アヒルと鴨のコインロッカー
この人の小説は本当に登場人物が魅力的だ。
「残念ながら、クロシバ。君は今日から商品ではなく友人に格下げになった」
と、売れ残った柴犬に言うペットショップの店長さんがいい。
半月前に買ったダックスフントを気に入らないから引き取ってと電話して来た客に
「あなたこそ息を引き取って」
と言いそうになる琴美ちゃんもいい。
読むうちにどんどん登場人物を好きになるから、読み終わった時、あまりの辛さと悲しさに放心状態になった。こんなのってない。小説だという事を忘れてその不条理さに胸が詰まった。
物語の伏線を成すのはブータンの仏教観。
分かるけれど分かりたくない。
私も因果応報や生まれ変わりは信じているけれど、やっぱり想いは相手が生きているうちに伝えてこそだと思うから。
最後の鮮やかなどんでん返しが見事な伊坂さんの代表作。
胸が潰れそうな哀しさを味わいたい時に是非。
あ、このお勧めじゃあ、誰も読まないか...
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