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ツバキ文具店 小川糸


断捨離の本を何冊も持っているけれど物が捨てられない。
そのうちの一つが便箋や封筒や絵葉書。中学の頃から貯め続け、今や引き出しギュウギュウに持っている。

昔はよく手紙を書いた。喋るよりも書く方が得意な内気な女の子だったから、では断じてなく、やたら門限が厳しく、電話も3分までという家庭環境でそれしか伝達手段が無かったから。
まだまだ話し足りない時、悩みを聞いてかける言葉が見つかずtime upとなった時「この案件は一旦家に持ち帰り、続きは書面にてお伝えします」てな事がよくあった。
だからこの世には私の 時に暑苦しく、時に大真面目で、死ぬ程恥ずかしい手紙が結構存在する。
不幸な事に、最近の「スッキリ暮らす」とか「断捨離」の流行によりそれらがポツポツ発掘され始めた。
「あの頃は素直に聞けなかったけど、今読み返すとTのアドバイスは優しさとあったかさに満ちてる、ありがとう」
と大学時代の友人から手紙を貰ったのが2、3年前。今頃想いが通じたのは嬉しいけれど、美人で彼氏が途絶えたことのなかった彼女に一体どんな恋のアドバイスをしていたのやら想像するだに恐ろしい。
同窓会で、懐かしさが高まったのも まずかった。高校時代の親友から届いた報告によると、実家で十数通の私の手紙を発見したらしい。
「改めて共感出来る所がいっぱいあったよ!次に会う時に持って行くね!」
と書かれた文面を何度も読み返し、私は、怖いもの見たさと「やめておけ!」と叫ぶ理性との間で逡巡する。
きっとその手紙には、寒イボが出そうなクサイ台詞とか、どの口が言ってるねん!みたいな偉そうなこと、そして最悪、下手くそな自作の詩とかが書かれてるから。

この本は、鎌倉で文具店を営む若い女性の話。
彼女はもう一つの家業として代書屋さんというのも引き継いでいて、ラブレターとか、絶縁状とか様々な手紙を、相手になりきり、相手の文字、相手の言葉で代筆する。

で、そこに出てくる様々な文具が本当に素敵なのだ。ガラスペンであったり、ROMEO No.3のボールペンであったり、夜みたいな色のインクであったり....
封印したはずの文房具への愛と欲望が再びムクムクと膨れ上がるのに十分な程🤣

読み終わってしみじみ思う。
(あー、手紙が書きたい!素敵な紙に、素敵なペンで、素敵なインクで、素敵な文章の手紙が書きたい!)

こういう代書屋さんは現実にもひっそりと営業していたりするのだろうか?
あちこちググってみながら私は考える。
(なりきって文章を考える事なら私にも出来そう!その才能ならありそう!今からでもなれないかな?)

で、すっかりその気になり、社名と第一弾依頼内容まで考えて、妄想が甲子園10個分ぐらいまで拡がったあたりで、ハタと気づく。

忘れてた.....。
私、笑っちゃうくらい悪筆なんだった🤣

#ツバキ文具店
#小川糸
#読書感想文

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