聞きます。特に若手の先生は、看護師としての経験ならまだしも、教

          【第11回】自信を持てる授業をつくる① 3つのヒント

          【第10回】関連づけが学習意欲を高める⑤学生の自律的な学習を促す

           ~教育学者から看護教員へ~  「関連づけが学習意欲を高める」をテーマに看護専門学校の先生方とやりとりしてきました。具体的には、ヒント4「目標と関連づける」、ヒント5「動機と関連づける」、ヒント6「経験と関連づける」方法について考えてきました。 1.学生が目標を考えるということ  ヒント4「目標と関連づける」では、教員が目標を明らかにするだけでなく、学生自身に目標を考えてもらうことの意義を理解していただきました。そして前回、「グループワークを始める前に30秒程度で目標を

          【第10回】関連づけが学習意欲を高める⑤学生の自律的な学習を促す

          【第9回】関連づけが学習意欲を高める④動画活用法の模索

          ~看護教員から教育学者へ~  西野先生のアドバイスを受けた後に、毎回メンバーで集まり意見交換を行っています。これまでは、自分の“過去”の授業経験を振り返った意見が多かったのですが、今回はこれからの授業にどのように先生のアドバイスを取りいれるかという“未来”の話が多くなってきたように思います。一歩一歩ではありますが、授業改善に向かっていく予感がしています。  動画の活用・目標立案・理解度の確認について意見交換をしました。今回も梅澤が書いていきます。 1.「まずはYouTub

          【第9回】関連づけが学習意欲を高める④動画活用法の模索

          【第8回】関連づけが学習意欲を高める③目標と理解度と動画

          ~教育学者から看護教員へ~   授業タイトルを考えながら授業準備をするようになったという変化は、小さいように見えてとても大きなことだと思います。タイトルは学習意欲を高めると同時に授業の本質を捉えるポイントになるからです。先生方の意識の変化を大変嬉しく思います。  さて、いただいたご相談・ご質問に早速答えてまいりましょう。 1.学生が理解しやすい目標にする  「新生児の特徴」というテーマの講義において、下記図のように目標を考え直したがどうだろうかというご相談でした。  

          【第8回】関連づけが学習意欲を高める③目標と理解度と動画

          【第7回】関連づけが学習意欲を高める②「学習意欲を高める目標設定に関する悩み」と「映像による動機づけ」

          ~看護教員から、教育学者へ~  第1回の「授業で学生の注意(関心)を引き出すには?」が終わり、私たちに変化が生じているようです。  例えば、授業の準備をしているときに意識しなくても「この授業で何を教えるのか」「何をする授業なのか」「何を学生に分かってもらいたいのか」と頭に思い浮かべながら授業のタイトルを考えているのです(よいテーマであるかどうかは別ですが)。このような些細な自分たちの変化に驚きつつ、このように考え続ければ、いつか先生がつけてくださったような、学生にとって分か

          【第7回】関連づけが学習意欲を高める②「学習意欲を高める目標設定に関する悩み」と「映像による動機づけ」