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母乳神話

母乳育児至上主義への違和感について書きます。

哺乳類であるので母乳を与えることは自然の成り行きだと思います。しかし、完全母乳か、混合か、完全ミルクかということで子どもの発育の優劣を語ったり母乳で育てることを過剰に称賛することは母乳神話だと私は思います。

母乳のメリット・デメリット

〜メリット〜
・特に初乳には免疫成分が多く含まれている

・人工乳と比較して経済的で簡単

〜デメリット〜
・人工乳と異なり鉄不足になりやすい

・消化されやすいため、まとまって寝る時間が少なくなりやすく新生児期は大変。

このように、母乳にはメリットもあるが、完璧な飲み物というわけではないことが分かります。

母性と母乳

私がお世話になっていた産婦人科は母乳をかなり強く推奨していましたが、栄養面だけでなく「母性」と結びつけていた点について違和感を覚えました。

確かに母乳のメリットとして初乳に含まれる免疫に関わる成分があり、人工乳ではなかなか補えない部分であることは科学的にも明らかです。

しかし、私のお世話になった産婦人科では、母乳育児の方が赤ちゃんの精神や体調も安定しやすく、お母さんも母性が生まれるといったことを言っていました。他にも、陣痛の痛みがないと母性が弱くなるので無痛分娩はしないといったことも説明されていました。

個人的には、医学という科学的な立場から人と接しているのに、母性という精神的なものと結びつけるという、非科学的な言い方に違和感を覚えずにはいられませんでした。

実際、私と同じ産婦人科で出産した女性で母乳があまり出なかった方が、どうしても母乳育児をしたいとのこだわりが捨てられず、桶谷式(母乳育児を支援するための民間の施設)の相談室に高額の相談料を払って通っていたという話を聞きました。

私個人の意見としては、今の医学の技術的に日本などの先進国では乳児は大半が健康に育ち、大きくなっていくので、完全母乳にこだわる意味というのは昔ほどは無いのではないかと思います。

身体発達と母乳

先日、ある高齢の女性が私に話しかけてきて、母乳育児の身体発達的なメリットについて私に語ってきました。

その女性は、70代前半で、以前2人の子どもを人工乳で育てたそうです。

その女性は、「母乳で育つ子ども本当に丸々していて健康的だわ。うちの子どもたちは人工乳育ちだから大人になっても体は細いし、強くないの。母乳で育ったかどうかは大人になっても影響があるのよ。私は母乳が出なくて本当にそれが悔やまれるわ。」と言っていました。

私は科学的な側面について詳しくはありませんが、母乳を飲むのはほんの1年くらいですし、食事が始まれば栄養は食べ物から取るので母乳が1歳以降に与える影響なんて限定的ではないか?と思いました。

あとで思い返すと、この女性は子どもに出来るだけのことをしてやりたかったという思いと、当時の母乳と母性を結びつけた周りからの雑音に苦しんでいたのだろうと思いました。

まとめ

私たち人間は哺乳類である以上、母乳を子どもにあげることは自然の流れであり、母乳が出る人はそうすれば良いと思います。

しかし、母乳を飲むのは人生のうちたった1年程度のことであり、その行為に過剰な意味付けをすることは私はおかしいと思います。

母乳の出が悪い人は科学技術の力を借りて人工乳をあげれば良いし、むしろそのほうが鉄分などの一定の栄養素は充足することはあります。

母性というのは幻想的なものであり、それと出産・育児のあらゆる行為を結びつけること自体が無意味であると思います。だからこそ、世の中の母親の皆さんには周りの雑音を気にせず自分にあった出産・育児方法を実践してほしいと思います。

母乳に関する本

哺乳類の母乳に関して科学的に書かれた本です。様々な動物の母乳が生息環境や育児方法・期間によってそれぞれ最適な成分配合になっていることが書かれています。前半は特に科学的な記述が多く、文系の人には少し読みづらい部分もありますが、とてもおもしろい本ですのでおすすめです。

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