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流浪の月

傷ついた事がある人は優しい。
誰もが肌感覚で知っている事だ。
だけど、その傷があまりにも大きいと、私達は傷にばかり目をやってしまう。そしてその痛々しさを直視したくなくて、その人を排除する....。

2020年の本屋大賞作品。
5月には広瀬すずちゃんと松坂桃李君主演で映画化もされたらしい。
19歳で9歳の女の子を誘拐し2ヶ月共に暮らした(と世間は思っている)青年と少女の物語。

ひりつくような絶望と、月の光よりも淡い希望が交錯し、溶けて混ざり合う不思議な文章。
一応ハッピーエンドなのかって思うけれど、『自分は、彼らを追い詰める側じゃないと言い切れるだろうか?』という後味の悪い問いが、読み終わった後も刺さって抜けない。

昔、シャンパンの泡はグラスの底に付けた傷から立ち昇るんだと教えてくれた人が居た。
「傷が無いと泡は出ないの?」
「そうらしい。」

主人公達が、絞り出すようにして与え合う優しさは、シャンパンの泡に少し似ている。儚くて、純粋で、すぐに消えてしまうからこそ美しい。
彼らの傷ではなく、そこから生まれる透明な優しさに、目を向けられる人でありたい。
そういう眼差しを持ちたいと、心から思った。そんな本。

#読書感想文
#流浪の月
#凪良ゆう

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