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私、インスリン必要ですか?


糖尿病、といえば真っ先に思いつくのが「インスリン注射」ではないでしょうか?
インスリンについてはなかなか偏見が多く、


「注射は恥ずかしいからしたくない」
「インスリンは始めたらやめられない」


このように考えている方が多いように感じます。
さて、糖尿病患者さんにも、インスリンを使用している方と使用していない方がいます。なぜ、患者さんによって方針が異なるのでしょうか?

※しつこいですが、2型糖尿病についての解説です



急性期のインスリン


肺炎起こして、脳梗塞起こして、体調悪くして入院。
誰もがいずれは通る道かと思います。
その際に、元々糖尿病を内服薬で治療している方も一時的にインスリンを用いることがあります。

「糖尿病が悪化したのですか!?」


このような質問をされることも。
これは明確に違っており、急性期治療の際にインスリンを用いるのは

量を調整することで、割と細かく血糖をコントロールできるから

・身体的ストレスによる高血糖に対処しやすいから

・急性期は食事がとれないことも多く、静脈栄養をすることで高血糖を呈した際にコントロールがしやすいから

・皮下注射のため、最悪本人の意識がなくても投与が可能だから

このような理由があります(もちろん、他にもあります)。
例えば外科系の手術を受けた際に、周術期の血糖が250mg/dlを超えると感染症を起こしやすい、創部治癒が遅れる等は有名な話ですね。
このような時、インスリンによる血糖コントロールは非常に役に立ちます。

また、血糖150以上なら2単位、200以上なら4単位のようにスケールを作ることで、看護師さんでも量の調整をしやすいのも特徴です。

正直な話、患者さんに抵抗がなく、またしっかりと管理できるのであれば、全ての血糖管理はインスリンで事足りるのでは?とも思います。
それくらい、インスリンは汎用性に優れたものということですね。

なお、インスリンには超即効型、即効型、持効型、混合型等の様々な種類がありますが、本旨ではないので割愛します。


慢性期のインスリン


では、慢性期のインスリンはどうでしょうか?

正直、このあたりは医療者側の好みや経験も関わってくるので一概には言えません。特に(言い方が悪いかもしれませんが)やや高齢の医師は、昔からあるインスリンを結構好む傾向があるように思います。

では、どのような場合にインスリンが必要になるのでしょうか?
ここで、急性期にインスリンを使用する理由を振り返ってみると

量を調整することで、割と細かく血糖をコントロールできるから


というものがありましたね。
1日1回のタイプの持効型+経口内服薬(BOTという治療法です)ではなく、敢えて1日3回、食事の度に使用するタイプを使用する理由は、私が考える範囲では

・食事量が安定しないため血糖コントロールが大変な症例

・内服薬だけではコントロールが不良な症例

かと思います。
基本的にはインスリン中心だった時代から内服薬中心の時代に移行しており、インスリンは使用しないか、使用するとしても回数を極力少なくするように努力する医師が多いような印象を受けます。

かくいう私もそのタイプで、注射を使用するとしても心保護作用や強力な血糖降下作用があるGLP-1受容体拮抗薬を使用することが多いです(最近はGLP-1も内服薬が出たので、注射の出番はさらに減少しています)。


インスリンを使用しますか?


糖尿病は、患者さんと目標を共有し、継続して治療することが何より大事です。それには患者さんの協力が欠かせません。

私のスタンスとしては、
患者さんがインスリンを使用することに協力的、積極的であれば使用すればいい(必須の患者さんを除く)ですかね。

インスリンが優れた治療薬であることは疑う余地もありません。
ただ、これだけ内服薬の選択肢が増えた時代に、敢えて他を差し置いて使うほどかと言われると・・・うーん・・・。

糖尿病内科の先生方からすれば他の意見もあるのでしょうが、私にはそこまでの意義を見出せないのが本音ですね。


以上、インスリンの使用についての話でした。
以前にも書いた通り、インスリンの作用や使い分け等の話を細かくするつもりはあまりありません。

私の記事では、参考書等には書いていない、臨床を通しての感覚などを分かりやすく伝えていきます。
これからもどうか御愛読をよろしくお願い致します。

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