![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/157650570/rectangle_large_type_2_8b84eafb5d1300291a3758493f08ebee.jpeg?width=1200)
鎧を脱がせる仕事
私の仕事は、お客さまの纏った鎧を脱がせることだと思っている。
言い換えれば、素の自分に戻して差し上げること。
人は忙しく働く日々の中で、周りの空気に合わせたり、自分を守るために、知らぬ間に、あるいは意図的に、鎧を身に纏う。
そしていつの間にか、その鎧は皮膚の一部となり、興味や感動といった心の反応が鈍くなったり、人と接すること自体が辛くなったりということも引き起こす。
そうした状況をリセットする手段として、もっとも有効なのが旅だ。
![](https://assets.st-note.com/img/1728709024-6JkFhreNcwYtTp71j4IzB8Gu.jpg?width=1200)
できれば一人で、散歩をするように思いつくまま、知らない街をほっつき歩いてほしい。場所なんて、どこでもいい。誰もあなたのことを知らない街で、ただボーと風景を眺め、美味しそうと思ったものを食べ、気になるお店に入り買い物を楽しむ
そう、本能の赴くままに・・・。
NOMAyadoでは、「こんにちは」とカジュアルにお客様をお迎えし、予約時のアンケートで伺っていたお好きなミュージックをかける。お客様をお部屋へと誘い、降りてこられたところで、ウェルカムドリンクの抹茶を立てておもてなし。このあたりからお客様の緊張がほぐれ、いろんなお話に花が咲くことが多い。
![](https://assets.st-note.com/img/1728708889-UWRhi2n0fFjKdpumwkS9GDlc.jpg?width=1200)
近所の造船所跡の廃墟や人っ子一人いない浜辺や、猫スポットなどローカルだけど好奇心を刺激する散歩にお誘いし、近所に暮らすわかめ漁師との雑談に巻き込んだり、晴れた日には海峡に沈む夕日を渡船に乗って見られては・・・と進言する。
美味しいお惣菜や新鮮なお魚の揃うローカルスーパーをご紹介したり、お客さまが望めば、観光客が行かないようなローカルな食事処にご一緒したりもする。
NOMAyadoの周りにはお店ひとつないけれど、目の前には海が広がり、聞こえるのは鳥のさえずりや渡船のエンジン音ぐらい。何もない(ノイズがない)からこそ、風や光の移り変わり、身近な自然の逞しさや美しさに気づくのである。
旅の話をお聞きするNOMAyadoラジオ(ポッドキャスト)の収録に参加いただけると一気にお客さまとの距離が縮まっていくのを感じる。その後は、朝からすっぴんで宿主の雑談に応えてくれたり、深夜にお酒を酌み交わしながら、人生論的な会話に突入していったりもする。そうして話に花が咲くと、少しづつ背負っている鎧の紐が緩み、その人本来の自然な姿が見えてくるのだ。
それこそが、宿主としての一番の喜び。
お客様が散歩に出かけて、ご近所のおばあさんと楽しそうに立ち話をされている姿などを拝見すると、ここで宿を始めて本当に良かったなとしみじみ思うのである。